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日本が侵攻される日

2022.09.03 更新 ツイート

なぜ尖閣が欲しいのか? 覇権国家中国の野望 佐藤正久

ロシアのウクライナ侵攻、中国による台湾有事の危険性、北朝鮮のミサイル発射の脅威……。世界の緊張感が高まる中、その隣国である日本は本当に安全なのか?

さらにAIや衛星など技術が発達した現代の戦争において、「島国は安全」という理屈ももはや通用しません。これまで以上に私たち一人ひとりが「日本の防衛」について、知識を持ち真剣に向き合う必要があるのではないでしょうか。 

元自衛官で「戦場のリアルを知る政治家」、佐藤正久氏が警鐘を鳴らす『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』を緊急出版いたします。

尖閣諸島をめぐる中国、そして台湾の思惑について、本書より一部を抜粋してお届けします。

*   *   *

なぜ尖閣が欲しいのか?
“小さな侵略”を認めてはいけない

中国はなぜ、尖閣諸島が欲しいのでしょう? 大きな理由は三つ考えられます。

一つは、台湾の東側に位置するためです。尖閣諸島や石垣島を支配すれば、台湾を東西から挟み込むことができます。なぜなら台湾の西海岸は台湾の守りも固く、水深も浅いので潜水艦の運用には不適です。一方、東海岸は守りも薄く、水深も深いので空母打撃群の運用にも適している他、台湾山脈を利用したゲリラ戦や花蓮空軍基地を無力化する意味でも東西からの挟撃は有効なのです。

ちなみに、台湾も尖閣諸島の領有権を主張しています。そして中国は「台湾は自分の国だ」と言っている。

つまり中国からすると「台湾の一部である尖閣諸島は中国のもの」という理屈なのです。

二つ目の理由は、大陸棚と沖縄トラフとの関係です。尖閣諸島付近から、海がグッと深くなるのです。中国東側の沿岸は浅く、水深は80メートルほどしかありません。潜水艦を航行させることはできないのです。

尖閣諸島を獲れば、そこから太平洋に潜ることができるし、沖縄本島と宮古島の間の沖宮海峡の押し出し口に尖閣は位置するので青島の北海艦隊及び寧波の東海艦隊にとっては是非とも欲しいのです。また魚釣島にS400対空ミサイルを配備できれば嘉手納や那覇基地の日米の戦闘機の行動を大きく制約することが可能です。

三つ目は、「海底資源」「ガス田」の問題です。1969年に、尖閣諸島付近に石油埋蔵の可能性が高いことが国連の報告書で指摘されました。すると中国は突如として、領有権を主張し始めたのです。尖閣諸島の北には、日本と中国で排他的経済水域の境界線があるのですが、合意ができていません。

それなのに、中国は一方的にその海域に天然ガスステーションを建設してしまいました。巨大な建造物です。仮に、ここに航空管制用のレーダーでも置かれたら、東シナ海全域の監視ができます。当然、通信関係の傍受もされるでしょう。防衛的には、大きな脅威となります。

ちなみにその場所は、佐世保から500キロ、那覇から360キロ、尖閣から300キロに位置しています。もちろん「その場所での資源開発は認められない」と抗議をしましたが、聞く耳を持ちません。ロシアのウクライナ侵攻の影響で天然ガス価格が高騰したことを受け、中国は2017年以来、久々に2022年の5月と6月に東シナ海に新たな人工物を構築しました。これが中国なのです。

尖閣諸島の先には、沖縄があります。尖閣の次は沖縄……。そうさせないためにも、今“小さな侵略”を許してはいけないのです。

そもそも台湾は中国の一部なのか?
中国近代史をひもとく

台湾有事に話を戻します。

台湾の位置的な重要性については、前に話しました(台湾有事とは何か。なぜ中国は台湾を獲りにいくのか? 参照)。しかし、そもそも中国にとって台湾は「中国の一部」であり「台湾省」という認識なのです。だから“獲りに行く”という表現をされること自体、面白くないかもしれません。

分離された国の一部を“統一する”という思いです。しかし、台湾政府や台湾国民からしたら“独立した国”と思っているので、冗談ではないとなる訳です。

2021年10月9日の辛亥革命110周年記念大会の演説で、習近平国家主席は台湾「統一」を「果たさなければならない」と発言しました。習主席や中国政府は、以前から同様の話をくり返していましたが、近年はそれが増え、しかも強調しているように思います。なぜでしょうか?

