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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2022.12.09 公開 ポスト

岸田首相も市川團十郎も…政治家と歌舞伎役者はなぜ「世襲」が多いのか?武器になる教養30min.編集部

政治家と歌舞伎役者の共通点、それは「世襲」が多いこと……。いったいどうしてなのか、改めて考えてみると不思議ですよね。じつは、それぞれに違った深い理由があったのです。新刊『世襲──政治・企業・歌舞伎』を上梓した、編集者で作家の中川右介さんにお話をうかがいました。

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】中川右介と語る「『世襲 政治・企業・歌舞伎』から学ぶ世襲問題」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

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世襲議員になぜかモヤモヤするわけ

── 本書はサブタイトルにあるように、世襲が目立つ「政治」「企業」「歌舞伎」の3つの分野で世襲システムがどう生まれ、どう機能し、どう破綻してきたか、豊富な実例とともに描いた歴史読みものです。実際に執筆してみて、とくに印象に残ったのはどのあたりですか?

(写真:iStock.com/mizoula)

意外だったのは、政治家の世襲ですね。歌舞伎の世界のように、男の子が生まれたら「お前は将来、政治家になるんだぞ」という教育をして、自分の秘書にして、引退したら跡を譲るものだと思っていたんです。ところが、そういう例はむしろ少ないんです。

よくあるのは、父親が突然亡くなるケースです。ほかに後継者がいないから、しかたなく息子が継ぐことになる。将来、政治家になるために一生懸命勉強するわけでもなく、普通の子どもとして育って、普通に会社に勤めていた人が、後援会から「継ぐのはお前しかいない」とか言われて政治家になるわけです。

何人かいる秘書の中から選んだり、県議会議員の中から選んだりすると、内輪もめが起きますよね。それを避けるために、「まあ、あの人ならしかたない」とみんなを納得させるためだけの理由で政治家になった人が多いんです。

 

── 私たちからすると迷惑な話ですね。優れた能力や経験を持っている人にこそ、政治家になってもらいたいのに。

おっしゃる通りですね。さらに問題なのは、そんな人でも政治家を続けられるという点です。どれだけ無能で、スキャンダルばかり起こして、金に汚くて、女性にだらしない人でも、選挙区の住民が投票すれば通ってしまう。

だから、政治家というのは甘いなと思います。企業の場合、継いだ本人に能力がなければ業績が傾き、やがて倒産してしまいます。そうなる前に、「もう辞めろ」という声も社内や取引先から出てくるでしょう。

だから規模が大きい企業ほど、創業家は大株主として残るけど、経営にはタッチしないケースが多いんです。そういう厳しい面がビジネスにはあるんだけど、政治にはそれがない。当選回数を重ねて、自分の専門でもなんでもない大臣をやって、ついには何かの拍子に総理大臣になってしまう人もいる。

 

── 政治家の場合、ブランド力が大きく働くってことですよね。

というより、ブランド力だけでなれるのが政治家です。歌舞伎の場合、ブランド力で襲名まではできるけど、本人に実力がなければ主役にはなれません。そういう淘汰が働かないのが、政治の世界の問題点だと思います。

歌舞伎もピアノも大人になってからでは遅い

── 改めて世襲システムのよい面と悪い面について、ポイントを挙げてもらえますか。

(写真:iStock.com/kieferpix)

悪い面は、政治家の例でお話ししたように、その人に能力がない場合ですね。本人にとっても、まわりの人にとっても不幸なことですし、社会にもマイナスの影響を及ぼしかねません。

本当に能力のある人がその地位につけないのもマイナスです。先代のドラ息子より優秀な社員はいるのに、上に行くことができない。社長の息子しか社長になれないという会社は社員のモチベーションが下がるし、経済にも悪影響を与えるでしょう。

 

── 一方、よい面はどんなところですか?

小さいうちからしっかりした教育を与えることができる点ですね。3歳くらいから鍛え始めないと、ものにならない世界ってあるんです。クラシックでも、小さいうちからピアノを習い始めないと本当に素晴らしいピアニストにはなれないという厳しい現実があります。

歌舞伎の世界は、まさにその典型でしょう。現在、主役を演じるようなトップクラスの役者のうち、親が歌舞伎役者でないのは、坂東玉三郎と片岡愛之助の2人だけ。そんな彼らも、若くして養子に入っています。

一般家庭に生まれた男の子が歌舞伎を見て、「僕も歌舞伎役者になりたい」と15歳くらいで思ったとしても、なかなか難しいのが現実なんです。

 

── 世襲というシステムが、小さいうちから芸を教え込むのに有効だということですね。

そういうことです。明治時代くらいまでは、ルックスのいい子どもをよそから買ってきて、養子にして育てて、役者にするというシステムが歌舞伎の世界にはありました。でも、いまの時代はそんなことは無理に決まっています。人身売買そのものですから。

だから自分の子どもを役者にするしかなくなった、という消去法的な側面もあると思います。小さいうちから徹底的に芸を教え込むシステムを成り立たせるには、自分の子どもを世襲させるしかない。こうした理由で、歌舞伎の世界には世襲が根づいているのだと思います。

 

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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