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ロジカル筋トレ

2023.04.25 公開 ツイート

ほとんどの人が誤解している「階段の疲れない上り方」 つま先だけでのぼるのはNG! 清水忍

体を動かしたくなる気持ちのいい季節。フィットネスクラブや自宅筋トレで、賢く体を鍛えるにはどうすればよい?

プロアスリート界でその名がとどろくカリスマトレーナー・清水忍氏の書籍『ロジカル筋トレ』(幻冬舎新書)から、今回は下肢の筋肉を効率よく鍛える方法を公開します。

*   *   *

(写真:iStock.com/metamorworks)

階段は「尻を使って」上れば疲れない

私は、日々の生活動作でも地面をしっかり踏み込むようにしていくことが大切だと考えている。

歩くにしても、立ち上がったりしゃがんだりするにしても、普段から地面を踏み込むのを意識していると、人は自然に合理的で効率のいい体の動かし方をするようになっていく。

また、そうやって日々合理的に体を動かしていると、だんだん全身がスムーズに動くようになり、体が疲れにくくなったり、関節を痛めにくくなったりといった数々の効果がもたらされるようになるのだ。

 

ここは「階段上り」を例にとって説明することにしよう。

みなさんは普段どのような階段の上り方をしているだろう。もしかして、軽く前傾姿勢をとりながら一歩一歩ステップの端に「つま先」をかけ、ひざを前に出すようにして上ってはいないだろうか。

じつは、この上り方はたいへん疲れやすく、ひざの負担も大きいのだ。

この上り方をしていると、太ももの前側やふくらはぎなど、足の特定の筋肉に負担がかかる。おそらく、長い階段を上った際、これらの筋肉に疲れを感じる人も多いはずだ。

それに、この上り方をしていると一歩一歩ひざに体重がかかり、ひざ関節のクッションで負荷を受け止めながら上るかたちになる。そのため、長年この上り方をしていると関節が悲鳴を上げ、ひざ痛に陥りやすくなるのだ

階段のざんねんな上り方(イラスト:中村知史)

では、いったいどういう上り方をすればいいのか。

そこで、ぜひ習慣づけてほしいのが「一歩一歩階段のステップを“かかと”で踏み込む上り方」なのである。

この上り方を具体的に紹介すると、まず、姿勢は前傾させずにまっすぐの状態をキープ。ステップにかける足は、つま先からかかとまでの全体を奥のほうまで入れていくほうがいい。

そのうえで、足のくるぶしの真下へ体重をかけるようなつもりで「かかと」でステップをしっかり踏み込んでいくのである。

それと、この踏み込みの際に忘れないでほしいのが、「尻に力を込めること」だ。すなわち、尻に力を入れながら、股関節を伸ばす動作をしている意識でステップを下へ強く押し込み、その地面反力を使って体を上げていくのである。

さらに、体を上げる際は前方を意識するのではなく、体を真上へ上げるのを意識してステップを上っていくといいだろう。地面を真下に押し込むのだから、反作用として体は真上に押し上げられる。

ロジカルな上り方(イラスト:中村知史)

このように、階段は一歩一歩ステップを押し込みながら「尻で上る」ものなのだ。

この上り方をしていると、尻を司令塔のようにして、足の筋肉にかかる負担がバランスよく分散される。また、足の踏み込みによって地面反力が利くため、あまり力をかけず余計なエネルギーを使わずに上れるようにもなる。

これによって、疲れることなくスイスイと階段を上れるというわけだ。

 

しかも、この上り方をマスターすれば、ひざ関節のクッションの力を借りずとも、足腰の筋肉の力だけで体を上げていくことができるようになる。そのため、ひざ関節にあまり負荷がかからず、ひざを痛めにくくなるのである。

きっと、現在ひざ痛に悩まされている方も、この上り方なら痛みを気にせずラクに階段を上れるようになるはずだ。

以前、私のもとにひざ痛持ちの人がいらっしゃっていたことがあるのだが、その人にこういった「ひざ関節に負担をかけない体の使い方」を指導して実践してもらったところ、なんとそれだけでひざ痛が治ってしまった

