仕事などでスキルを身につける必要に迫られたとき、みなさんなら何から手をつけますか? 著書『老いない体をつくる中国医学入門 決め手は五臓の「腎」の力』を上梓した薬膳料理家の阪口珠未さんは、目標にすべき人を見つけて、世界観を共有できるまでしつこく追いかけ続けることが重要だといいます。キッチンに西太后が現れるまでやり抜いたという阪口さんに、プロのスキルの身につけ方を教えてもらいました。
* * *
母が取り寄せてくれた朝鮮人参
── 阪口さんが薬膳の道に入ったきっかけを教えてください。
私は小さいころから身体が弱いほうで、小学生のときは朝礼でしょっちゅう貧血を起こして倒れていました。担任の先生からは、「阪口は根性がないから倒れるんだ!」といつも言われていて、どうしたらいいのかと思っていました。
そんなとき、母が朝鮮人参を韓国から取り寄せて、飲ませてくれました。すると、朝礼で倒れなくなったんです。お腹の調子もよくなったし、冬になると悩まされていたしもやけもできなくなりました。薬草ってすごいなと思いましたね。
その後、大学生になって薬膳の本に出会いました。でも、当時はややオカルトっぽいイメージがあり、日本ではきちんと学べる場所がありませんでした。それで、中国大使館へ話を聞きに行ったんです。
そうしたら、たまたま担当してくださった方が、私が興味を持っていた北京中医薬大学の卒業生だったんです。その方に紹介状を書いてもらって留学したのが、薬膳の道に入った最初のきっかけです。
── 阪口さんは今、新しい薬膳レシピを考案したり、企業や自治体でコンサルタントをしたり、さまざまなアウトプットをされていますが、インプットはどのようにしているのですか。
いちばん大事にしているのは、朝の時間です。自分では「聖なる時間」と呼んでいるのですが、家のリビングや、お気に入りのカフェ、公園のベンチなどで、コーヒーを飲みながら1時間くらいボーッとするんです。
そうすると、アイデアが降ってくるんですよ。こんなレシピをつくってみようとか、次の講座ではこんなことをやってみようとか。新しいアイデアは、たいていこの時間に生まれるので、忙しくても時間を取るようにしています。
── ちなみに中国医学では、コーヒーを飲んでもいいんですか?
私は薬膳料理家なので、身体にいいものばかりストイックに食べていると思われがちです。でも、ストレスをためないとか、日々を楽しく過ごすとか、そういったことが五臓を整えること、そして腎精を目減りさせないことにつながるんです。
私、コーヒー大好きなんですよ。毎朝、コーヒーのいい香りに包まれて「聖なる時間」を過ごす。それが、私の健康法でもあるんです。心にはすごく効いていると思いますね。
キッチンに西太后が現れた?
── 他にインプットで心がけていることはありますか?
知識のインプットは、アウトプットによって定着させています。本を読んだり、講演を聞いたりしたら、その内容を自分なりにアレンジして人に話す。そうすると、知識が自分の中に定着するんです。
技術のインプットに関しては、いろんなものに手を出すのではなく、的を絞るようにしています。とくに料理にいえることですが、「この人の技術がほしい」と思ったら、その人に関する本をすべて集めるんです。
そして、その人のレシピだけをつくり続ける。クセみたいなものも含めて、ぜんぶ自分にダウンロードする感覚ですね。すると、その人が自分に宿ってきます。こういう感覚で料理をつくっているんだとか、こういう思想でやっているんだとか、世界観を共有できたって実感するんです。
以前、西太后の本を書いたことがあるんですが、そのときは彼女のカルテに出てくる料理をしつこくつくり続けました。そうしたらある日、キッチンに西太后が現れたような気がしたんです。
「私、この料理好きだったのよ」「本当に頑張っているね」。そんなふうに言われたような瞬間があって、そのときに西太后の考えていたことが何となくわかったような実感がありました。
こんなふうに世界観を共有できるまで、しつこく追いかけ続けることを私は大事にしています。
── 最後に、このポッドキャストを聴いてくださった方にメッセージをお願いします。
前回、お話ししたように、腎精は年齢とともに少しずつ目減りしていきます。ということは、今日のあなたがいちばん若いということです。今日から始めてもらえれば、腎精の目減りを少しでも抑えることができます。ぜひ、今日から始めていただきたいなと思います。
特別な食材を使わなくてはいけないとか、無農薬のものでないといけないとか、そんなことはまったくありません。コンビニで売っているものでも、腎精をチャージしたり、身体を整えたりすることはできます。
たとえば、ジャスミン茶。ペットボトルで売られているジャスミン茶にも、ストレスを緩和する働きがあります。こうした身近なものでも効果はありますので、ぜひ取り入れていただきたいです。
── 食事は毎日の小さな積み重ねが大事ですよね。
本当にそうですね。毎日の積み重ねの中で毒をつくっていくのか、それとも腎精をチャージしていくのか。たとえわずかな違いでも、1年後、10年後、20年後には、大きな違いが出てくると思うんです。
くわしいことは本の中に書いてありますので、ご興味のある方は手に取ってもらって、日常生活に活かしていただけたらと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】阪口珠未と語る「『老いない体をつくる中国医学入門 決め手は五臓の「腎」の力』から学ぶ体内から作る健康法」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら
書籍『老いない体をつくる中国医学入門 決め手は五臓の「腎」の力』はこちら
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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