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ゴルフは名言でうまくなる

2020.11.22 更新 ツイート

第157回

「『あるがまま』とはボールのライだけでなく、天候、体調、環境などすべてが含まれる」――ボビー・ロック 岡上貞夫

2020年マスターズで気になったタイガーの腰痛

“Play the ball as it lies.”はゴルフの太古からの大原則である。パッティングの名手として知られたボビー・ロックは、その“lies”にはゴルフのプレーを取り巻くすべての周辺環境が含まれると、この名言で示唆している。

ゴルフというのは、何かちょっとした問題が発生するとできなくなるものだ。自身や家族に病気などの問題が生じたとき、仕事のトラブル、経済的に苦しいとき、事故など、今日はプレーできても、明日にはできなくなるかもしれないのだ。

 

ゴルフができる状況にあるということは、それだけで大変幸せなことなのだと思う。ゴルフエッセイストの夏坂健さん(故人)も、著書に『ゴルフがある幸せ。』と名づけているぐらいだ。

そう考えると、ロックの名言はなかなかに奥深い意味を含んでいる。

さて、2020年のマスターズは新型コロナウイルスの影響で11月に開催されたが、4月のオーガスタとはコースコンディションも景色もかなり違っていた。

グリーンがいつものマスターズより軟らかくてボールが止まりやすく、スピードも幾分遅かったようだ。そんな状況も「あるがまま」であり、ダスティン・ジョンソンが正確な長打を生かし、20アンダーの大会記録で圧勝した。

一方、前年覇者のタイガー・ウッズは、最終日にアーメンコーナーの12番Par3で、ティーショットを池、ドロップしてのアプローチショットでも池、奥のバンカーからホームランしてまた池と、3度も池に入れて10打を叩いてしまった。それでもその後5バーディを奪い、4日間トータルではなんとかアンダーパーにしたのは、王者の意地であろうが、さすがだった。

しかし、カップからボールを拾い出すときや、バンカーから上がるときなどを見ていると、その所作に腰が痛そうな素振りが見られた。腰が痛いのもまた「あるがまま」に受け入れてプレーしなくてはならないが、タイガーも必死に耐えながらのラウンドだったのだろう。

ゴルファーは全員、腰痛経験者?

それにしてもゴルファーには腰痛持ちが多い。ゴルファーでなくとも「80%の人が人生で一度は経験する」と言われているぐらいだから、ゴルファーはほぼ全員が腰痛経験者ではないだろうか。

ゴルフスウィングでは、地面にあるボールに向かってストロークすることから、必ず大なり小なり前傾姿勢になる。この前傾姿勢を保ってスウィングすることは、腰部の背骨やその周辺の筋肉・筋膜に負担が大きいようだ。

専門医のレポートによると、腰痛の原因は多様で、ストレスなど心因性の痛みや、稀には内臓のがんが原因の場合もあるそうだ。ただ、多くは腰部のお腹側にある軟骨=椎間板が損傷しているか、背中側の関節が損傷して骨に原因がある場合と、腰周辺を支えている筋肉や筋膜が炎症を起こしている場合に痛みが出るそうだ。

ところが、その原因の85%はCTなどの画像で確認することができず、いわゆる「ギックリ腰」の原因も筋肉なのか椎間板なのか関節なのか、驚くことにまだよくわかっていないのだそうだ。

基本的に前にかがんだときに腰が痛い場合はおそらく椎間板がよくない状態で、反対に体を後ろに反らせると痛みが出る場合は、背骨の後ろ側の関節が痛んでいると考えられるとのことだ。また、足に痺れが出る場合は椎間板ヘルニアの可能性が高いなど、症状から原因が推察できる場合もあるようだが、“ここが悪い”と明確に診断しにくいのが腰痛の特徴らしい。

このように、専門医ですら明確な原因を特定しにくいというのだから、腰痛を治療したり、症状を軽減させたりするのは簡単ではなさそうだ。

腰骨は構造上「ひねり」には弱い部位で、前後の動きも負荷が大きいと痛みやすいそうだ。動きとしては「前屈・後屈・ひねり・ジャンプ」が腰への負担が大きい。

ゴルフスウィングはジャンプこそしないが、地面の反力を使う場合もあるし、前屈・後屈・ひねりの要素はすべてあるから、ゴルファーに腰痛がつきものなのもうなずける。

「あるがまま」にプレーするには、この腰痛とうまく付き合っていくことが不可欠とも思われる。引き続き、専門医のレポートから腰痛との付き合い方を探ってみよう。

直立の姿勢を意識するだけで予防になる

まず、痛みが始まって最初の2~3日くらいは、炎症を抑えるために患部を冷やして安静にする。それ以降、あるいは痛みが治まってきたら、血行をよくして筋肉が伸び縮みしやすくするため、逆に温めるのが大切だそうだ。

