
誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
宮益坂から帽子屋に向かって歩く
もうそこに帽子屋がないことに気づく
派手な帽子は苦手なのに、帽子のない暮らしは考えられない君は
シックな帽子が似合うのに、今年も最高気温が更新される予感がする夏を迎える前には、派手な帽子ばかりに目がいってしまう様子
せっかく美容師に丁寧にヘアカラーを施してもらったのに、癖毛を活かしたヘアスタイルを隠すように、野鳥みたいな派手な色彩の帽子を君は選んでいる
一度しか被らないこともあるし、買っただけで満足してしまう癖にも薄々気が付いている
きっと人間関係もそう、カラフルな見た目と内面のギャップが好きなようで嫌いみたい
そして信号待ちは大嫌い、世界中数ある待ち時間の中で、空港でのフライトの遅延と同等に避けたい時間のひとつ
こどもの城に子供は見当たらず、チョコレートの誘惑を回避して、青学方面に渡る横断歩道を待つ人たちを眺めると、シックでスタイリッシュな模範的なスタイルで整えられている
南国の鳥とあだ名をつけられたこともある僕は、タンブラに入った白湯を口に含みながら、高濃度ビタミンCを胃袋に流し込んで、NMNについて考えてしまうくらいには浮気な自分でいるつもり
心はいつも騒がしい
頭の中に立ち上がったブラウザは幾重に増して、手の施しようがないマルチタスクにあくびが最早止まらない
誰かのせいにして閉塞感漂う現代から立ち去れるのならば、名声という宝くじを当てた彼らの存在に浮気心を抱くくらいには、足取り軽く余裕綽々でいたいもの
お気に入りのMuhlbauerのキャップを被って、金髪の襟足から滴る汗もそのままに、灼熱の交差点で鼻歌混じりに少しだけ目を閉じよう
夏なんて凡庸で適当で不埒で眠たいくらいが、きっと君たちにはちょうどいい
Yellow Magic Orchestra『浮気なぼくら』(1983年、¥ENレーベル)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
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