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変わるコンビニ、変わらない青のり

2025.05.17 公開 ポスト

好きな人の前歯に「青のり」ついてたら伝えるべきか否か。ブリーフ&トランクス伊藤多賀之(シンガーソングライター)

ブリーフ&トランクスの伊藤です!

このエッセイも無事に2回目。

前回は「コンビニ」にまつわるお話をしましたが、

今回は「青のり」という僕の代表曲を掘り下げたいと思います。

代表曲「青のり」ってどんな歌?

この曲は1998年にリリース。当時ラジオや有線を中心にかなり盛り上げていただき、

カラオケ界隈でも今現在も全国的に沢山歌っていただいているという嬉しい現象が続く

ブリトラの代表曲の一つです。ライブでも長年定番で歌っています。

ブリーフ&トランクス「青のり」

作詞・作曲:伊藤多賀之

髪の毛をそよ風になびかせて 爽やかに微笑む君を愛してる

だけど 青のり前歯についてるよ 青のり前歯についてるよ

さっき食べたお好み焼きの 青のり前歯についてるよ

君が笑顔になればなる程 君の魅力が無くなってく

青のり前歯についてるよ 気付いてくれよ!

(「青のり」歌詞引用)

この曲のテーマはいたってシンプルで、

「好きな子の前歯に青のりが付いてて引いちゃう」って話なんですが、本当にヒドい歌です(笑)。

最後まで聴くと、「そこも含めて愛したい」という、ある意味ではラブソングなんですけど、

ラジオなどで途中でフェードアウトなんかされると、本当に全国民を敵に回しちゃいますね(笑)。

 

実際、この曲をリリースした直後くらいから、女の子の友達をごはんとかに誘っても、

「細かいところをジロジロとチェックされそう」と断られるようになってしまったのですが(笑)、

実際はそこまで毎回毎回チェックとかしてませんし、どうかご理解いただきたい!

「青のり付いてる」事象

この「青のり」は、歌詞の中に「青のりついてる」「バジリコついてる」などのエピソードが入っているんですけど、

「青のりついてる」事象は、万国共通の普遍的なものだと思いますし、

昔も今も、伝えていいのか気づかないフリしてあげたらいいのか、答えは難しいところですよね。

相手との関係性にもよるでしょうし。

 

48歳となった今でしたら、昔よりも空気読む能力も少しは身についてるはずですから、

傷つけないように、笑い話になるように、うまく伝えられるような気もしますが、

僕が「青のり」を作ったのは21歳の時で、

当時はウブでウブで仕方なかったんですよね。

だからこそ、青のり付いてても、相手に伝えることなんて出来ずに、

ただ黙って心にしまっちゃうような男でした。

日常にひそむ、さまざまな「青のり」

実際、男でよくあるのは、ズボンのチャック問題ですね。

うっかり思いっきり開いている時ありますよね。

髪の毛ワックス付けてバッチリで、スーツもバッチリ決まって、

大事な取引先でデカい商談してるのに、チャック開いちゃってる、みたいな。

それを家に着いた時に気づくとか、

あ、この状態で満員電車乗ってきたのかよとか。

相当時間経ってから気づいた時なんて「ちょっと!誰か教えてくれよー!」と叫びたくなりますね。

 

あと、男に多いのは…

鼻毛出ちゃってる、とか。

目やにベッチョリついてる、とか。

唇乾燥して割れまくってる、とか。

顔トラブル系、多いような気がします。

男は女性に比べると鏡でチェックする場面が少ないからかもしれませんね。

 

どんなにカッコ良くても、その時点で、

女性からは「あ、残念…」と思われて、

一途な恋も勝手に強制終了されてることもあるでしょう。

 

男性の皆さん、鏡チェックはやっぱりマメにした方がいいかもですね!

僕も今後、より気をつけて生きていこうと今思いました。

伝える?黙っておく?究極の選択

結局、前歯の青のりとか、ズボンチャックとかは、

やっぱり誰かにちゃんと指摘してもらえる方が幸せなのかも、とも思いますね。

あ、ちょっと待ってください…

その誰かってのが、例えば自分が一番大好きな女優さんとかだったりしたら…と想像すると、

それはそれで穴に入りたくなるくらい恥ずかしい気するし。

答えは、昔も今も難しいかもしれません。

円周率のように、終わりのないネバーエンディングストーリーかも。

 

微妙に距離感ある相手とかだと尚更、ってのもあります。

会社の上司とか、社長とか、ましてや大統領レベルの人とか、

もしセーター前後ろ逆に着てても、タグが思いっきり首の前から出ていたとしても、

気軽になかなか言えないですよね。

その場合どうしたらいいのか、やっぱり無難に気づかないフリしちゃうかも。

総理大臣も「青のり付いてる」状態だった…!

