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ボクもたまにはがんになる

2021.11.03 公開 ポスト

「第2章 仕事、治療、手術」より

男性機能の問題も、先生が「俺がやればなんとかなる」と太鼓判。三谷幸喜/頴川晋(東京慈恵会医科大学泌尿器科主任教授)

大河ドラマ「真田丸」執筆中に前立腺がんの手術をした脚本家・三谷幸喜さん。その体験から「前立腺がんって実は、まったく怖くない」と実感、「前立腺がんのイメージを変えたい」と主治医・頴川晋先生(東京慈恵会医科大学泌尿器科主任教授)との対談本『ボクもたまにはがんになる』を刊行。そこから、お二人の楽しいやりとりを少しご紹介します。

先生が僕だったらどうしますか?

三谷 今でもよく覚えている、先生の言葉があります。僕が手術を選ぶ最終的な決め手となったひと言です。こんな質問はルール違反かもしれないと思いつつ、先生に「今この段階で、先生が僕だったらどうしますか?」と聞いたんですよ。そしたら、「即決、手術します」とおっしゃった。もうそのひと言で、悩まずパッと手術を選択しました。

頴川 ルール違反ですね(笑)。というのは冗談ですが、やはり誰しも自分が病気のときは迷いや不安があります。そのときは、三谷さんの状況を鑑みて「即決、手術」と答えましたが、自分が本当にその立場になったときにまったく同じことを言えるかどうかは、正直今もわかりません。

三谷 僕としては、放射線治療はほぼないかなと思っていたので背中を押されました。唯一、悩んでいたのが男性機能の問題でしたが、それもブラックジャック先生が「俺がやればなんとかなる」と太鼓判を押してくださったんで、だったら手術をしようと。

毎週1本「真田丸」

頴川 それに、手術の場合だと入院期間は1週間です。

三谷 それも大きかった! 手術をいつにするのかを考えていたとき、浮上したのが正月休みでした。ちょうど1週間くらいの休みですし、毎週1本「真田丸」の台本を書いていたんですが、オンエアが始まる2016年の1月だったら締切りが多少遅れても大丈夫かなと。遅れる理由も「正月だったから」でごまかせるはず。許されるのではないかと(笑)。

頴川 お正月くらいはゆっくりしてください。

三谷 振り返ると、2015年の夏から秋にかけて検査や治療方針を相談。手術をすると決断したのは10月でした。で、実際手術をしたのが翌年2016年の1月。がんとわかってから半年くらい経っていますが、皆さんこんな感じのスピード感なのでしょうか?

頴川 前立腺がんは病気の進行が遅いうえ、三谷さんの場合は余裕のある状況で病気を見つけられていたので、半年後の手術でも特に問題はありません。

三谷 もうひとつ、僕にとってラッキーだったのは、がんが見つかってバタバタしていた時期は、大河ドラマの脚本執筆のために仕事を絞っていたんです。いつもなら同時進行でいくつもの仕事を引き受けていて、手術をするとしたら調整がかなり大変だったと思います。

頴川 そうでしょうね。

肛門の記憶

三谷 実際、手術をしたのは何月何日でしたっけ?「真田丸」第1回の放送を入院中にベッドで見たことは覚えています。

頴川 病院は1月4、5日あたりが仕事始めですから、そのあたりでしょうか。確か、三谷さんの手術をした日の夜、私は三家族合同で新年の食事会をしていました。近くのホテルで。

三谷 誰の手術をいつしたかって、きちんと覚えてらっしゃるものなんですか? 先生の場合、京都駅のホームで電話を受け取ったとか、圏央道でメールを受け取ったとか、すごく細かいじゃないですか。

頴川 誰の手術をいつしたかはちょっと曖昧ですが、そのときの状況や情景がどうだったかは不思議と覚えています。

三谷 オペ中の光景は覚えてらっしゃるんですか?

