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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2021.04.04 更新 ツイート

「2分で届いた!」ロンドンでは新しい食品配達ビジネスのバトル・ロイヤルが始まっている 鈴木綾

ロンドンの即時食品配達サービス、Gorillasの落書き広告

今までこのコラムでロンドンの不便なところについてたくさん書いてきた。ネット環境が最悪。マンションに管理人がいないと荷物が届かなかったりする、道路がいつも工事中、地下鉄がしょっちゅう止まる(遅れるんじゃなくて本当に何の前触れもなく突然運休する)。しかし、便利という意味では、最近ロンドンは――ある一つの分野に限ってだけど――大進歩をした。

 

即時食品配達サービス。少量の食品でも素早く配達する。先日、あるサービス会社で食品を注文したら、何と2分で届いた。去年の7月以来、5社がロンドンで登場。厳しい競争のなか、各社は大幅値引きや大胆なCM、落書き(!)などで気まぐれな顧客を引き付けようとしている。食品配達のバトル・ロイヤルといっても過言ではない。さて、この現象は本当に続くかどうか。

ロンドンにはなぜ、食品配達サービスがなかったのか

今まででもスーパーの配達サービスはたくさんあった。ロンドンに住んだことのある方にはお馴染みのOcadoというネットスーパーの大手は20年前に会社を立ち上げ、今では上場企業になっている。他のスーパー大手も近年、それぞれ独自の配達サービスに力を入れている。でも、コロナ禍でこういった既存ネットスーパーのサービスは弱さを曝け出した。

もともと大量の買い物(自分で持ち帰れないくらいの)を自宅に届ける、というビジネスモデルから始まったサービスなので、Ocadoなどのサービスの場合、まず配達の予約が必要。人気な時間帯を予約したいなら手数料が高くなる。一回目のロックダウンの時、Ocadoは携帯のアプリで予約を受けるのを中止しないといけなくなるほど注文が殺到した。次の配達まで1ヶ月以上(!)待たされた人もいた。配達に1ヶ月も待たないといけないスーパーで買い物なんてできる??

この一年弱の間に登場した「即時食品配達サービス」は大手スーパー配達サービスの弱点を補おうとしている。1ヶ月も待ちたくない、ほんの少しの量の食品が欲しい、と思っている消費者をターゲットにしている。日本と違ってロンドンにはコンビニみたいな存在はないので、オリーブ・オイルが無くなっただの、冷凍ピザが欲しいだのといった時でも近くのスーパーに行く必要があった(個人経営の小さな売店はあちこちにあるが、こういうところは品揃えが少なかったりする)。

新規参入してきた事業者はロンドンのあちこちに(住宅街の中でも)小さな倉庫を持ち、10分から20分以内で一定範囲内の居住者に注文の品を届ける。こういうのはdark  storesという。さらに配達の時間を減らすために、配達人たちは電動バイクか自転車で移動する。

中国や他のアジアの国では、一品からでもネットで頼んで配達してもらうサービスを使う習慣はあったけど、イギリスは労働コストが高いままこういうサービスがなかなか成り立たなかった。イギリスで配達ビジネスを始めるのに相当な資金がいる。

イギリスのネットスーパーはコロナ禍の需要殺到で対応に苦労したけど、他方で外出規制でやむを得なくネットで食品を買った消費者たちは配達サービスの素晴らしさに目覚めた。「ネットで食品を買い配達してもらう」ということが普通になった。つまり消費者の購買行動が変容したのだ。この行動変容が「即時食品配達サービス」にとって成功しやすい環境を生み出した。小口の配送、スピード重視の配送、というビジネスモデルのリスク、「このサービスがあったとして、本当に消費者たちが使うのかな」というリスクがある程度緩和された。

こういうサービスはかなりの資金――初期投資――がいる、といったけど、コロナでこの悩みも解消された。じゃぶじゃぶ資金を持っているテック投資家は「ポスト・コロナ」の消費トレンドをいち早く掴んでお金を儲けたい。最初の数年間利益が出なくても、配達エリアを拡大しマーケットシェアが取れる事業者なら、資金はこのスタートアップたちから簡単に調達できる。

さて、即時食品配達サービスはいいのか

レストランとバーはまだ閉まっている。友達の家に行くのはまだ違法だ。だから在宅勤務族の私たちにとって唯一の楽しみはネットショッピング。第一のロックダウン開始から一年が経っているので普通のネットショッピング――洋服、コスメ、ヨガマット――には飽きた。そんな私たちにとって、新しい即時食品配達サービスはまるで新風だ。

私は、3社を試してみた。一つはGetirというトルコからやってきたサービス。彼らは顧客を呼び込むために値引きに頼りすぎている感じが強くて、「金曜日だから£5の値引きを上げます!」「ピザは安くなっているので買ってください」といった通知が多い。安いから買っただけという顧客ばかりが増えたのでは、ブランド忠実度(この会社で買い物をしようと考える忠実な顧客の割合)は確立しづらい。

1番凄かったのはZappだった。さっき紹介した「2分で届いた」会社だ。魔法なのかと思ったが、たまたま倉庫が家から歩いて30秒のところに位置していると知ったので驚嘆が少し冷めた(笑)。

1番可愛かったのはGorillasで、名前通り袋にバナナと手紙が入ってた。よく考えているな、と思った。

Gorillasの袋に可愛い手紙、シールともちろバナナが入っていた。しかし、これで人は常連になるのか

問題は値段。配達料とチップを入れると、スーパーと比べてプラス数ポンドぐらいになる。だったらスーパーに行った方がいいのかな、とどうしても思ってしまう。で、健康嗜好の強い、私のような人間にはこういう、冷凍食品とポテチが多いサービスはあまり合わない。ホームパーティーでお酒が足りなくて外に出かけるのが面倒くさかったらいいのかもしれないけど、ホームパーティーはしばらく禁止……。

ロンドンの即時食品配達サービスは生き残るのか

900万人もの人口を誇るロンドンは大きいな街だけど、5社の即時食品配達サービスが共存できるほど大きいのか、と言われたらそうでもない。5社のうち、きっと1社か2社が残るくらいだと思う。加えて、値段の関係で利用者層が急激に増えていくとは考えにくい。むしろ、こういうサービスはなかなか一人でスーパーに行けない一人暮らしのおじいちゃんおばあちゃんたちにあってるのかもしれない。けど、アプリの使い方が彼らにとって難しいかもしれない。

ともあれ、コロナでまた新しいビジネスがうまれた。果たしてどうなるか。時間が経てばわかるだろう。

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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

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鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。現在はロンドンの投資会社に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

 

 

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