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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2023.06.23 公開 ポスト

「私があなたに判決するのは3回目です」同じ被告人に3回も判決を下した裁判官が思わず発した落胆の言葉武器になる教養30min.編集部

2007年の発売以来、30万部を超えるロングセラーとして多くの読者に笑いと感動を届けてきた『裁判官の爆笑お言葉集』。今年に入って全国の書店で再ブレイクしており、現在、なんと40万部を超えました。そんな本書の著者で、フリーライターの長嶺超輝さんに、本の中から裁判官の「お言葉」をいくつか紹介していただきました。

*   *   *

個性あふれる裁判官の「お言葉」

「しっかり起きてなさい。また机のところで頭打つぞ」

── 1998年10月、東京地裁・阿部文洋裁判長のお言葉です。これはどのようなシチュエーションだったのでしょうか。

(写真:iStock.com/Kanizphoto)

オウム真理教の教祖だった麻原彰晃こと松本智津夫の第95回公判で、裁判長が居眠りしていた松本智津夫に注意した場面です。「また頭打つぞ」ということは、過去に打ったことがあるということですね。

このときは証人として、新実智光元死刑囚が発言していたのですが、そんな教祖の姿を見て、新実元死刑囚もがっかりしたのではないでしょうか。こんな人のために、自分はひどい犯罪を行なったのかと。

 

── 公判中の松本智津夫の様子はメディアでも報じられましたが、やはりひどいものだったんですか?

意味不明の発言をくり返したり、あぐらをかいたり、大あくびをしたり、行儀の悪い態度を取っていたので、裁判長も見るに見かねてということだったのでしょう。いきなり英語をしゃべり出したこともあったようです。裁判所法で「裁判所では、日本語を用いる」とあるので、そもそも違法行為なのですが。

「しっかり起きてなさい。また机のところで頭打つぞ」という言葉から、いかに裁判長が苦労されていたかよくわかる気がします。

 

「私があなたに判決するのは3回目です」

── 1998年2月、福岡地裁・陶山博生裁判官のお言葉です。3回罪を犯して、3回とも同じ裁判官に当たったということですか?

その通りです。3回とも覚醒剤で捕まっているのですが、1回目は93年、佐賀地裁で懲役8か月の実刑判決、2回目は95年、福岡地裁で懲役1年6か月の実刑判決、そして3回目が98年、同じく福岡地裁で懲役2年の実刑判決。

いずれも陶山裁判官が刑を言い渡しています。たまたまですが、陶山裁判官の異動先まで追いかけていることになりますね。なかなかのレアケースでしょう。

 

── このとき陶山裁判官は、「私は2回裏切られたが、強い意志を持って、これを最後に本当に覚せい剤をやめてください」とおっしゃったそうですね。

内心、落胆していたでしょうね。でも、「やめてください」と言われてもやめられないのが薬物なんです。それくらい薬物は怖いものだということも、このエピソードからわかると思います。おそらく自分の力だけではやめられないと思うので、いろんな人の支援を受けることも必要になるでしょうね。

無味乾燥な判決文を読み上げるだけではない

── ここまで紹介してきたような「裁判官のお言葉」は、どういうときに聞くことができるのでしょうか。

(写真:iStock.com/y-studio)

いちばん多いのは、刑事裁判の後半ですね。前半は、氏名や生年月日などを尋ねて本人かどうかを確認する「人定質問」など、形式的なやり取りが多いんです。

後半に入ると、「被告人質問」が行なわれます。まず弁護人からの質問があり、次に検察からの質問があり、そのあと裁判官からの「補充質問」がある。この補充質問の際に、裁判官の本音を聞けることがあるんです。

それと、判決理由を述べるときですね。厳しい言葉の場合もあれば、優しい言葉の場合もあります。判決理由は裁判所の記録に残っているので、調べようと思えば誰でも調べることができます

 

調べるのが難しいのは「説諭」です。法律上では「訓戒」と言って、刑事訴訟規則第221条で「裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる」と定められています。決して、「気まぐれ発言」ではありません。

この説諭は、裁判所の記録には残らないんです。だから、傍聴席に座って実際に聞くか、マスコミの報道で伝わっているものを調べるしかありません。

 

「もうやったらあかんで。がんばりや」

── 他には、閉廷後に声をかけるパターンもあるそうですね。これは2003年11月、大阪地裁・杉田宗久裁判官が閉廷後、被告人にかけたお言葉です。

被告人は、育ち盛りの2人の子どもを持つ母親でした。家出した夫の借金を抱え、生活に追いつめられた末、スーパーで万引きをくり返していたんです。

そんな被告人に杉田裁判官は、同情の余地があるということで執行猶予を言い渡しました。そして閉廷後、被告人が退廷するときに裁判官席から身を乗り出し、「もうやったらあかんで。がんばりや」と声をかけたんです。

 

私はたびたび大阪地裁に足を運び、杉田裁判官の裁判を実際に見てきましたが、同じような光景を何度も目撃しています。執行猶予をつけたときは、こうして被告人を励ますことを、おそらく杉田裁判官は習慣にしているのだと思います。

裁判の世界には、「感銘力」という言葉があります。裁判によって、被告人のその後の人生によい影響を与え、二度と同じような罪を犯させない力のことです。杉田裁判官の声がけには、優れた感銘力があると感じます。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】長嶺超輝と語る「『裁判官の爆笑お言葉集』から学ぶ個性あふれる裁判官の言葉」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

 

書籍『裁判官の爆笑お言葉集』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

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