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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.12.27 更新 ツイート

今年のクリスマスがリアル八甲田山になった理由 カレー沢薫

現在12月25日。世間ではクソスアスと呼ばれる日だ。

これは皮肉ではなく、私がその文字を書くと自然にそう読めてしまうだけである。つまり今年も「カタカナぐらいはまともに書く」という目標は達成できなかった。

実際クリスマスをクソと思っているかというと否である。

 

大体今時クリスマスを敵視しているのは戦前の非モテぐらいではないだろうか。
クリスマスシーズンにはソシャゲがこぞってイベントをやるし、FGOでは激アツイベントボックスガチャが開催中なので、そんじょそこらのカップルなんかよりよほど忙しい。むしろ相手が一人しかいない奴が羨ましいぐらいだ。

昔よりもクリスマスの楽しみ方は多様化しており、異性、もしくは同性またはその他(多様性)と優勝(隠語)するのが優勝(本来の意味)という時代ではない。

つまり、楽しいクリスマスを過ごせる人間が格段に増えたということであり、それはとても喜ばしいことである。

そう昨日までは思っていた。

しかし本日、クリスマスがリアルクソスアスになってしまったので、その様子をお伝えしたいと思う。
どれだけ、価値観が多様化して、俺には俺、お前にはお前の楽しいクリスマスと乳酸菌があったとしても、この世から悲しいクリスマスを過ごす者、怒り、憎しみ、戦争はなくならないということだ。

朝、起きたらパソコンの電源がつかなくなった。

以上である。

パソコンの中には制作中の仕事データが全て入っており、バックアップなどはしていない。

仮にもPC作業を生業としている者が何かあった時のリスク対策をしていないとは何事かと思われているだろうし、返す言葉もないので、今後は気を付けたいと思う。

しかし、それは二日酔いの朝に便器とディープキスしながら「この苦しみから救ってくださるなら、悔い改め、二度と酒は飲まないし、仏門に入って毎週ミサに通う」と祈っているようなものだ。

今この窮地を脱しないことには、今後の宗教活動もままならない。

しかし相手はPCである、自分が出来ることは限られているし、むしろ助けようとして自ら介錯つかまつってしまうケースの方が多い。

やはり専門家に見てもらうのが一番だ。
しかしここで立ちふさがるのが「田舎」という問題である、ネットや通販の普及により「地域格差」はかなり是正された。
しかし、地方でガリガリガリベンソンして入った都会の大学で、生まれや育ち、何より「余裕」が違う人種と出会ってしまうように、どうしようもない格差に遭遇するシーンというのはある。

私は今日「パソコン 修理 地元名」で検索して「3件」しか出てこなかった時、それを痛感した。
「全国出張修理します」というクソでか文字の下にひっそり佇む「一部除外地域」が、俺の地元、そして俺という存在なのである。

都会であれば、修理業者はたくさんあるだろうし、そこからよさげなところやすぐ対応してくれる業者を「選ぶ」ことが出来るだろうが、我々にそんな権利はない、例え全部クソでもクソの中からクソを選ぶという作業をしなければならない時が我々にはあるのだ。

まず電話をかけた一件目は「予約がいっぱいで年内は対応できない」ということで、さらに症状を伝えたときに「それはマザーボードが壊れていると思います」という、不吉な予言をされただだけだった。
ここで「でもこの壺を買えば直ります」と言われたら買っていたかもしれない。不安と恐怖というものは、人のIQを-2京ぐらいにしてしまうということを身をもって感じた。

2件目は電話をかけてもつながらず、3件目は「今日中か明日の昼には担当の者から折り返す」と言われた。
私の中の北大路欣也が雪山で「……もはや一刻の猶予も……!」と叫んでいる。
本当だったら今夜「映画八甲田山」を見る予定だったのだが、その前に自分が遭難するとは思わなかった。

もはや、出張修理を待つ余裕はない、自分で修理業者に持ち込んだ方が早い、そう思い通常のPCの二倍はでかい、作画用デスクトップを二階からおろし、明日廃車になる車に積み込んだ。

私事だが、車の買い替えせねばならず、明日納車のため余計スケジュールがひっ迫しているのだ。

車にPCを積み込み、発信しようとしたところで、今日か明日に連絡すると言ってきた業者から電話がかかってきた。
思ったより早い対応で助かるが、できればPCが二階に存在するうちにかけて欲しかった。

なるはやで見てほしいと伝えたところ、完全に明日の「車の納車時間」を伝えられる。

さきほどからすべての間が悪い方向に良すぎる、ピタゴラスイッチ、もしくはファイナルディスティネーション、と言った感じだ。

迷った末に、その時間を予約した、その時間に納車しなければ車が爆発するということはないだろう、と思いたいがファイナルディスティネーションなら普通に爆発するし、爆発をPC修理で回避してホッとした瞬間PCが爆発して死ぬと思う。

車のことはあとで考えるとして、電話を切ると、携帯に着信があり、かけなおしたら、二件目つながらなかった業者であり「今日昼から行けるかもしれない、またかけなおす」と言われた。

現在まだ、折り返しはなく、今この原稿をタブレットで書いているところなのだが、猛烈に眠い。

ちなみにPCはまだ車に積んだままだが、もう爆発しているかもしれない。

今まで、締め切りが迫った時に「あえて寝る!」とちょっと寝たことはあったが、それは「やけくそになった漫画家のコスプレ」にしか過ぎなかった。

俺は今から本気で、あえて寝る。

関連書籍

カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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