階段上りでトレーニング界の盲点「腸腰筋」が鍛えられる

なお、こうした「正しい階段上りの習慣」は、体のインナーマッスル・腸腰筋を鍛えることにもつながる。

腸腰筋は背骨と大腿骨をつないでいて、体を支えたり太ももを上げたりするのに重要な働きをしている筋肉だ。高齢になってから歩行機能を衰えさせないようにするには、この筋肉をしっかりキープしていくことが不可欠だとも言われている。

「腸腰筋」は大腰筋・腸骨筋などの総称(写真:iStock.com/sumaki)

ただ、じつはこの腸腰筋、非常に重要であるにもかかわらず、非常に鍛えにくい筋肉なのである。

腸腰筋を鍛えるには、「もも上げ」のように、足をしっかり引き上げるトレーニングを積むことが有効なのだが、不思議なことに、太ももを引き上げるタイプのトレーニングメニューはほとんどない

トレーニングとして思い当たるのは本当に「もも上げ」くらいのもので、マシントレーニングでも有効なものはわずかしかない。足を引き上げる動作は、トレーニング界における盲点になっているのかもしれない。

 

しかし、「正しい階段の上り方」を習得して、しっかりひざを上げ、しっかり足を上げてステップを上っていれば、おのずと腸腰筋を刺激することができる

だから、腸腰筋の機能を維持して、歩行機能を末永く維持していくという点でも、日々の生活の中で正しく階段を上るよう習慣づけていくほうがいいのだ。

それに、足を引き上げる動作は、しっかり地面を踏み込むためにも欠かせないものだ。

「足を引き上げる」のと「足を下へ踏み込む」のとでは、まったく逆の動きになるわけだが、しっかり足を踏み込むためにはしっかりと足を上げなくてはならない。

日々足を引き上げるのを習慣にしていれば、丈夫な足腰を維持できるだけでなく、地面を踏み込む力がよりいっそう増して、毎日の生活・スポーツ・習い事などのさまざまな場面で安定したパフォーマンスを発揮していけるようになるだろう。

 

私は、自分が指導するアスリートには、普段の生活でも階段上りをはじめ「地面をしっかり押し込む動作」を実践してもらっている。

実践した選手たちからは、

「おかげでケガをしなくなった」「体が軽く感じられるようになった」「腰の動きがよくなった」「疲れが回復するのが早くなった」「姿勢がよくなったと他人から言われるようになった」「ぐっすり眠れるようになった」

といった声も上がっている。

きっと、足腰で地面を押し込むという合理的動作が身につくと、体のさまざまな機能が本来的な役割を取り戻すのだろう。体を効率よく動かせるようになったことで、体のさまざまな歯車が一斉によい方向へ回り出すのだ。

足腰は、わたしたちの体を支える「土台」だ。この土台が地面の力を得て安定すると、おのずとフォームが安定して、しっかりと体を支えながら、体をスムーズに動かしていけるようになるのである。

ロジカル筋トレの極意は、「足腰で地面を押し込むこと」だと言っても差し支えない。

だからみなさんも、ぜひ日々のトレーニングでその「極意=足腰で地面を強く押す力」を身につけるようにしてほしい。そして、理に適った動作を習慣づけて、パフォーマンス向上などの自分の目的を叶えるのに役立てていってほしい。

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関連書籍

清水忍『ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える』

あなたは目的に合致したフォームや回数を論理的(ロジカル)に考えた上でトレーニングしているか。たとえば腹筋運動でへそをのぞき込むように上体を起こしている人は、肝心の腹直筋を使えていない。あごを引きすぎず、頭と背中のラインを一直線にして起こすようにすれば腹直筋によりフォーカスできる。わかりやすいイラストと解説が、筋トレ効果を最大限にアップする!

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ロジカル筋トレ

2021年3月25日発売の幻冬舎新書『ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える』(清水忍氏著)の最新情報をお知らせいたします。

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清水忍 健康運動指導士、パーソナルトレーナー

トレーニングジムIPFヘッドトレーナー。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)、健康運動指導士。1967年、群馬県生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校講師を経て独立。「なぜ」を追求するロジカルなトレーニング指導で、メジャーリーガー・菊池雄星投手らプロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇る。ダイエット指導歴35年以上。NESTA JAPANエリアマネージャー、菊池投手考案の複合野球施設「King of the Hill」アドバイザー。「Tarzan」監修など多くのメディアで活躍中。最新刊『ロジカルダイエット』のほか『ロジカル筋トレ』『超宅トレ』など著書・監修書多数。

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