
巷の「話し方」の本には一番大切なことが抜けている。それは、会話では「自分のこと」ではなく「相手のこと」を話すということ……。イメージコンサルタントの吉原珠央さんは、「自分の話をやめる」だけで、仕事も人間関係もみるみる好転すると断言。そう言い切れる根拠と、使えるノウハウを凝縮した一冊が、著書『自分のことは話すな』です。会話に苦手意識を持っている人なら必読の本書より、ぜひ試していただきたいポイントをいくつかご紹介します。
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人は誰でも心配されたい
あなたが誰かに「花粉症でくしゃみと鼻水が止まらなくて困ります」といったとしましょう。

その直後、相手が「私もひどいんですよー! 私なんて花粉症歴はや20年!」とあなたから話題を奪い、延々と相手の話を聞くことになってしまったなどという経験はありませんか?
春に向かう時期になると、巷では花粉症ネタが溢れます。こういった「辛い」「酷い」「大変だ」といった話題になるときに注目したいのは、人はみな、自分の実体験を話したがるという事実です。
「花粉症が辛い」「風邪で寝込んだ」「インフルエンザで人がたくさん休んで、仕事が回らなかった」「転んで軽いケガをした」など、ちょっとしたアンラッキーな出来事を誰かに聞いてもらいたい、心配されたいなどと思っている人たちが、世の中にはたくさんいます。
先に話を始めたのに話題を奪われてしまっては、不満が募ります。
こういうとき、できるだけ早く話を終わらせてもらいたい(長引かせたくない)と、誰もが願っているのではないでしょうか。
もちろん、このような場合は話し手に問題がありますが、もしあなたが聞き手だとしたら、相手を傷つけずに、失礼にならないよう話を切り上げて、目的を達成するための会話へとあなた自身で方向転換をする必要があります。
私がおすすめしたいのは、相手の話の中で、自分が反応できる場面を見つけて、次の公式のように話してみることです。
(1)共感・心配の一言(「それは辛いですよね」「それは心配です」など)
(2)即行動の提案(相手のためにベストなことを提案)
(3)即実行(具体的なアクション)
※文中の(1)(2)(3)は、それぞれ公式の(1)(2)(3)に対応しています。
困ったときはこう返せばいい
・上司が花粉症の話を止めない場合
「(1)課長、それは本当に辛いですよね(抑揚をつけてゆっくりと話す)。(2)そんなときは、1秒でも早く議題について決めてしまいましょう。(3)課長、まずこちらの資料の3ページをご覧ください(資料に手を添えながら)」

・帰り際に取引先の担当者が治りかけの風邪の話を始めてしまった場合
「(1)加藤さん、まだまだお辛いときにもかかわらずお時間を作っていただきありがとうございます。(2)でもこういうときは早く帰って休んでください。今出られれば、次のバスに間に合いますから急いでください! (3)さあ、コートに袖をお通しください(丁寧にコート着用をサポート)」
・部内の会議中、上司が風邪の引き始めで声がかすれてきてしまったといい出した場合
「(1)それは心配ですね。(2)田中さんの喉の調子が悪くならないよう、今日は1分で役割を決めて、あとはメールでやり取りしましょう。(3)よろしくお願いします! それでは(お辞儀をするアクションで「早速始めましょう」というサインを送る)」
・アシスタントが休んでいるため業務量が増えたことについて、同僚が愚痴をいい始めた場合
「(1)そんな大変な中でもこんなに丁寧な資料を作成してくださって、さすが小野さん! (2)あとは私がフォローしてまた連絡しますね。(3)それでは、エレベーターまでお見送りさせてください。さあ、どうぞ(エレベーターを丁寧に示して誘導しボタンを押す)」
相手が話している場面に割って入り、「早くお話を進めましょう」というのは失礼にあたりますし、余裕がない人、イライラしている人だと思われてしまうこともあります。
ですから先ほどの公式を参考にして、ごく自然な流れで相手を誘導してみましょう。