あ、そういえばこの前もありましたね、

総理大臣のメガネのレンズにタグシール付いたままで大事な会見してた件。

あと、マスクの付け方がとんでもなく曲がってて変だったみたいな…(笑)

あれこそ、周りの方々にとっては言いたいけど言えない空気だったのでないかと、

まさに青のり状態で。

もし僕だったら絶対言えないですね。

「そ、総理…、おメガネの方におタグがお付きになられて…」

とか変な敬語を織り交ぜてアタフタしちゃいそう。

「そ、総理…、おマスクが、おほっぺとお口に対してお斜めになられており、

私の価値観が間違っているのかもしれませんが、おマスクのお角度は、

お水平にされた方が、ご外見もよろしいのではないかと…」

やっぱり不自然な敬語が絶対入っちゃいますね、冷や汗かきながら、

どうにかして場の空気を乱さないように伝えようと、

頭フル回転になって疲れちゃいそうです(笑)。

「青のり」制作秘話 〜思春期にタイムスリップ〜

僕の曲は歌詞がかなり具体的なので、

よく「実体験の曲ですか?」と聞かれがちなのですが、ほとんどは妄想で作っています。

ですが、そんな中でも「青のり」には、ひとさじだけ、ほろにが実体験が混ざっているんです。

 

時は1989年、中学1年の時の話です。

目もキラキラと希望に満ち溢れ、多感な時期です。

僕の通っていた中学は1学年5クラスあり、学年には200人くらいの生徒がいました。

小学校の時よりも広い地域から生徒が集まる中学校では、

初めて見る生徒もたくさんいました。

そんな環境の中、入学して間もない頃の僕の話。

 

他の小学校から入学してきた女の子に一目惚れしちゃいましてね。

でも隣の隣のクラスだったので、いつも遠くから見て「かわいいなー」と思う毎日でした。

そんな中、何とかして近づきたいと、10分休憩とか昼休みに、

何の用もないのに、その子のクラスへと足を運び、

小学校からの男友達を適当に見つけ、その男友達とどうでもいい話をしながら、

話の内容は限りなく薄く、心は上の空、

横目でチラチラと好きな子を視界に入れて胸を熱くさせてる毎日でした。

でも距離としては、どんなに頑張っても5メートルくらいでしょうか。

 

ウブな僕は自分から話しかけにいけるようなタイプではなく、

それから何ヶ月かその子のクラスに無駄に通い続け、

たまに奇跡が起きてすれ違い様に接近できたりする事もあり、

1メートルという記録を出して喜んだり。

髪の毛を そよ風に なびかせて

そんなある日、学年集会が開かれることになり、

テニスコートくらいの広さの部屋に全クラスの生徒が集まったことがありました。

クラスとか関係なく、ランダムに前から詰めてみんなで床に座っていき、

かなりギュウギュウ状態で体育座りしていた時にふと、右隣を見たら…

なんという偶然か、

僕の好きなあの子がすぐ隣にいたのです!

まさに距離は10cm、自己新記録を叩き出した僕は、

脈拍200は超えていたんじゃないかと思うくらいドキドキの時間となりました。

先生の話を聞きながらも、内容全然頭に入ってこず、

僕の右袖には何も付いてないのに、埃が付いてるテイで、

その埃を取ろうとするフリをしたりして、

なんとか視界を右方面に持っていくようにしていました。

そして満を持して、右肩の埃を取るような仕草をしながら、

好きなその子の顔を直視した、その瞬間!

