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新潟のゲストハウスで起きた奇跡?!……パンツ一丁で人生を歌う“サブステージの王様”クリトリック・リスことスギムのエッセイ連載第6回！

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関東でライブをすれば必ず観に来てくれる「也寸夫(やすお)」というクリオタ（クリトリック・リスのファン）が居た。

サラリーマンをしており我と同い年だった。48歳まで童貞だったがハプニングバーにハマり、常連のお情けで童貞を卒業。そこから火が点いてハプバーだけでなく怪しいパーティなどにも参加するようになり、童貞卒業から僅か3年で経験人数は60人を超えた。

彼は性行為を行った全ての女性の特徴やプレイ内容を細かくテキストで残しており、それを本にしてコミケで発売するというとんでもない奴だったけど、普段は真面目で人付き合いが良かった事もあり、他のクリオタからは愛されていた。

そんな也寸夫だが、2022年1月、 52歳という若さで突然亡くなった。

我は彼の事を忘れまいと「也寸夫」という曲を作った。

2023年3月、也寸夫の死から1年が経った頃、たまたま入ったバーで「私、也寸夫さんの事を知ってます」と声をかけられた。イノ美という女性で、パンクバンド「オナニーマシーン」のファンだった。也寸夫もオナニーマシーンをずっと追いかけていたので、ライブハウスで出会っていたようだ。

也寸夫との思い出話に花が咲き、打ち解けたイノ美から「私は男運が悪くて今までクズとしか付き合った事が無い。いい男を紹介して欲しい」とせがまれた。

「初対面やで？ なんかめんどくせえなぁ」と思いながら、「男ならクリトリック・リスのライブに来ればいっぱい居るよ」と帰りにラインを交換した。この時はまだイノ美のヤバさに気づいてなかった。

 

この日をきっかけに、イノ美はクリトリック・リスのライブに来るようになった。他のお客さんの前では明るく振る舞っているくせに、1人になるとライブの文句や男関係の愚痴、恨み辛みを、ラインでエンドレスに送り付けてくる。

そしてその内容は過激にエスカレートしていった。既読スルーしたり、返信しないでいると「殺すぞクソジジイ！」と脅される。とんでもないメンヘラ女だ。知り合ったことを後悔した。

2023年7月、新潟県糸魚川市のゲストハウスを貸し切りにして行われた1泊2日の「クリトリック・リス宴会ライブ」に、イノ美も参加を申し込んだ。

このイベントは定期的に行われているオフ会のようなもので、全国からクリオタ達が多数集まってくる。行く前からイノ美は「男を紹介しろ！」としつこく、ライブというより目的は明らかにそっちだった。

男に満足しない限り、呪いのラインは永遠に続くだろう。我は頭を抱えていた。

宴会ライブ当日、ゲストハウスに到着して早々、たまたま玄関先でバーベキューをしていたウルフと呼ばれているクリオタが目についたので、申し訳ないと思いつつ、イノ美を押し付けるように紹介した。

 

ウルフは50代の走り屋。スキンヘッドにバンダナを巻いており、見た目からもやんちゃ感が滲み出ている。彼は以前参加した「クリトリック・リス宴会ライブ」で泥酔して、2階の宴会場から1階のロビーに降りる階段を全裸で側転しながら降りるというイリュージョンを披露し、足の指を骨折した破天荒な大馬鹿野郎だ。

30代前半のイノ美とは年齢差が20近くあるのでジェネレーションギャップを心配したけど、どうやらウルフが一目惚れしたようで、バーベキューやライブ鑑賞中もずっとイノ美を離さなかった。イノ美もまんざらでも無い表情を見せていた。

奇跡だ！ 適当に引き合わせたつがい、メンヘラモンスターとヤンキーモンスターの気が合ったのだ！

宴会ライブ終了後、我は外に出てクリオタ達とまったり焚き火を楽しんでいた。ゲストハウスの周りは人が住んでおらず街灯が無い。焚き火から数メートル離れると炎の光が届かず真っ暗で何も見えない。

