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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2024.04.15 公開 ツイート

第222回 自宅大改革 いとうあさこ

今の家に引っ越してきて約6年半。基本ほったらかしてきた我が家を理由はわからないのですが、急に思い立って“大”改革、しました。正直それらは皆さんにとっても“日常”である可能性は大きいのですが、私にとっては“大”革命だったのです。

それは浴室乾燥機から始まりました。そこにはフィルターが2枚あって、年に2~3回引っ張り出して洗っておりまして。

 

この時点で「おいおい。年2~3回なんて少なすぎやしないかい?」と思った方。こういう“ズボラの極み”のようなエピソードが今日は続くのでご容赦を。で昨年末、フィルターを取ろうとしたら何かうまく取れなくて。よっこいしょ、と湯舟のふちの所にあがってフィルターに手を伸ばしました。するとその時、見えてしまったのです。フィルターを外した隙間から中に溜まった埃たちを。もう湿気を吸っているのもあってか、しっかりとした塊。そりゃあそうだ。私、ここに引っ越してから今まで、フィルターしか洗ってない。まずはカバーというか、蓋的な部分(ここでは“大外(おおそと)”と書きますね)を外してみよう。ふちに乗ったまんま、カバーを引っ張ってみた。あれ? 動かない。あ、よくこういうの、落ちてこないようにフックみたいなのがあって、それを指ではずしてから、とかか。指で四隅のところを探ってみる。ない。まったくそういう引っかかりがない。もう一度引っ張ってみる。動きもしない。一度ふちから降りて、引っ越しの時に渡された各説明書が入った分厚いファイルを出してくる。浴室乾燥機の取説を見つけて、後ろの方にある“掃除の仕方”を見てみるけれど、フィルター以外書いていない。大外のはずし方なんてどこにもない。ネットで調べてみると、大外のどこかに、同じ色で見つかりにくいけれどゴムの蓋があって、そこをめくるとボタンがあり、それを押すと開く、との事。「なるほど。そりゃあ見つからないわ」なんて笑いながら、再び浴室へ。見る。めっちゃ見る。隅から隅まで探したけれど、ゴムの蓋なんぞまったくもってどこにもない。「そんな同じ色?」と手で全体を撫でるように触ってみるけれど、どこにも何にもない。こうなったら、とラジオでその話をしてみるとリスナーさんがいろいろ教えてくださったけど、結局どれもダメで。そこからはしばらく思い出した時に引っ張ってみては無理、を繰り返していた。

 

 

変化は急にやってきた。またいつものように諦め半分で大外を引っ張ってみた。するといつもよりなんだかはずれそうな気配。いつもは大外の左右の一辺の真ん中辺りを引っ張っていたのですが、その時はなんとなく前面の二つの角を持って軽く引っ張ったのだ。するとその大外のカバーがちょっとビヨン、と動いた。もう一度やってみる。ビヨン。うん、動く。やっぱりそうだ。動かないわけがない。人間が設置したその大外を、人間がはずせないわけないのだ。しばらくその“ビヨン”をくり返し、どの部分が引っかかってるのかを探る。その大外のたゆみ方を見て、どうやらど真ん中付近に何かひっかかりがある事に気づく。大外の真ん中にある送風口を手で開いてみた。あった。ネジだ。そこに数本埋め込まれているネジを発見。まるで冒険家が“未知の洞窟”に辿り着いたような興奮度合い。乗っていた湯舟のふちから喜び勇んで飛び降り、は出来ないので、そっと膝をかばいながらゆっくり降り、ネジ回しを取りに行く。「終わる。長い旅は、これで、終わる。」顔はもう何かしらの主人公だったはず。もうここからは進む進む。ネジを抜いたらあっという間に大外ははずれまして。まず隙間から見えていた埃を掃除機で吸い込みまくる。細かい所は綿棒を使って優しく掃除。外した大外も一度丸洗いをする。最後全てをはめ込みネジを閉めた時のあの爽快感は、もう異常。私は考えた。

「他に洗うとこねぇが?」

もうほとんど“なまはげ”です。そして、発見。台所換気扇。ザ・掃除スポットのベタ中のベタなとこ。これまた信じられないかもしれませんがわたくし、6年半一度もお掃除しておりません。お恥ずかしゅう。ただ正直言ってそんなに料理もしないもので、「ま、いっか」とほったらかしていたんです。とは言えまったくしないわけでもないですから。しかもコロナ禍はしばらく自炊。ことあるごとにすぐ小松菜炒めていたので、なかなかヤバいかもしれない。ドキドキしながら両サイドにあるポッチをすぐに見つけ“大外”を開け、あっという間に外す。中のフィルターも外し、両者きっちり洗う。周りも隅々まで拭きまくった。ここまでは順調だったのですが、中の丸いファンがまた、外し方わからず。再び説明書ファイルを出してきて調べましたがまたまたフィルター以外の掃除の仕方が書いていない。ただ触った感じ、手前のフィルターが相当頑張っていてくれたのか、あまりべたべたもせず。外し方のYouTubeなども観たのですがなかなかうちのと合わず、今回は断念。でも外側だけでも気分が違う。気持ちいい。

他にも高圧洗浄機を使ってベランダと壁をキレイにしたり。これも初。ただこの数日後窓の鍵が開けっ放しになっていたことに気づき、トイレ、お風呂や、人間が入れない規模の棚までも「誰かいませんか?」と家中チェックする羽目になりましたが。あと大きな袋を購入して衣類を送る事で子供にワクチン&カンボジアの雇用が生まれる、というシステムがあるのをイモトに聞き、身体がすっかり大きくなった為にもう着られなくなった洋服と、何故かまだ成長を続けている足のせいで入らなくなった靴たちを送ったり。それとずーっと使ってきたシャチハタのインクがついに薄くなった為に新しく購入。その際、ネットに“一万回利用可能”とあったので、今までの使っていたハンコを見ながら「一万個荷物を受け取ったんだなぁ」としみじみ言ったら知り合いに「そんなわけないじゃん。毎日1つずつ荷物受け取っても10年で約3600個だよ?」とリアルを突きつけられ呆然としたり。いろいろありましたが家、だいぶ“大”改革されまして、少しずつ“スッキリ”が進んでおります。さて、次はどこやろうかな。

【本日の乾杯】わたくしこう見えまして(?)脂身が苦手でしてね。でもね、こういう豚バラと煮込まれた野菜がとにかく好きで。これはお肉の下に新じゃがと春キャベツが。野菜たちにちょっと油分が入り込むとべらぼうに美味しい。ああ、春です。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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