アメリカと台湾の距離が急速に縮まっていることが原因の一つです。

アメリカは2018年に「台湾旅行法」を作り、アメリカの政府高官が台湾に行けるようにしました。また、2020年には「TAIPEI法」(台湾同盟国際保護強化イニシアティブ法)を作り、台湾を国際社会から孤立させない配慮をしています。

アメリカはこれまで、台湾に関しては「戦略的あいまいさ」という態度を貫いてきました。簡単に言うと、理由は二つです。

一つは中国政府の立場を尊重してのこと(「一つの中国」と言っているため)。

もう一つは、台湾が明確に独立を宣言すると中国が侵攻する恐れがあるからです。つまり「明確にするよりあいまいなままにしたほうが平和」と考えた訳です。アメリカだけでなく、日本も含めて多くの国の政府が、こういう態度をとっています。

2022年5月、バイデン大統領は「台湾有事の際は軍事的に関与する」と発言しつつも、「我々は『一つの中国』政策を支持している。だからと言って、力で台湾を奪うことを正当化するのは適切ではない」とも表明しています。“あいまいさ”を生かしながらも“くぎを刺す”という絶妙なバランス外交を続け、中国はこれに苛立っています。

ところで、そもそも中国と台湾って別の国なの? と、両国の関係性がわからない人も多いと思うので、ざっくりと歴史を振り返っておきます。

今の「中国」(中華人民共和国)ができる前には、「中華民国」という国がありました。しかし中華民国の中で中国国民党と中国共産党との国共内戦が起き、中華民国政府は台湾(島)に場所を移しました。そして、中国大陸に残った中国共産党により「中華人民共和国」が誕生したのです。

ところが、台湾に移っていた「中華民国」政府は「中華人民共和国」政府を認めません。「自分たちこそが正統の政府なのだ」と言い、「中華民国」を名乗ったまま独立を続けている。それが今の台湾です。「台湾」というのは地域(島)名であり、正式名称は「中華民国」です。

いっぽう中国からすれば、「台湾も中国であり、一つの国だ」という認識なのです。

*   *   *

続きは本書『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』をご覧ください。

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日本が侵攻される日

2027年、日本がウクライナになる――。決して脅しではない。ロシア、中国、北朝鮮という三正面に接した我が国の危険性は、日増しに高まるばかりである。理由は世界地図を「逆さ」にすると一目瞭然だ。ロシアはなぜ北方領土を手放さないのか、中国が尖閣を執拗に欲しがる背景、北朝鮮のミサイル発射の脅威……。AIや衛星が主流の現代の戦争においては、島国は安全という理屈も通用しない。元自衛官で「戦場を知る政治家」である著者が指摘する日本防衛の落とし穴。もう無関心ではいられない。

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佐藤正久

参議院議員 3期目(全国比例)。福島県出身。防衛大学校卒業後、約25年間陸上自衛官として勤務。国連 PKO ゴラン高原派遣輸送隊初代隊長、イラク先遣隊長・復興業務支援隊初代隊長、第7普通科連隊長兼ねて福知山駐屯地司令等を務める。
外務副大臣、防衛大臣政務官のほか、参議院外交防衛委員長や自由民主党国防部会長などを歴任。現在は、自民党外交部会長、自民党国防議員連盟事務局長として活躍中。「ヒゲの隊長」の愛称で親しまれる。

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