1. Home
  2. 生き方
  3. 月が綺麗ですね 綾の倫敦日記
  4. 日本だけが特別?イギリスの社内恋愛は冷た...

月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2021.09.10 更新 ツイート

日本だけが特別?イギリスの社内恋愛は冷たい目で見られる 鈴木綾

(写真:iStock.com/sematadesign)

日本が寛大すぎるのかもしれない

 

同僚のクリスくんは間違いなく私に好意を持っていた。6月に彼がいる会社に転職した何年も前から親しい友達だったけど、彼と同じ会社に入社してからさらに親しくなっていた。彼は他の同僚より私に異常な思いやりを示して、忙しいオフィスでも「二人きり」の時間を作ろうとした。

 

「今日もランチを一緒に食べに行かない?」
「コーヒーを買いに行くけど、綾ちゃんもなんか飲む?」

性格のいい彼からそんな風にちやほやされるのは別にいやではなかった。すごく真面目で同時に呑気な彼とはうまが合うし、彼は会社の中で愛されているから、「綾はクリスと仲がいい」と思われるのは嬉しい。

でも何ヶ月経っても、彼はなぜか私に告白しなかった。

理由が気になって仕方なかったので、この間直球を投げて本人に聞いた。

言葉が出なかったほど彼の答えに驚いた。

「綾ちゃんのことがすごく好きだけど、社内恋愛は賢明でないと思う。付き合いが続けば、人事部あるいは社長に報告しなければいけなくて面倒くさい。うまくいかなかったら二人の不仲で会社全体の雰囲気が悪くなってしまう」

「社内恋愛」はもちろん、厄介だとわかる。同僚の噂話の対象にされるに違いない。後で二人の仲が悪くなったらチームの雰囲気を壊す可能性がある。でも6年間日本に住んでいた私は、社内恋愛経験者をたくさん知っていた。クリスくんの余計な躊躇がいまいちよくわからなかった。

感覚のギャップを理解したかった。イギリスは社内恋愛に不寛容な国だったのか?

結論からいうと、イギリスは特段社内恋愛に不寛容な国ではない。単に日本が他の国より社内恋愛が多い国だというだけかもしれない。

かなり前のデータだけど、日本政府が2005年に発表した調査によると、結婚相手、あるいは同棲相手が職場や仕事の関係で知り合った人、という日本人の割合は4割近かった。アメリカは16%、スエーデンは13%、フランスは10%弱でもっとも割合が低かった。つまり日本での「オフィスラブ」率は欧米より何倍も高い。

最近のデータからも同じ傾向が読み取れる。2019年に行われたアンケートによると、男女の6割は職場恋愛を経験している。

日本人の友達に理由を求めて得た答えは案の定だった。

「みんな残業が多いから他に出会いがない」
「便利だから」
「職場に楽しいことが他にないから」(これは若干ニヒル感強いけど)

ほとんどの働く女性が一般職を選んでいた時代、職場は男女のどちらにとっても重要な出会いの場だった。女性が職場で素敵な男性に出会って、結婚して仕事をやめて家族を作るのは憧れのライフ・プランだった。日本にはその時代からの「オフィスラブへの寛容さ」が残っているのではないか。

一方で、イギリスを含めて欧米の国々では職場恋愛を冷たい目で見ている会社が多い。この数年でもインテルの社長やマクドナルドの社長が社員との恋愛関係でクビになっている。

多くのイギリスの大手会社は、職場恋愛対策として、就業規則上一定の規制をかけている。例えば、付き合っている社員はまず人事部に報告しなければいけない。上司部下の恋愛、同部所内での恋愛は禁止。恋人たちは職場で喧嘩してはいけないし、ふさわしい行動を示さなければいけない。秘密情報の共有は禁止、云々。

この背景に男女平等促進や女性権利擁護運動「MeToo」の影響は多い。だって、職場恋愛は会社内の力関係と密接な関係を持っている。部下が上司にデートに誘われたら、断れるわけがない。職場恋愛の規制は弱い立場にいる社員を守ると同時にセクハラを防止する。

この点に関しては、日本はまだ欧米とまだ相違が大きい。前述の2019年のアンケートによると、職場恋愛をしたことのある人の35%は上司・先輩・雇用主が相手だった。こういう関係を許すのはやっぱり危ないだと私は思う。

だから上下関係にない、同じ部署でさえ働いていないクリスが二人の間の恋愛を恐れているのは不思議に思っている。しかし、職場恋愛が冷たい目で見られるなら、彼の気持ちはなんとなく理解できる。

でも、そんな冷たい環境で職場恋愛に挑戦する人たちはやっぱりいる。

フランス人でジンバブエ人の旦那さんと勤め先で知り合った友達と先週末ランチした。

彼女は今の旦那さんと付き合う前によく会社で一緒にランチに行ったり、職場で仲良くしていた。そしてアムステルダムで社員旅行に行った時のパーティで、彼女の今の旦那さんに告白された。二人はすぐに会社の人たちに言わずに、できるだけ職場で「プロフェッショナル」に行動するように誓った。

「多くの人たちはパートナーをアプリで知り合うけど、職場も出会いの場としてとてもいいと思う。付き合う前に相手のことを知ることができるから。二人が職場で結婚しないかぎり、職場恋愛はいいんじゃない?」

彼女は彼と付き合い始めてから一年後に転職した。付き合って3年目(今年の夏)にフランスで結婚した。

二人が永遠に幸せでいられるように 。

{ この記事をシェアする }

月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

バックナンバー

鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。現在はロンドンの投資会社に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP