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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

2020.11.02 公開 ポスト

角度が90度でないと何度もやり直し。セクハラより多い介護ヘルパーへのパワハラ問題藤原るか

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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永遠に終わらない「地獄の作業」

介護保険制度が始まる前の、私が公務員ヘルパーだった頃の話です。ある化粧品メーカーの美容部員だったというIさんは60代のリウマチ患者で、手足を動かすのが不自由でした。しかも、体重が100キロ近くもあり、室内での移動も痛みと関節の変形から、ほとんどできないような状態だったのです。

(写真:iStock.com/AH86)

1日中、ベッドの上で過ごしているIさんは自分の思い通りにならないと、ものすごく怒ります。たとえば、髪の毛のブラッシングのかけ方がそうでした。ブラシを90度に傾けてバッと髪をすくってブラシをかけるようにと命令するのです。

それができないと、できるようになるまで何度も繰り返しやらせます。それはまさに永遠に終わらない地獄の作業のようでした。

Iさんにはブラッシング以外にもこだわりがあり、身体を拭くのも一筋縄ではいきません。寸胴という大きな鍋に水を入れ、火にかけて温めますが、その温度も60度と決まっているのです。

それより低くても高くても許されません。ぴったり60度でなければならないのです。もちろん、温度計で測らされます。それを確認してからでないと身体を拭かせてもらえないのです。

極めつけは、独特の排尿スタイル。Iさんのように、ベッドからトイレに歩いて移動することができない場合は、ベッドのそばにポータブルトイレを置き、そこで用を足してもらいます。ところが、Iさんはティッシュでこよりを作らせ、それを自分の陰部の尿道口に当てて、少しずつ尿瓶にしたたらせるのです。

こういう排尿のしかたを導尿といい、排尿障害などでオシッコがうまく出せなくなったときに、カテーテルという細い管を尿道にさして行うことがあります。

でも、Iさんの場合は違います。大股を開いてヘルパーにそんなことをやらせる人は、後にも先にもIさんしか知りません。こういうやり方でないと排尿できないというのです。そして、自分はオシッコをちょびちょび出せるのだと自慢げに話していました。

セクハラより多い「パワハラ問題」

とにかく苦情の多い人で、何か気に入らないことがあると、「厚生省(現・厚生労働省)にいうわよ」といって受話器を取り上げるのです。おそらく厚生省につながる電話番号を登録していたのだと思います。そういって私たちを脅すのです。いまでいうクレーマーですね。

(写真:iStock.comakiyoko)

そしてIさんの旦那さんは身長も高く、見るからにこわもてな人。何をされるかわからない恐怖心があり、余計にこわかった記憶があります。

当時、公務員ヘルパーは、高齢者を担当する人と障害者を担当する人に分かれていたのですが、介護保険制度が近々スタートするというので、統合されることになりました。そのため、いままで高齢者を担当していたヘルパーが障害者の訪問介護もするようになったのです。

一般的に高齢者に対する介護と障害者に対する介護では、ヘルパーの作業スピードが違う場合があります。

障害者の介護を経験しているヘルパーは、作業をテキパキとしないと命に関わることもあるので、作業のスピードが速いのですが、高齢者の介護をしていたヘルパーはむしろゆっくりした動作になります。しかも、こだわりの強いIさんの身体介護は慣れること自体が大変です。

それが気の短いIさんには我慢できなかったのでしょう。新しいヘルパーが入り始めて3日め、怒り狂って、とうとう脳梗塞か心筋梗塞か、そういった病気を起こして亡くなってしまったのです。

もう20年以上前の話になりますが、いまでも強烈に記憶に残っています。当時はパワハラという言葉は一般的ではありませんでしたが、Iさんの行為は超弩級のパワハラといっていいでしょう。

関連書籍

藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない! 在宅の実態とハラスメント』

介護職は重労働のうえ低賃金であるため、人手不足が続いている。それなのに2018年の調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答。介護歴28年、百戦錬磨の著者自身も、利用者から幾度となくベッドに誘われたり、パンツを下げ性器を見せられ迫られたり、キスをされそうになったりしたが、見事にかわし仕事をこなし続けてきた。そして「♯Me Too」運動以降、セクハラをなくそうという流れは一気に加速。介護職におけるパワハラ・セクハラをなくし、介護職をよりやりがいのある仕事にするためのヘルパー奮闘記。

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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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藤原るか

東京都の訪問介護事業所、「NPOグレースケア機構」所属・登録ヘルパー。学生時代に障害児の水泳指導ボランティアに参加したことから福祉の仕事に興味を持ち、区役所の福祉事務所でヘルパーとして勤務。介護保険スタートにあわせて退職。訪問ヘルパーとして20年以上活動している。在宅ヘルパーの労働条件の向上を目指し、介護環境の適正化を求めた公の場での発言も多い。「共に介護を学び合い・励まし合いネットワーク」主宰。著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)などがある。

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