1. Home
  2. 暮らし術
  3. 病院にかかるお金がありません!
  4. 一刻を争う病気には、「金勘定」は後回しで...

病院にかかるお金がありません!

2023.01.06 公開 ツイート

一刻を争う病気には、「金勘定」は後回しで対処せよ 志賀貢 / 医学博士

年末年始は、家族集まっての楽しい団らんの機会が多くなる一方で、高齢者の救急搬送の件数も多くなります。「いざ」という時、大切な家族に何ができるのか。医学博士・志賀貢さんの『病院にかかるお金がありません!』から心に留めておくべき知識をお届けします。

(写真:iStock.com/champpixs)

「迷わずに救急車を呼ぶ」べき高齢者の状態

高齢者の急病は、時間を争います。そんな時は、昔、育てた赤ん坊のことを思い出してください。真夜中に、突然火のついたように泣き出すと、若い母親は、ただオロオロするばかりだったはずです。しかし、手当てをしない限り、赤ん坊は泣きじゃくり続けます。

それと同じで、病は、大至急、適切な手当てをしない限り、命が脅かされます。

例えば、熱が40度もある場合。倒れたまま意識が朦朧としている場合。吐血して苦しんでいる時。あるいは、腹痛を訴えて七転八倒している時など。

高齢者が、そんな状態に陥っている時は、まず迷わずに救急車を呼ぶ

駆けつけた救急車で、もし運よく急病に対応できる病院に運ばれた場合には、一刻を争うような病気でも助かる確率はグーンと高くなります。

最近、やたらに多くなってきた脳梗塞で倒れた場合には、超急性期の血栓溶解療法に威力を発揮する注射液のtPAは発症4時間30分以内に打つと劇的に効くことが多いのです。

また、ひと昔前までは、不可能に近かった心筋梗塞への対応も、早いうちであれば血管を拡張するステントの挿入や、あるいは緊急のバイパス手術などで一命を取り留めることもできます。

ここまで進んできた医療技術に頼らないという手はありません。

お金の心配などは後回しにして、とにかく病院をめざすことです。そして手当てを急ぐことです。

首都圏では、午後8時以降になると、手当てをする救急病院を見つけることが難しくなります。

例えば、医者自身が心臓発作を起こした時、駆けつけた救急隊が、搬送先を見つけられずに戸惑っていて、たまりかねた妻が人工呼吸や心臓マッサージで夫の命を救った、という例もあります。

そうした時には、病院探しのために、知人、友人に連絡を取り、総力を挙げて病院の情報を集めるべきです。

救命のイロハを家族全員が身につけておく

同居している高齢者は、いつ急病で倒れるかわかりません。

一家に一台いざという時のために、心臓にショックを与えて除細動を行うAED(自動体外式除細動器)や、誤嚥した場合に喉の吸引を行う吸引器などを用意しておけば、安心して高齢者と同居できるかもしれません。

しかし、高価で、素人では操作が難しい器具を、一家に一台用意することはとても無理です。

急場をしのぎ、救急車が駆けつけてくれるまでの間、倒れた家族の命を救うために愛の手がなにより必要です。

そして、器具に頼らず献身的に、命の消えようとしている状態から回復させる努力だけはしなければなりません。

普段から救急処置の知識を養え

ある三世代同居の家で、82歳になる祖父が突然意識を失い倒れました。その時、同居していた大学生の孫娘の処置は、医者も舌を巻くほど見事なものでした。

彼女はすでに自発呼吸が無いことを確かめると、いきなり祖父の上に馬乗りになり、心臓マッサージを始めました。取り囲んでいる家族は、ただオロオロするばかりで救急車の手配をするのが精いっぱいという混乱ぶりでした。

孫娘は胸部に手を当て、一心不乱に心臓の辺りを強く押し続けました。

その数分後でした。祖父は、大きく一つ息を吸うと意識を回復しました。

救急車が到着するまでの約7分間、彼女の咄嗟の救命処置が祖父の命を救ったのです。まさに、孫娘の祖父を思う愛の手が、高価なAEDに負けない素晴らしい効果を上げた一例です。

家庭での救急処置は、みんなで日頃から話し合っておきましょう。

 

 

関連書籍

志賀貢『病院にかかるお金がありません! 最もかしこい医療費捻出の裏ワザ』

毎月12万9千円、払えますか――?  75歳を襲う「人生最大の災難」を乗り越えろ! 人気病院長がこっそり明かす、医療費の節約術&金をかけない健康維持術! 「もうお金がないので、退院させて!」 医療現場では毎日のように、患者さんからこの言葉を聞くそうです。 医療費の他に、食費、オムツ代・アメニティ代、ベッド代と、約13万円の出費が襲うからです。 備えあれば憂いなし。 本書では人気病院長が、入院のノウハウ、医療費の節約法、健康寿命を保つための最新情報をわかりやすく解説します。 ・2022年10月より入院自己負担増の衝撃 ・年金5万円でも入院治療が受けられる ・最後の奥の手は「世帯分離」 ・マッチングの得意な医者を選べ ・入院費を無駄にしない入院先の決め方 ・ローンで医療費を調達してはいけない ・「ぱぴぷぺぽ」が言いにくくなったら要注意! 等…

{ この記事をシェアする }

病院にかかるお金がありません!

毎月12万9千円、払えますか――? 
75歳を襲う「人生最大の災難」を乗り越えろ!
人気病院長がこっそり明かす、医療費の節約術&金をかけない健康維持術!

バックナンバー

志賀貢 / 医学博士

北海道生まれ。医学博士、作家。昭和大学医学部大学院博士課程修了。長らく同大学評議員、理事、監事などを歴任し、大学経営、教育に精通している。内科医として約55年にわたり診療を続け、僻地の病院経営に15年従事。また介護施設の運営にも携わり、医療制度に関して造詣が深い。その傍ら執筆活動を行い、数百冊の作品を上梓している。近著には、『臨終医のないしょ話』『孤独は男の勲章だ』『臨終の七不思議』(いずれも幻冬舎)等がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP