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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

2020.11.09 公開 ツイート

ペットのブラッシングまで…介護ヘルパーは便利屋じゃない! 藤原るか

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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本来はヘルパーの仕事ではない

全身性エリテマトーデスで闘病中のS子さん。彼女のそばにいつも寄り添っていたのが、シェットランドシープドッグ(愛称・シェルティ)のマリリンでした。小型のコリー犬といえば、想像できるでしょうか。とてもかわいく、賢い犬です。

(写真:iStock.com/undefined undefined)

S子さんが発症したのは30代で、私が訪問するようになったのは50代のときです。この病気は妊娠すると病状が悪化するといわれ、実際に子どもを出産した後、症状が重くなったそうです。

そんなS子さんに15年前、夫がプレゼントしたのがマリリンだったのです。その夫は単身赴任でS子さんの面倒を見ることができません。高校生になる息子も、S子さんの部屋には近づかないという淋しい境遇でした。

そんなS子さんが、心の支えにしていたのがマリリンだったのです。賢いマリリンはまるで介護犬のようにS子さんの手足となり、新聞やタオルをくわえて持ってきたりしていました。私たちヘルパーはS子さんのオムツ交換のために訪問していたのですが、マリリンは吠えることもなく、尻尾を振って愛嬌を振りまいてくれるのです。

ただ、誰もマリリンの面倒を見てくれる人がおらず、シャンプーもブラッシングもしてもらっていませんでした。そのため、あちこちに毛玉ができ、自宅を訪問すると、S子さんがすまなそうに「ブラッシング、お願いしてもいいかしら?」と頼んでくるのです。

本来、ペットの世話はヘルパーの仕事ではありません。しかし、とても「犬の世話はできません」とはいえませんでした。ほんの数分、マリリンの毛をブラッシングしますが、スムーズにブラッシングできず、苦労しました。長毛犬なので、きちんとケアされていれば、きれいな毛並みなのに、と胸が痛みます。

その後、Sさんは、病状が悪化して亡くなってしまいましたが、マリリンも後を追うように亡くなりました。飼い主がいなくなったら、生きていけませんからね。飼い主思いの忠犬ハチ公のような犬だったと思います。

シニア世代がペットを飼うときは

現在、各自治体の動物愛護センターや地域のボランティア団体が行っている譲渡会などでは、年齢制限を設けて高齢者のみの世帯にはペットを譲渡しないようになっています。

(写真:iStock.com/mykeyruna)

これはペットの平均寿命が年々延び、猫15.33歳、犬14.19歳(2017年調査)となっていることから、60歳以上の高齢者では将来的に病気になったり、亡くなったりして飼育不能になる可能性があるという理由からです。

しかし、生体販売が主流の日本のペットショップでは、子猫や子犬などを店先に展示し、かわいらしさをアピールして衝動買いさせる傾向があり、終生飼育(ペットがその寿命を迎えるまで適切に飼育すること)の覚悟がないまま購入してしまう人もいます。

介護現場では70代、80代の高齢者がペットを飼育できなくなる状況が増えています

ペットを飼う際には、自分の年齢を考えて子猫や子犬ではなく、成猫や成犬を飼うようにしたり、自分に何かあったときのために子どもや親戚などに飼育を託すことを遺言したり、ペットのための信託(家族や友人など信頼できる人を受託者として信託契約を結び、財産を専用口座に預け、飼い主に何かあった場合には新しい飼い主にお金を渡して世話をしてもらうこと)を利用するといったことなどを考えておきましょう。

また、ケガや病気で飼い主が一時的に入院しなければならないときもあります。その際にはペットホテルを利用したり、ペットシッターにお願いすることもできます

ただし、その場合でも、突然、ペットホテルやペットシッターにお願いするのは、ペットにとってもストレスがかかることです。平常時に何度かペットホテルを利用するとか、ペットシッターにお願いするなど、事前の準備は必要かと思います。

最近はペットと一緒に入所できる介護施設も増えていますので、ひとり暮らしができなくなった場合に備えて調べておくことも大切です。

関連書籍

藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない! 在宅の実態とハラスメント』

介護職は重労働のうえ低賃金であるため、人手不足が続いている。それなのに2018年の調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答。介護歴28年、百戦錬磨の著者自身も、利用者から幾度となくベッドに誘われたり、パンツを下げ性器を見せられ迫られたり、キスをされそうになったりしたが、見事にかわし仕事をこなし続けてきた。そして「♯Me Too」運動以降、セクハラをなくそうという流れは一気に加速。介護職におけるパワハラ・セクハラをなくし、介護職をよりやりがいのある仕事にするためのヘルパー奮闘記。

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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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藤原るか

東京都の訪問介護事業所、「NPOグレースケア機構」所属・登録ヘルパー。学生時代に障害児の水泳指導ボランティアに参加したことから福祉の仕事に興味を持ち、区役所の福祉事務所でヘルパーとして勤務。介護保険スタートにあわせて退職。訪問ヘルパーとして20年以上活動している。在宅ヘルパーの労働条件の向上を目指し、介護環境の適正化を求めた公の場での発言も多い。「共に介護を学び合い・励まし合いネットワーク」主宰。著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)などがある。

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