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月はすごい 資源・開発・移住

2022.11.16 更新 ツイート

干潮・満潮はなぜ1日2回? 月の重力と潮汐の仕組み 佐伯和人

アメリカ主導による有人月面着陸計画「アルテミス計画」、民間ベンチャーによる月面探査機打ち上げなど、宇宙開発の中でも特に注目度の高い「月開拓」。なぜ国や企業は「月」に注目しているのでしょうか。

最前線の月探査プロジェクトに携わる佐伯和人さんの著書『月はすごい 資源・開発・移住』(中公新書)から、まずは月の基礎知識として、身近なあの現象の仕組みについて抜粋してお届けします。

潮の満ち引きが1日2回ある理由

月の運行に伴う現象として、押さえておきたいのが、潮の満ち引きである。月のある側の地球の海水は、月の引力に引っ張られて月へ向かって盛り上がる。これが満ち潮である。盛り上がっているのは、月のある側だけでなく、その反対側も盛り上がっている。これは、月が小さいながらも地球を振り回しているからである、

(写真:iStock.com/kdshutterman)

大人が幼児の手を持って、ぐるぐるとメリーゴーラウンドのように回転して振り回すさまを想像してほしい。このとき、子どもが回る遠心力に対抗するために、大人はのけぞってバランスを取らなくてはならない。そうすると、大人の頭にも子どもの反対方向に引っ張られる遠心力が働く。そのような理由で、月と反対側の海水も盛り上がるのである。

ただし、海水が移動するのには時間がかかるので、実際の満潮の位置は、月の真下や反対よりも、地球が自転する方向に少しずれている

おおまかには、月の近くと月の反対側が満潮だと考えて良いので、地球が1周する1日の間に、満潮は2回訪れることになる。また、空の月の位置は毎日おおよそ50分ずつ遅れるという話をしたが、それに連動して、満潮、干潮の時間も毎日おおよそ50分ずつ遅れるということになる。2日連続で海水浴や釣りに行くときには、覚えておくと便利である。

満月と新月のときに起こるのが「大潮」

また、太陽も月ほどではないが地球を太陽と太陽の反対側へ引っ張ろうとする潮汐ちょうせきを発生している。このため、太陽と月と地球が一直線になるとき、すなわち、新月と満月の時には、月が地球を引き伸ばそうとする力と太陽が地球を引き伸ばそうとする力が重なって、ふだんより満潮と干潮との差が大きくなる。この状態を大潮と言う。

海の生き物の中にはこの大潮の時に産卵をするものが複数種いるようだ。その理由は、海中に卵を産む生物は、海水の動きが大きいのを利用して卵を遠くまで運べるからで、浜辺に卵を産む生物は、ふだん海水が届かない陸の奥の方に卵を産めるからということらしい。海釣りは大潮前後が良く釣れるとされているが、これも海水が良く動くことと関係しているだろう。

(写真:iStock.com/Andres Alvarado)

人間の行動や精神に満月が影響を与えるという話はしばしば耳にするが、科学的には確認されていない。潮汐力が人間に影響を与えているとすれば、新月の時にも満月と同じ効果がありそうだが、新月の夜に行動や精神に変化が起きるという話はあまり聞かない。

電灯もなく、夜は月明かりを頼りにしていた時代であれば、満月の夜に活動的になるということはあるだろう。しかし、昨晩の月の形がどんな形だったかも知らずに夜もまぶしい電灯の下で過ごしている人が大半の現代人の生活には、何も影響を与えていないと思う。大潮にそわそわしている人がいるとしたら、それはきっと海釣りが好きな人だ。

*   *   *

この続きは中公新書『月はすごい 資源・開発・移住』をご覧ください。

佐伯和人『月はすごい 資源・開発・移住』(中公新書)

一番身近な天体、月。約38万km上空を回る地球唯一の衛星だ。アポロ計画から約半世紀を経て、中国やインド、民間ベンチャーも参入し、開発競争が過熱している。本書では、大きさや成り立ちといった基礎、探査で新たに確認された地下空間などの新発見を解説。人類は月に住めるか、水や鉱物資源は採掘できるか、エネルギーや食糧をどう確保するかなども詳述する。最前線の月探査プロジェクトに携わる著者が月面へと誘う。

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月はすごい 資源・開発・移住

アメリカ主導による有人月面着陸計画「アルテミス計画」、民間ベンチャーによる月面探査機打ち上げなど、宇宙開発の中でも特に注目度の高い「月開拓」。なぜ国や企業は「月」に注目しているのでしょうか。

最前線の月探査プロジェクトに携わる佐伯和人さんの著書『月はすごい 資源・開発・移住』(中公新書)は月の基礎知識から月がもたらすであろう資源やエネルギー、そして宇宙開発の未来まで解説した一冊。

月の大きな可能性が垣間見えるこの本から、一部を抜粋してお届けします。

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佐伯和人 博士(理学)

1967年(昭和42)愛媛県生まれ。東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士取得。専門は惑星地質学、鉱物学、火山学。ブレイズ・パスカル大学(フランス)、秋田大学を経て、現在、大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻准教授。JAXA月探査「かぐや」プロジェクトの地形地質カメラグループ共同研究員。月探査SELENE-2計画着陸地点検討会の主査を務め、月着陸計画SLIMにかかわるなど、複数の将来月探査プロジェクトの立案に参加している。

著書『世界はなぜ月をめざすのか』(講談社ブルーバクス、2014年)『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社、2016年)ほか

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