頴川 オペ全体ではなくて、その中、つまりディテールは覚えています。

三谷 僕の肛門の記憶は?

頴川 そうですね、覚えているかも。

三谷 恥ずかしいな。

頴川 冗談です。お腹からやりますから肛門は見ません。見逃したな(笑)。

「じゃあ行ってくるねー」

三谷 ちょっと話はそれますが、ドラマなどではよく、患者さんが手術室に向かうときに「必ず帰ってくる」とかって言うじゃないですか。僕はそれ、あまりよくないと思っていて。だって、何かすごく危険なところに行く“前提”で「帰ってくるぞ」と言っているわけでしょう。マイナスのイメージがまずあっての、プラスイメージにしようというのが、ちょっと違うような気がして、苦手なんです。悲壮感が。

頴川 実際、三谷さんはどうだったんですか。

三谷 妻と息子に「じゃあ行ってくるねー」とさらりと言って手術室に向かいました。妻も僕と同じようなタイプなので、全然深刻な感じではなくて「はーい」みたいな。息子も「いってらっしゃーい」と明るく。当時1歳半でしたが、いつもと違う雰囲気を悟られるのがイヤだったのでホッとしました。僕が乗っているストレッチャーに乗りたいって言ってたくらいで(笑)。

頴川 ふだんは見たことのない乗り物ですからね、ストレッチャーは。そうはいっても、ご家族は心配されていたと思います。

三谷 あとで妻が言っていましたが、実は当日のこと、まったく覚えてないらしいんです。僕が手術室に向かってから病室に戻ってくるまでと、その前後のこと、全部。時間がすっ飛んでるって。

頴川 そういうものです。

三谷 僕は全然不安はなかったんですけどね。当日、どんなスケジュールだったんでしょうか。手術自体にかかる時間はどれぐらいだったんですか?

頴川 手術室に行かれて戻ってくるまでが、だいたい6~7時間。麻酔をかけて準備をして、手術が終わってから麻酔が完全に醒めるまで待機している時間を含みます。手術自体はトータルで3時間くらいでしょうか。

手術より浣腸がつらい

三谷 手術当日の朝の浣腸がつらかった。手術の際はお腹の中のものを全部出さなきゃいけないので、前日から下剤を飲んで翌朝浣腸。若い看護師さんに肛門を見られるのがつらくて。僕の肛門、変な形なんだよな……と思いながら。

頴川 ナースは慣れっこですよ、いちいち肛門の形まで見ていません。

三谷 わかってはいるんですが……。

頴川 三谷さんの肛門コンプレックスは根深い(笑)。

三谷 手術自体は本当に痛くなかったんです。寝ている間に終わっている感じ。もともと暗示にかかりやすいタイプなんで、「麻酔」というフレーズを看護師さんが口にした瞬間にボーッとなります。まだ麻酔が入っていなくても。

頴川 麻酔いらずですね。

三谷 ただ、さすがに手術の冒頭は覚えているんです。だってこんな大手術、人生で初めてですから。手術台に横たわった僕をナースの方々が取り囲んで、ものすごくシステマチックにいろんなことが行われていて「ああ、こうやって手術は始まるんだ」と興味津々で。それで、詳しくは覚えてないんですけど、何かがうまくはまらない感じで、僕の右側にいた方がモタモタしてたんです。「大丈夫かな?」と思っているうちに、スーッと寝ちゃいました。あれは何だったんだろう。 何かの蓋が閉まらないとか、そんな感じです。先生、覚えてます?

頴川 まったく覚えていません(笑)。

関連書籍

三谷幸喜/頴川晋『ボクもたまにはがんになる』

前立腺がんって実は、まったく怖くない。 大河ドラマ「真田丸」執筆中に前立腺がんの手術をしていた脚本家・三谷幸喜と、おだやかで頼もしい主治医・頴川晋による、笑ってためになる、そしてがんのイメージが変わる、縦横無尽の対談集。

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