
誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
沖にイルカ、打ち上げられて、息をする草花と同じように瞬きをして
口に放り込む怠惰な奇跡は、湿度と薄情な暑さに苛まれた君の憂鬱を紛らわすことはなく
亡骸と呼ぶには完璧な美貌を誇示したまま、誰かの事情に振り回された可能性について嘆く夜
呼吸が荒くなると、いつも鮫肌の心は退屈しのぎに騒ぎ始める
夜の帳が降りる頃に心はサーカスを始めて、歓声もスポットライトもない静寂のリングに添い
記憶は綱渡りを、感情が火の輪をくぐり抜けて
グラスに注がれた琥珀色の音楽を口に含めば、現実はゆるやかに溶けていく
過去と未来の境界線が、道玄坂のネオンに滲んで、昨日の出来事さえどこかの夢みたいに思えてくる
愛や不安を笑顔の裏側に忍ばせて、すべてはサーカスの演目になる
路地裏で拾った言葉の一編が、今日のアクシデントを少しだけ彩るとか
誰もいない観客席、真夜中に流れる悲惨なニュースは終わらない
心の奥で鳴り響く拍手がある限り、サーカスは続いてゆくのに、どうして?
現実と幻想の隙間で、静かに幕が上がる
君はこの世界で踊るつもりなの?
中谷美紀『食物連鎖』(1996年、フォーライフ・レコード/güt)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
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