「え、、〇〇ちゃん、ヒゲ生えてる、、、うっすらと…ヒゲ…はえ…て…る…」

いやいや、見間違えだろう、

太陽の光の加減で何かの影が鼻の下に映っちゃてるだけだろうと、

もう一度、ゆっくりとゆっくりと、右肩越しに、彼女を見る…

 

「いや、もろにヒゲ生えてんじゃん!」

 

そして、僕の恋が冷めていくのがわかりました。

それからその子のクラスに通うこともなくなり、

僕の恋物語が終了したわけです(笑)

恋が終わり、曲が生まれた

今の時代では、学生でもバッチリメイクしてる女子も多いですが、

当時の静岡の田舎ですと、メイクはもちろん(校則でも禁止されてました)

うっすらヒゲのお手入れとか、ほとんど誰もしてない時代でしたからね。

それを一方的に厳しい目で見て、勝手に冷めていった過去の自分が憎いし恥ずかしいです(笑)。

いや、逆にお前は完璧なのか?と。

勝手に恋をして勝手に心の中で相手に別れを告げてって、最悪なヤツだったなと。

大人になった今ならそんなヒゲも愛せるのになあと。

 

…と、そんな思い出から、

「好きな子に冷めてしまう曲」を作ろうと思った直後に「青のり」が瞬間的に生まれました。

結局、「うっすらヒゲが生えてる」という部分だけ僕の実体験で、

そこからいろんなエピソードを妄想で加えて、今の「青のり」になった訳です。

青のりが僕にもたらしたものとは

ひどい曲だと言われながら、友達もどんどん減っていく中で、

この「青のり」は特にミュージシャンや業界関係者から絶賛の嵐だったのを覚えています。

日本で誰もが知るような有名ミュージシャンの方々がラジオで「面白い曲見つけた!」と

曲を流してくださったり、ラジオ局やテレビ局でいろんな方々と会うたびに、

「わぁ、青のりの方ですか?」と言ってもらえたり。

 

この曲が話題になればなるほど、

友達に警戒され、モテない人生になってしまいましたが、

もうそれも僕の生き様ということで、これからも永遠に歌っていきたいと思っています。

早口ですごく歌うの大変なんですけどね。

 

あ、世の男性の皆さん、

初デートのカラオケでは絶対歌っちゃダメですよ、相当な確率で嫌われます(笑)_

*   *   *

初のトークイベント 開催決定!

テーマ

“ブリトラおしゃべり集会”

これまでの楽曲にまつわるエピソードやプライベートな話、創作の裏話、そしてファンからの質問コーナーまで──。
ライブとはひと味違う、しゃべりメインの90分をたっぷりお楽しみください。

日時/場所

2025年6月21日(土)
13:30集合 / 14:00スタート(15:30終了予定)

幻冬舎本社 本館(1号館)イベントスペース

東京都渋谷区千駄ヶ谷4-9-7
(東京メトロ副都心線「北参道」から徒歩1分
 またはJR・都営地下鉄線「代々木」から徒歩7分)

チケット種別

  • 会場参加チケット 2,500円
  • オンライン参加チケット 1,500円 ※Peatixでの購入は1,700円

【購入はこちら】
https://www.gentosha.jp/article/27323/

 

◆最新ライブ情報

「ブリトライトウエキサイトナイト」
“牛の内臓スペシャル2001~2011+α”

 

 

 

 

 

【日時】2025年7月19日(土)

【場所】SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

【チケット】

・指定席:¥6,600(税込・ドリンク代別)

・VIP指定席(前方5列以内・メモリアルプレゼント付き):¥8,800(税込・ドリンク代別)

【チケット一般発売(先着)】
https://tiget.net/events/394997

 

◆リリース&ライブ情報

アルバム「ブリトラリニューアルビッグミニ」(2024年9月)

ライブ「ブリトラ完全リニューアル祭り2024」(2024年9月)

ライブ「ブリトラハモり極み祭り2025」“黄金スペシャル2012~2022+α”(2025年5月)

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変わるコンビニ、変わらない青のり

新生ブリーフ&トランクスとして再始動した伊藤多賀之が

自身の楽曲や歌詞を手がかりに、“あの頃”と“いま”の違い、そして変わらずそこにあり続ける日常の断片を綴ります。

「青のり」「コンビニ」など、ブリトラ楽曲に登場した身近な風景を見つめつつ、

移ろいゆく時代の中でも変わらない“青のり”的な何かを探しながら、

「半径5メートル以内の日常生活」を描き出していくエッセイ連載です。

バックナンバー

ブリーフ&トランクス伊藤多賀之 シンガーソングライター

1976年生まれ/静岡県伊東市出身

作詞作曲編曲&ボーカル&ギター係

楽曲テーマは「半径5メートル以内の日常生活」

 

1998年ブリーフ&トランクス(main Vo)として、シングル「さなだ虫」でメジャーデビュー

「青のり」「コンビニ」「石焼イモ」「ペチャパイ」など多くのヒット作をリリース

現在はソロ活動の新生ブリーフ&トランクスとして精力的に活動中

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