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マスクを外す日のために

2023.01.21 更新 ツイート

コロナ5類へ移行を検討。「マスク不要」でも不安にならない免疫力の高め方・マスク依存のリスクとは 和田秀樹

政府は本格的に、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移す検討を始めています。それに伴い、屋内でのマスク着用も不要になる、という方針に。

そんな中、マスク依存、過剰な自粛によるデメリットについて、警鐘をならしてきた医師・和田秀樹氏による新書『マスクを外す日のために』が改めて注目されています。

これまであまり語られてこなかった、マスク漬けによるデメリットについて解説、「マスク不要」でも不安にならない免疫力の高め方について解説します。

マスク漬けのリスクとは

まず、本書の冒頭で確認しておきたいのは、マスクをすることには、メリットもあれば、デメリットもあるということです。

むろん、いちばんのメリットは、新型コロナを含めて、感染症をうつすことをある程度予防できること。そして、デメリットは? ──これはもう、数えきれないほどありますので、その代表例を紹介していきましょう。

(写真:iStock.com/Yaraslau Saulevich)

まずは、「マスク酸欠」になることです。

マスクをすると、自分の吐いた呼気がマスク内にたまります。呼気は、通常の空気よりも二酸化炭素を多く含んでいますので、マスクをつけ続けていると、たえず「二酸化炭素多め、酸素少なめ」の空気を吸い続けることになります。

すると、どうなるか? ──医学用語を使えば、血中二酸化炭素濃度が上昇します。その第一の弊害は、頭痛が起きやすくなることです。二酸化炭素は、脳の血管を拡張させるので、三叉(さんさ)神経などを刺激して、頭痛の引き金をひくのです。

当然のことながら、酸欠状態では、思考力や記憶力といった脳の力が低下します。脳は、その重量は全体重の2%ほどしかないのに、ヒトが摂取する酸素の20%をも消費する「酸素大食い臓器」です。新鮮な酸素が脳に行き渡らなければ、たちまち支障が生じるのです。集中力を保てなくなり、眠くもなります。中・長期的には、脳内神経細胞や情報伝達システムの劣化によって、「頭が悪くなっていく」リスクもあります。

 

次いで、酸欠は、体全体の免疫力の低下を招きます。酸素不足に陥ると、血流が悪くなり、免疫細胞を全身に十分に運べなくなるのです。つまり、新型コロナ感染予防のためマスクをかけているのに、免疫力を落としてかえって感染しやすくなるという話にもなりかねないのです。

「酸欠」以外にも、「マスクをかける」ことには、多種多様なデメリットがあります。列挙すると、

 

  • 呼吸が浅くなるため、自律神経系に悪影響を及ぼします。
  • 心拍数が増え、循環器系に負担がかかりやすくなります。
  • 口の中の渇きを感じにくくなり、水分不足に陥りやすくなります。

 

むろん、ご承知のように、「体温調節がうまくできなくなる」というマイナスもあります。人の体には、体温を一定に保つ機能が備わっていて、体温が上がったときには、体熱放散機能を働かせて、体温を下げようとします。しかし、マスクをしていると、その機能がうまく働かなくなるのです。とりわけ、気温・湿度が高い夏場は、熱中症の原因になり、悪くすれば命を落とすリスクさえ生じます。

そして……切りがないので、このあたりでやめておきますが、マスクが人体にとって「諸刃の剣」であることは、おわかりいただけたと思います。少なくとも、マスクをすることが、未来永劫「常態化」していいわけではないことは、ご理解いただけると思います。

マスクの最大のデメリットは「人の表情が読めなくなる」こと

本書では、以上のようなマスクのデメリットを「マスク禍」と総称しますが、ここで、少々視点を変えて、精神科医の立場から、あまり語られることのない「マスク禍」について、お話ししたいと思います。