そして腰痛には「これをやったから治った」というような効果的な早期回復法はないという。痛みを自覚する前、たとえば重だるいなとか、疲れが溜まってきたな、と思った段階で動きをセーブするのが一番だそうだ。

病院へ行って薬を飲むとか鍼を打つとか、マッサージや電気治療などをするのもよいとのことだ。あわせて、腰痛がひどくなるのを避けるためにも、原因となる動きをやめることが肝心だそう。その場合、ゴルフは我慢して休むしかない。

痛みがなんとか治まったらゴルフも再開できるが、そのときは再発予防が重要だ。腰骨はひねりに弱いと前述したが、ひねりを助けているのは腰の上の胸と、腰の下の股関節なのだそうだ。

したがって腰痛予防のためには、胸を開くストレッチと股関節を柔らかくするストレッチが有効となる。また、太ももの裏のハムストリングやおしりの筋肉も骨盤につながっているので、ここを柔らかくするストレッチもいいようだ。

予防のためには、体幹の筋肉を鍛えることも重要だ。スポーツ選手は腰への負担を軽減させるため、このコア・トレーニングを欠かさないものだ。

ドラコン競技の選手はやはり腰を痛めることが多いが、その治療にあたった針灸師がすすめるのは、正しい姿勢をキープすることだ。

横から見たときに、耳・肩・腰・ひざ・くるぶしが地面と垂直で一直線になるように立つのが、背骨本来のS字曲線になる正しい姿勢とのことだ。この姿勢をキープするには、胸を張って胸骨を開き、お腹を引っ込めるように力を入れなければならず、30秒もその姿勢を保つだけで、腰回りの筋肉がプルプル震えてくる。

つまり正しい姿勢を続けるということは、かくも筋力を要するのだ。だから、普段から気がつくたびに姿勢を正して立ったり歩いたりすれば、一般人にはそれだけで十分なコア・トレーニングになるだろう。

直立している場合と前傾姿勢の場合では、椎間板(軟骨)にかかる負担は、前傾姿勢のほうが1.5倍の負担増になり、腰周囲の筋肉への負担は同じく3倍以上になるそうだ。

やはり、前かがみになることで、軟骨や関節、筋肉や筋膜への負担が大きくなり、腰痛の原因になっていることが多いようだ。

ゴルフを続けたいなら、これらを踏まえてケアしながら無理せずにプレーすることが、「あるがままのプレー」ということになるだろう。

ゴルフができなくなるほど重症化する前に、予兆を感じたときには勇気ある休息を選択し、できれば横向きに寝て安静にして、痛みが治まるのを待つ。

予防では、普段から姿勢に気をつけてコアの筋肉を鍛え、胸と股関節のストレッチで関節の動きをよくしておくことが、長くゴルフを楽しめることにつながるはずだ。

今回のまとめ

1. ゴルフで「あるがままにプレーする」とは、体調など周辺環境すべてを受け入れてプレーするということ

2. ゴルファーに多い腰痛を予防するには、胸骨を開くストレッチと股関節を柔らかくするストレッチが有効。また、正しい姿勢で立ったり歩いたりすることも、体幹トレーニングとして予防効果がある

3. 腰痛を発症してしまったら、3日程度はなるべく横向きに寝て安静にする。それでも痛みが治まらない場合は、病院でしっかり原因究明をしたほうがよい

参考資料:
・南出仁寛、岡本啓司『そんな飛距離でよく我慢できるねッ!』ゴルフダイジェスト新書、2013年

・「慢性化しやすく特効薬もない「腰痛」。その原因・改善方法・メカニズムは?┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(前編)」MELOS(メロス)、2017年11月16日 https://melos.media/wellness/14372/

・「腰痛と決別するためには自前の“体内コルセット”を鍛えよ!┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(後編)」MELOS(メロス)、2017年11月16日 https://melos.media/wellness/14375/

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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