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フィンランドで暮らしてみた

2022.06.24 更新 ツイート

フィンランドの夏は「忘年会」シーズン 芹澤桂

フィンランドは夏だ。今年は特に涼しく気温が25度も行かずに寒くてまったく泳げない日々が続いているけど、こっちが言い切ってしまえばそれはもう夏だ。

夏といえば忘年会シーズンである。何を言っているのかわからないのかもしれないが、私もたまにわからなくなるから心配しなくていい。

簡単に言うと新学期が8月上旬から始まり一学年が終わるのが5月下旬であるフィンランドでは、夏といえばビジネスシーンにおいても1年の区切りの季節なのである。

 

入念に年を忘れる人々

夏休みが約ひと月と長いせいで、その前に集まってこの太陽光の当たる季節を祝っちゃおうぜ、と言わんばかりに会社関係の飲み会やらパーティーやらイベントやらがぐんと増える。11月下旬から12月半ばにかけても「ピック・ヨウル」(=小さなクリスマス)と称して飲み会が増える時期があるけれどそれに匹敵するぐらいイベントだらけになる。冬の飲み会シーズンも言ってしまえば日本では忘年会にあたるから、1年に2度も忘年している人々ってことだ。そのぐらい入念に年を、というか仕事を忘れて、長い夏休みやクリスマス休みに備えるってことなのかも。普段から仕事帰りに同僚と飲むという文化がごく少ないフィンランドでは(みんな定時の16時で帰っちゃうので)、この会社の飲み会となるともうとことん飲む。

特に今年は、今までコロナで集まれなかった反動か、どの企業もなかなか派手にイベントを開催しているようである。

我が夫は顧客相手の部署にいるものの、客と頻繁に会ってご機嫌伺いするような役職ではないわりに、顧客も招いての飲み会だのチーム集まっての団結会だのにしょっちゅう招かれて羨ましい限りである。

飲み会と言っても仕事帰りに飲んでおしまい、ではない。

もはや「飲み会」であらず

よくあるのが船上レストランでのパーティー。港町ヘルシンキだからこそできる技でレストランボートを借り切ってのお食事会で飲み放題食べ放題。気の利いたコースの場合にはどこぞの島に到着して貸し切りサウナにも入れちゃう。

そうです、ここでもサウナなんです。フィンランドの飲み会でサウナを避けて通れると思ったら大間違い。

また別の集まりでは、会社のルーフトップテラスを使って昼間からチームでバーベキュー。私生活に支障がでないように昼間から始まるところや会社にBBQグリルがあるところはフィンランドらしくて好きだけど、バーベキューなんてわりと平凡な飲み会だな、と思ったらもちろん社内サウナは大活用。食べ物も飲み物も持ち込みで、大容量パックワイン3L入りを6人で5本開けたというのだから全然普通の飲み会じゃなかった。酒豪たちの安上がりで愉快な昼下がり、とでも名付けようか。イベントスペースとはいえ、同じ会社の中でサウナあがりの酔っ払いと普通に仕事をしている人が混ざっている図はなかなかシュールでもある。

また別のときは顧客も招いて郊外のアスレチック付きホテルに一泊お泊り。アスレチックといっても侮ることなかれ。森の中の本格アスレチックでジップラインや綱渡りなど大人しか参加できないアドベンチャーにみんなで挑戦して親睦を深めようぜという催しだった。もちろん同じく森の中の空気のきれいな宿泊ホテルでは本格コース料理とサウナと客室が付いている。そんな接待、されてみたい。

費用は会社持ち

それから最近よく友人知人から聞く会社関係の催しに、有名シェフと一緒に料理を作りましょうというクッキング体験がある。会社のメンバー複数人で参加して、このグループは前菜、このグループはデザート、などとチームで別れ、指導に従ってみんなでコースを仕上げるというものだ。作りながら素材や飲み物に関するうんちくも聞けて勉強になるし、おいしいごはんも食べられ、終われば形ばかりの修了証代わりのレシピブックをもらえるのだという。写真映えもするしシェフも自身の宣伝になる。流行っているのか何人かからそういった催しに会社で参加したよという話を聞いた。

似たようなコースに私も日本で参加したことがあったが、それは小学校の修学旅行で訪れた香川でのうどん教室だった。すでに用意されているうどんの生地を伸ばし、切り、茹で、食べたら最後に麺棒と修了証をお土産にもらう。その麺棒は大人になっても持ち続けて重宝したが、なんていうかレストランでの体験と比べてしまうとおしゃれ度が違う。羨ましい限りである。

また大きい会社だとよくあるのが、どこかステージのある会場を貸し切ってケータリングを手配し、国民的人気を誇るミュージシャンも呼ぶというものだ。国の規模が小さいからできる技である。でも最近はこういう、有名どころを呼べる自社の経済力を誇示するようなやり方は恰好悪いと敬遠されがちでもある。

これらの飲み会はどれも、もちろん参加自由だ。参加費は会社持ちだし、スキップしてもいい。毎月あるようなものではないし家計を圧迫もしないから家族も快く送りだせる。

 

さて、そんな飲み会情報が伝聞ばかりなのには訳がある。私の勤務先はイベントが極端に少ないのだ。あるのは夏休み前に社員が集う総会議ついでに自社敷地内にあるちょっとしたマナーハウスでの昼食会と、クリスマス前に街中での飲み会ぐらいだ。

しかし一度、イレギュラーな集まりが秋にあった。寒い秋の終わりに、更に寒いあのスポーツの観戦である。その話はまた次回。

(クッキングクラスのキッチン)
(こんな会場なら上品に酔えそう)

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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