世の中の #トホホ を拾い集めては、陳列してくれる(⁉)、歌人芸人の岡本雄矢さん。
新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』は、読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる…という、不思議な一冊です。
本書に収録されている、珠玉のトホホ、珠玉の1首&1話を、再掲でご紹介します!
* * *
すすきのを3周したのにあのホスト僕の原付にまだ座ってる
「僕の不幸を短歌にしてみました」という連載を始めさせていただいてから、1年以上が経ちました。
はじめた頃はここまで続くなんて思ってもなく、ひとえに幻冬舎さんと読んでくれている皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!
連載の第一首目は今でもはっきりと覚えています。
左手に見えますホストに座られているのが僕のスクーターです
札幌の歓楽街すすきのにスクーターを停めていたらホストの方に座られていて、「よけて」と言えない僕は、すすきのを意味もなく歩いた……という話を書かせてもらいました。
今回はその続きの話を書いてみようと思います。
すすきのを30分くらい歩き、スクーターの元に戻ったのですが、ホストはまだ僕のスクーターに座っています。
正確にはスクーターの後ろの部分に腰かけています。
このままでは問題が解決しなさそうだ。
どうしよう?
言うか?
「よけてください」と言うか?
もしくは、無言でスクーターに座り、自分の物だというアピールをするか?
いや、そんなことができたら、ここまで悩んではいません。
却下です。
では、向こうに芸能人がいるみたいな動きを取ってみるのはどうだろう?
「あっちで長澤まさみがロケしてた!」とか騒げば、ホストの方は見に行くためにスクーターから腰を上げるでしょう。
その隙に、スクーターを奪えばいいのではないか?
いや、そんなことをして嘘だとバレて、もし絡まれたりでもしたら大変です。
却下です。
では、横でキッチンカーを出店するのはどうだろう?
美味しいケバブでも出せば、ホストの方は買いに行くためにスクーターから腰を上げるでしょう。
その隙にスクーターを……。
いや、あまりにも現実味がなさすぎます。
却下に決まってます。
色々と考えた挙句、僕は今日は地下鉄で帰り、明日スクーターを取りに来ることにしました。
自分のスクーターなのに、自分の好きな時に乗れないなんてなんなのだろうと思いながらも、帰宅し、次の日の朝、スクーターの元に向かいます。
もちろんホストの方はもういません。
僕はスクーターのシートに座ろうとしたのですが、その時に見つけてしまいました。
シートにべったりと付着した、鳥の糞を。
* * *
新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』に続き、
『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が文庫に!
読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌&エッセイをお楽しみください。
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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)
著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。
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