
誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
逃げても逃げても追いかけてくる現実は、くたびれたスニーカーの紐に絡まった熱を分散した
夜通し踊り続けることが生き甲斐だった青春を過ぎて、君は子供みたいな大人に育って未だに贅沢なセレンティビティを探している
舐めるように可愛がっていた愛猫はシンガプーラみたいなスコティッシュフォルドで、宝石みたいな瞳の奥に広がる地球を二度と見ることができない悲しみを手にして、生きるために小さな旅をすることを決めた
旅程について語り合う君と僕
スクランブル交差点近くにありながら、南国の気配が充満するフルーツパーラーで格安チケットを検索して、想像できない冒険の地図を互いの脳にBluetooth接続する
7kgのバックパックにありったけの可能性を詰め込んで、大好きな音楽だけを頼りに感情を繋いで、最低限の洋服はカラフルで速乾性の高いものばかりを選んだから、心に変換プラグなんか必要ない
熱帯性モンスーン気候に咳き込んだのも数日、語感が導く感覚のシネマに己を主人公に見立てて
賑やかな鳥の声、聞き慣れない街の雑踏、色とりどりの花々の生命力が入り混じり、君と僕の身体中にゆっくりと充満してゆく
生きることは生きるだけで構わないのに、見えないプレッシャーに囚われて、自分自身を忘れてしまったあの人や、生きていることだけでは存在を容認してもらえない現状に、解き放たれたいと願う時間すら許されない虚しさとか
アジアの片隅で君は何を想う?
西と東からの風が混じるこの場所で、僕は君と一緒に人生そのものを忘れてしまいそう
加藤和彦『加藤和彦 作品集』(2009年、EMI Japan)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
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