それは「人の表情が読めなくなる」ことです。

欧米の人々があれほどマスクを嫌うのは、「相手の表情を見ながら、コミュニケーションをとる」という人間の基本的な行動が失われることが、動機の一つになっています。それもあって、アメリカやイギリスでは、ワクチン接種が一定程度進んだところで、マスク着用義務が段階的に解除されました。一方、わが国では、ワクチン接種率が欧米を超えても、依然、マスクを外せない生活が続いています。このまま、ずっとマスクをつけ続けていると、どうなるか──おそらく、微妙なコミュニケーション能力が失われていくと思います。

 

例をあげると、私たちは、コロナ禍以前のマスクをしていない頃、相手の「作り笑い」を表情から見抜いてきました。

人間は、本当におかしいと思って笑うときには、まず口が笑い出し、続いて目が笑います。口と目の動きには若干のタイムラグがあるのです。一方、作り笑いでは、口と目が同時に笑いはじめる。意図的に笑顔をつくろうとすると、口と目が同時に動いてしまうのです。

私たちは、その口と目の微妙な動きから作り笑いを見抜く能力を養ってきました。そうして、広い意味での生存戦略にも役立ててきたわけですが、マスクで口もとが隠されると、その能力を発揮できなくなります。

 

また、私たちは、相手のさまざまな気持ちの動きも、口もとの様子から読み取ってきました。たとえば、相手の機嫌の良し悪しは、口の両端の角度に現れます。たとえば、相手がこちらの話を聞いて、楽しく思っているときには、口角(口の両端)が上がり、つまらないと感じているときには下がります。私たちは、その口角の上下を見て、自分の話がウケているかどうかを確認していたのです。マスク姿の相手には、この能力も発揮できません。

また、鼻も、表情を読み取るのに重要な部位です。日本語には「鼻の穴をふくらませる」「小鼻をうごめかす」「鼻高々」など、「鼻」を使った慣用句が多数ありますが、それも、私たちが鼻の微妙な動きから感情を読み取ってきたことの証左といえます。マスクをつけると、その「鼻」も覆ってしまうことになるのです。

 

というように、私たちは、互いに表情を読み合うという技術を使って、円満な社会関係を築いてきたのですが、マスクをしていると、その技術を活用することができないのです。

いうまでもないことですが、人間は一人では生きられません。孤島に流されたロビンソン・クルーソーだって、フライデーと表情を読み合っていたはずです。相手の表情を読む力は、社会を円滑に維持するためにも、重要な技術なのです。

今後さらにマスクをつける時代が続けば、日本人の表情を読む力は確実に衰えていくでしょう。それは、日本人のコミュニケーション能力を落とし、ひいては一人ひとりの感情状態を悪化させ、孤立を招きます。極端にいえば、「拡大自殺」のような犯罪の遠因にもなるとも考えられます。

誰もいわない、「自粛」の副作用とは

そもそも、日本人は、一年に何人くらい「風邪」で死んでいるのでしょうか。

これは、死亡診断書の死因欄に「風邪」と書くわけではないので、明確な数字を出すのは難しいのですが、年間約2万人が風邪を原因として「風邪関連死」しているのではないかというのが、私を含めた多くの医療関係者の見るところです。

一方、新型コロナで亡くなった人は、この原稿を書いている2022年4月上旬時点で、2020年以来の足かけ3年で、約2万9000人。それが2年余りの数字ですから、風邪の年間死者数よりも少ないと見られます。また、インフルエンザ関連の死者は年間約1万人と見られますから、死者数に関しては、新型コロナは、それとあまり変わらない感染症なのです。

逆にいえば、それだけの数の人々が、風邪やインフルエンザで命を落としています。それでも、風邪やインフルエンザが流行しているとき、誰も「不要不急の外出は避けましょう」「県境を越える移動を控えましょう」とはいいません。ところが、こと新型コロナに対しては、「三年一日」の自粛策が続いています。

 

むろん政府も、私が紹介した程度の数字は先刻承知しています。しかし、「出口戦略」はごく小さな声でささやかれる程度で、実行には移されません。

まん延防止等重点措置などによる、これまでの「自粛策」は明らかに過剰で、不適切な政策だと思ってきました。

そして現在、そうした自粛策は「万病の元」であり、「自粛禍」は、新型コロナへの感染以上に「人の命を奪っている」とさえ思っています。その理由をお話ししましょう。

 

