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誰しもやめたくても、やめられないことがある。

 

致死量のコーヒーを飲むこと。

これこそ自分にとっての、それである。

 

元々は飲みものなんて甘ければ甘いほうがいいではないかとフラペチーノに砂糖を追加して飲むフラペチーノ過激派だった。

 

それが今では、私の居る前ではブラック以外のコーヒーは認めませんよとフラペチーノの悪事に目を光らせ、カフェの治安を守る自粛警察をするのが日課のひとつである。

 

何がここまで偏らせたのか。

 

大学生のころ、カフェで働いていた。

理由は至ってシンプル。なんかモテそうだから。四年間勤めあげたが、いっさいモテなかったことは秘密である。

 

面接では、「カフェで働くのは大変だと聞いて、そんな環境に身を置いて成長したい」と大ウソをついた。

結果は見事採用。後に店長から聞くのだが倍率はなんと10倍。

 

なぜカフェでキャーキャー言われるような美貌もオーラもない、歩兵が採用されたのか。

 

みなさまご存じで?

この世界には、建前と本音という人間生活を円滑に運営するための慣わしがあるのです。

 

「職場の9割が女性で男手が欲しかったから採用した」と店長。これから地球への移住をお考えの宇宙人の皆さま、これが建前というものです。

「このインキャなら女性スタッフに手を出して人間関係を乱すことはないな、採用っ!!」宇宙人の皆さまこれが、本音というものでございます。ぜひお気をつけて。

 

店長、あんた見る目あるよ。

ええ、正解ですよ。悔しいけど合ってるよ。ええ、怖いくらいに四年間なにもなかった、ええ、なにも。

そんなわけでカフェで働くに至り、コーヒージャンキーとなったのだ。

 

今では、毎朝起きたら500ミリリットルペットのブラックコーヒーを完まく。

出社したら、まずオフィスに鎮座するコーヒーマシンに一礼し、ロンドンで買ったお気に入りのブリティッシュサイズのビッグマグになみなみとブラックコーヒーを注ぐ。退勤までに5、6杯は平らげる。同僚からも心配されるほど。

 

ご覧のとおりのコーヒー中毒。

これだけ常飲しているのに、この一杯は格別だと感じる瞬間がある。

 

それはキャンプで飲む一杯である。これに勝るコーヒー体験は存在しない。

禅の教えで、こういう言葉がある。

 

喫茶喫飯。

 

お茶を飲んでいる時には、ただ飲むことだけにする。ご飯を食べる時には、ただ食べることだけに集中する。

という意味で、日常の行動を丁寧に分別なく行うことを説いている。

 

朝の眠気を覚ますためにコーヒーを飲む。カフェで仕事をするためにコーヒーを飲む。と、ふだんは何かの傍に存在するのがコーヒーである。

 

しかし、キャンプではコーヒーが目的に変わる。だから、うまいのだ。

どんなに日常でコーヒーを飲んでいてもキャンプでの一杯には勝てない。

キャンプは「今」を際立たせる。

自然の中に身を置くことで、余計な情報や思念は入らない。ただ料理をする。ただご飯を食べる。ただ酒を嗜む。ただ星を眺める。ただ会話をする。だからキャンプは心身を癒してくれる。

 

キャンプ場でフラペチーノにハチミツを入れて飲んでいるやつを見かけても取り締まったりしない。寛容にもなれるのだ。

 

キャンプで飲むコーヒーは格別です。

この一杯を飲むためにキャンプをしていると言っても過言ではない。

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