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2024.04.05 公開 ツイート

パリ五輪出場を決めた競泳・池江璃花子「水泳に出合えてよかった」 木本新也

競泳女子の池江璃花子(23歳・横浜ゴム)が3大会連続の五輪出場を決めた。2024年3月17~24日に東京アクアティクスセンターで開催された国際大会代表選考会の女子100mバタフライ、派遣標準記録を突破して2位となり代表権を獲得。白血病から復帰後は精神的に苦しんだ時期もあったが、2023年10月から練習拠点をオーストラリアに移して、心身ともにたくましさが増した。

結果が出ず、水泳が楽しめなくなっていた

運命じみていた。

 

パリ五輪出場権をかけた国際大会代表選考会の開幕日は、2024年3月17日。ちょうど4年前の2020年3月17日は池江が白血病から復帰後、初めてプールに入った日だった。

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

大会初日の女子100mバタフライ予選、準決勝で自己ベストを連発。全体1位通過で翌18日の決勝に進出すると、池江は自信を持って言った。

「明日、4年前の自分に“ちゃんとパリ(五輪出場)を決めたよ”と伝えたい」

決勝は紙一重の戦いを制した。日本水泳連盟が独自に定めた派遣標準記録を切って2位以内に入ることが、五輪切符獲得の条件。池江は最初の50mをトップでターンしたが、終盤に急成長中の平井瑞希(17歳・アリーナつきみ野SC)に抜かれた。

結果は派遣標準記録を0秒04上回る2位。3位との差はわずか0秒01だった。電光掲示板を確認すると、池江は天を仰ぎ「よかったー」と笑顔で喜びをかみしめた。

「表現が難しい。嬉しいとしか言いようがない。以前の自分なら絶対に泣いていたので、泣いてない自分に驚いている。0秒01差は神様が味方してくれた結果。改めて、水泳に出合えてよかったと思う」

2019年12月の退院時に掲げた目標が、「パリ五輪でメダル」だった。復帰直後は順調にタイムを伸ばし、2021年の日本選手権で4冠を達成。2021年の東京五輪にもリレー種目で出場した。だが、その後は伸び悩んだ。

「現実はそんなに簡単ではない。パリでメダルと言ったけど大丈夫かな」

徐々に思い詰めるようになり、いつしか笑顔は消えた。

追い打ちをかけるように、2022年は世界選手権の日本代表から落選。大好きだったはずの水泳が楽しめなくなっていた。

「早くレースがしたい。ワクワクする」

低迷打破へ大胆な決断を下した。「もう一度、世界一を目指したい」と2023年10月から練習拠点をオーストラリアに変更。多くの有力選手を教えるマイケル・ボール氏に指導を仰いだ。

オーストラリアでの愛称は「リッキー」。ボール氏の下でアシスタント・コーチを務めるジャネル・パリスターさんは、チームに合流当初の池江の様子をこう振り返る。

「リッキーは不安、恐怖が表情に出るような状況にまで追い詰められていた」

パリスターさんは積極的にコミュニケーションを取り、話す時は必ず目を見るようにした。練習中は意図的に冗談を飛ばし、池江を笑顔にすることを意識。異国で早くチームに溶けこめるよう、同僚との関係強化にも気を配った。

海外のオープンな雰囲気と、笑顔を絶やさないチームメートにも救われ、池江は徐々に前向きな気持ちを取り戻していった。

計画的な筋力トレで体重は3kg近く増えた。入水直後のキックのテンポを上げるなどスタートも改善。最初の15mのタイムは0秒2近く上がった。

代表選考会の期間中、池江の復活を象徴する言葉があった。

「ここ数年は“早くレースなんて終わってほしい”と思っていたけど、今は“早くレースがしたい。何秒出るんだろう”とワクワクする。こんな気持ちになったのは久しぶり」

復帰後の自己ベストに囚われていた過去の姿はない。拠点変更後は白血病を患う前の2018年に出した日本記録の56秒08を意識。この大会のタイムで、その自己ベストにも0秒98に迫った。

完全寛解まであと7ヵ月となった。練習場は屋外で体は真っ黒。担当医から日焼けは避けた方がいいと言われているが、心身の状態はすこぶるいい。

「パリでは16歳の時に出場したリオ五輪の決勝タイム(56秒86)を上回りたい。もっともっと上に行きたい。自分にワクワクしている」

五輪開幕まで約4ヵ月。花の都が池江璃花子を待っている。

池江璃花子/Rikako Ikee

2000年7月4日東京都生まれ。東京・淑徳巣鴨高校から日本大学へ進学。2023年春に日本大学を卒業して横浜ゴムと所属契約を結ぶ。2016年リオデジャネイロ五輪は女子100mバタフライで5位。2018年アジア大会6冠。2019年2月に白血病を公表。闘病生活を経て、2020年8月に実戦復帰した。2021年東京五輪は女子400mリレー8位、混合400mリレー9位。身長1m71cm。

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※この記事はWeb版GOETHEに掲載された記事を再編集したものです

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