「夜の山は静かで不気味だよなぁ。熊も出るらしいで～」そんな会話をしていた時だった。物音がして、暗闇からぬ～っと人影が浮かび上がってきた。みんな驚いて悲鳴をあげる。あれっ？ よく見るとウルフとイノ美や。こんな時間に2人で何してたんや？

ウルフがズボンのチャックを上げながらこちらに近づいてくる。イノ美の髪は乱れていて服やスカートには草が付いている。

「えっ？ もしかして、お前ら……山でやってたんか？」

そう聞くと、ウルフからトンチンカンな答え「イッてないで」

「イッてない？？？？ いや、イク、イカないじゃなくて、挿入したか、してないか？ を聞いてるねん！」

「イッてない、イッてないって！ 入れたけど周りに掴むものがなくてふんばれなかったんで、イケなかったんや」

ウルフはやたらとイッてない事を強調してくる。その隣でイノ美は「もう何言ってるのよ～！」とウルフに甘えてじゃれ付いていた。

呆れたなぁ……盛りのついた若者ならともかく、50代のおっさんと30代のおばはんやで！

出会って6時間で合体。しかもゴムなし青姦。

とんでもないバカップルが誕生してしまった。ウルフは名古屋でイノ美は東京、遠距離恋愛のスタート。今は盛り上がっててラブラブだけどすぐ別れそうやなぁ。別れたら反動で非常に強い呪いのラインが復活するはず。それだけは避けたい。少しでも長いこと付き合っててくれーー！

そんな我の不安をよそに、宴会ライブから帰ってからも2人は、休みの度に東京・名古屋間を行き来し合い、愛を育み続けた。そして去年末にイノ美は仕事を辞めて、名古屋に赴きウルフと同棲を開始。

今年の2月、出会って半年で入籍。現在イノ美のお腹には赤ちゃんがいる。ウルフが走り屋だからと言って、いくら何でも飛ばし過ぎ！

 

思い起こせば去年の3月、バーで「私、也寸夫さんの事を知ってます」と声をかけられた事がきっかけだ。あの世に居る也寸夫がこの縁を作ったと思えてならない。お腹の赤ちゃんは、もしかすると也寸夫の生まれ変わりかも？

「男の子が生まれたら“也寸夫”と名付けるんやぞ！」と2人に何度も言ってるんだけど「あんな変態の名前は絶対に嫌！」だとさ。そりゃあそうだけど、あなた達も也寸夫に負けず劣らない変態夫婦だよ。

我の元に呪いのラインが届くことはもう無いだろう。

幸せな家庭を築いてください。めでたしめでたし。

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ライブ情報

◯ 5/3(金) 東京・西永福JAM
◯ 5/4(土) 東京・渋谷ラママ    
◯ 5/5(日) 東京・吉祥寺DAYDREAM    
◯ 5/6(月・祝) 埼玉・熊谷モルタルレコード
◯ 5/7(火) 大阪・心斎橋パンゲア    
◯ 5/11(土) 愛知・名古屋栄RADMINI    
◯ 5/12(日) 大阪・堺ファンダンゴ
◯ 5/17(金) 東京・高円寺無力無善寺
◯ 5/19(日) 兵庫・チャリティフェス・カミングコーベ
◯ 5/22(水) 大阪・堀江vijon    
◯ 5/25(土) 大阪・難波ベアーズ
◯ 5/26(日) 神奈川・横浜日ノ出町MUSIC BAR JOURNEY
◯ 6/1(土) 岡山・井原市野外フェスhoshioto    
◯ 6/2(日) 大阪・心斎橋火影
◯ 6/9(日・昼) 東京・池袋adm
◯ 6/12(水) 大阪・堀江vijon    
◯ 6/15(土・昼) 愛知・名古屋鶴舞公園奏楽堂
◯ 6/16(日) 東京・渋谷やついフェス
◯ 6/23(日) 三重・四日市CLUB ROOT
◯ 6/24(月) 大阪・難波ベアーズ
◯ 7/6(土) 大阪・心斎橋サーキットフェス見放題
◯ 7/7(日) 愛知・名古屋サーキットフェス見放題
◯ 7/10(水) 東京・渋谷ロフトヘブン

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メディア出演

茨城放送ミッドナイトクレイジーラジオ 毎週土曜日22～23時 放送中