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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2023.03.19 公開 ツイート

海外で働きたいならまず「“私の”ブルーオーシャン戦略」を【再掲】 鈴木綾

20代で来日、外資系企業で6年間働き日本語堪能、30歳になる直前でロンドンに移住、現在はイギリスのスタートアップ企業で働く鈴木綾さん。本連載では、等身大の女性たちが直面する社会の矛盾や問題を共感多々のなか更新中ですが、そんな綾さんが自国を出て働こうとした際、実際に立てた計画とは。今月の特集「日本脱出のための語学」の中であらためてご紹介します。

※この記事は「語学能力より不可欠な、海外で働くための「ブルーオーシャン戦略」(2022.02.23公開)を再編集したものです。

*   *   *

海外で働くことに関心を持っている日本人は少なくないと思う。実際いろんな人にそういうこと聞かれるから。しかし、海外で働きたいと思う人たちの多くは、海外で働くことのハードルを勘違いしている。

「英語が話せないとだめでしょ」

 

もちろん、現地の言葉、あるいは世界共通言語である英語は一定程度はしゃべれないといけないけど、言葉はそんなに大きい問題ではない。むしろそこでひっかかっちゃうことのほうが問題。

大事なことは、自分に、海外のその国に住んでいる人よりもできること、提供できる何かがあること。自分に何ができるかをよく考えるのが一番大事。これをイメージするのに、私は「ブルーオーシャン戦略」を使っている。

「ブルーオーシャン戦略」というのは、MBAで教えられている経営戦略のフレームワークの一つ。この考えによると、すでに競争が激しい市場じゃなくて、未開拓の市場に参入したほうが長期的な利益拡大につながる。

この戦略はビジネスだけじゃなくて、個人のキャリア形成を考える上でも役に立つ。

「自分に海外のその国に住んでいる人よりできる/提供できるものは何があるのか」のところに戻ろう。それがまさに、自分の「ブルーオーシャン」を探すということ。これが理解できれば、簡単に「自分が海外でできる仕事」をピンポイントに定めることができる。

(写真:iStock.com/ra2studio)

私自身の経験を一例としてお話すると、よくわかってもらえると思う。

私は大学卒業後、日本で働きたかった。労働ビザがなかったので、現地に行って就活をするしかなった。就職をした時、いま思えば自分の「ブルーオーシャン」を考えてから就活を始めた。

日本に来た最初の頃、私はまだ日本語をそんなにうまく話せなかったけど、日本語以外に複数の言語を話すことができた。そして、大学で文学を勉強したので、難しい本や資料を大量に読んで要約する能力を身につけていた。そこから考えたら、外資系企業でリサーチやリポート作成をする仕事が自分に一番あっていると思った。実際、私は日本の外資系メディア会社に採用された。

自分のやったことが「ブルーオーシャン戦略」だったということは、日本を離れてフランスのMBAで学んだ時、初めて理解した。

「ブルーオーシャン戦略」を使って仕事探しをするというのは、最初から選択肢を絞って、本当にピンポイントに数社の会社にしか応募しないということ。私は事前に深く自分の持つアドバンテージを考えて、それを前提にリサーチをして、自分が自分以外の99%の人よりできる仕事とその仕事を提供できる会社を考えた。多くの人は転職を考える時、あんまり考えずに何十社にも応募するけど、それは時間の無駄。自分の「ブルーオーシャン」を考えて、採用可能性の高い会社を狙ったほうが効率的だし、無闇にたくさんの会社に応募して落とされ続けて落ち込む、なんて経験もしなくて済む。

このことは日本国内で転職を考える時も多分同じだと思うけど、海外で働きたいならなおさらのこと、これはとても大事。自分の「ブルーオーシャン」を探してください!


私がロンドンの投資会社に勤めていた時に、ロンドンの金融業界で働きたいという日本人男性からアドバイスを求められた。「綾は一流投資会社に勤めているけど、僕がそこで働くにはどうすればいい?」と単刀直入に尋ねられた。でも、投資経験がなくて、ずっと日本でコンサルをやっていて、海外勤務の経験はありません、というだけの彼が、その会社に雇われるわけがなかった。

だから私は、「ブルーオーシャン戦略」を彼に説明した。日本に投資をしている、あるいは投資を始めたいと思っているヨーロッパのファンドを探すように勧めた。そういう会社なら、投資経験のない彼でも、日本語ができる/日本のマーケットを知っているというだけで採用のチャンスはある。まずそういうところである程度経験を積んでから、日本と関係ない投資会社に応募してみるといいと思うよ、と。

残念ながら、その彼は私が言っていることがあまり理解できなかったらしい。そのあときっと就活で苦労したんだろう……。


最後にもう一つ、海外勤務願望の人に考えてもらいたいことがある。

それは、海外で働くのが大事なのか、それとも海外の特定の国で働くのが大事なのか、をよく考えてほしいということ。

一例を挙げます。

帰国子女の日本人で、海外に戻りたいとずっと考えている友達がいる。彼女はイギリスで育ったので英語がネイティブ。彼女が今勤めている日本の外資系企業では海外転勤の可能性はあるけど、確実ではないし、場所もイギリスじゃない国になるかもしれない。

彼女がこの間、また「海外行きたいー」とぶつぶつ言っていたので、私はちょっと切れた。

「〇〇さんが『イギリス』で働きたいのなら、明日からでもイギリスに行って仕事を探せばいい。でも今の会社で働きながら『どこか海外』に行きたいと思うのなら、もうちょっと我慢したほうがいい」

働きたい国が決まっているんならあなたはすぐにでもできる! 待つ必要なんかない。

海外で働くのは私にとって非常に貴重な経験だった。ずっと母国に残るより、私は海外で10年以上働いて柔軟性も異文化コミュニケーション能力も得たし、自分の国だったら絶対に任せられなかった重要な仕事を任されて自分の可能性を広げることができた。

視野を広く持って、選択肢をたくさん考えることができるようになった。

大事なのは、「自分のブルーオーシャン」を見極めること。それができれば海外でも仕事は探せる。英語はあとからいくらでも付いてくる。二の次だと言っても過言じゃない。

だから、私は誰にでもお勧めします。

若者よ、大志を抱け!

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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

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鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。ロンドンの投資会社勤務を経て、現在はロンドンのスタートアップ企業に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

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