私たちは、自粛生活のなか、多くの「自由」を失っています。友人・知人と自由に食事することすらはばかられ、そもそも彼らとの会話さえ不自由です。外で自由に運動することにも気がひけて、買い物も不自由です。子供を外で自由に遊ばせることができないし、実家に自由に帰省することもできず、老親にもなかなか会えません。コンサートや映画、スポーツ観戦に出かけることにも、制限がかけられることが多くなっています。

というように、自粛は、私たちから何事も自由だったコロナ禍以前の日常を奪い取っています。そのことが、人命を奪うことにつながるのです。

その犠牲となる人の多くは、高齢者です。高齢者は外出を控え、自宅に数か月引きこもるだけで、歩行機能が弱まり、自立歩行さえおぼつかなくなります。また、人と話さない暮らしが続くと、認知機能が衰えます。

そのような足腰、認知機能が衰える症状を「フレイル」と呼びます。フレイルは「虚弱」という意味で、正常と要介護の間のような状態を指します。いったん、フレイルに陥っても、適度に運動したりすれば、元の状態に戻ることができるのですが、自粛生活のなかでは、それもままなりません。

外出しないことで、運動不足になり、筋力が衰えて転倒、骨折、要介護状態になったという人を、私はこの2年余りの間、多数見聞きしてきました。高齢者の自粛生活は、要介護状態への最短ルートとなるのです。

 

また、自粛生活のなか、買い物がしにくいと、栄養バランスのとれた食事をとりにくくなります。そして、糖尿病などの持病を悪化させている人が少なくありません。これも、要介護を増やすことにつながります。

今、日本の要介護高齢者は、要支援を含めて約700万人です。私は、自粛生活が続けば、今後数年のうちに、さらに200万人は増加することになると思います。すると、介護費用は年間4兆円増えます。むろん、死者も急増します。

しかし、テレビを含めたメディアは、そうした自粛禍について、まったくといっていいほど、報じません。今、テレビに専門家として出演するのは、感染症の専門家ばかりです。彼らは「外出を避け、ワクチンを接種しろ」とはいっても、フレイルや要介護予防については何も語りません。いや、その分野は専門外で知識がないので、語ることができないのです。そうして、自粛禍の深刻な「副作用」について、国民はほとんど知らされることがないまま、2年以上の日々が経過したのです。

 

続きは本書『マスクを外す日のために 今から始める、ウィズコロナの健やかな生きかた』でお楽しみ下さい。

関連書籍

和田秀樹『マスクを外す日のために 今から始める、ウィズコロナの健やかな生き方』

みなさんも薄々感じておられるのではないでしょうか。そろそろマスクを外しても大丈夫なのではないかと……。欧米の多くの国がマスク着用義務の緩和や撤廃に踏み切っている中、日本だけが議論すらなされていません。マスクには健康上のデメリットもあり、特に子どもたちへの悪影響は深刻。マスクのほかにも、長く続いた自粛生活自体のダメージははかりしれません。「自粛・防御一辺倒」の対策に追われるのではなく、自らの免疫力を高めながら、マスクを外す日に今から備えませんか。コロナを恐れすぎずに生きる、新・健康論。

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マスクを外す日のために

みなさんも薄々感じておられるのではないでしょうか。そろそろマスクを外しても大丈夫なのではないかと……。

欧米の多くの国がマスク着用義務の緩和や撤廃に踏み切っている中、日本だけが議論すらなされていません。

実はマスクには健康上のデメリットもあり、特に子どもたちへの悪影響は深刻。マスクのほかにも、長く続いた自粛生活自体のダメージははかりしれません。

「自粛・防御一辺倒」の対策に追われるのではなく、自らの免疫力を高めながら、マスクを外す日に今から備えませんか。コロナを恐れすぎずに生きる、新・健康論。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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