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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

2020.10.19 公開 ツイート

性器を露出した暴走老人に迫られ…介護ヘルパーが受けたセクハラ被害 藤原るか

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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馬乗りになられることも

この人は前頭側頭型認知症の方でしたが、リハビリパンツ(大人用の紙パンツ)を下げて性器を出して迫ってくるのです。前から来る場合は避けようもあるのですが、床を拭いているときに後ろから迫られて馬乗りになられると本当にこわいです。相手が老人であっても、それなりに力がありますからね。

(写真:iStock.com/Serghei Turcanu)

前頭側頭型認知症は、感情失禁が起こりやすい病気でもあるので、感情のバランスを崩してそうした行為をすることがあります。

馬乗りになられても、前に逃げてかわします。そして、「どうしたんですか?」「つまずいたんですか?」と冷静に聞きます。まちがっても、「ワーッ」とか「きゃあ」とかいいません。相手を余計に興奮させてしまいます。相手はパンツを下げていますから、「トイレに行きたかったんですか?」とか「トイレはあちらですよ」といってトイレに連れて行きます。

こういうときというのは、本当に気配を消して忍び寄ってくるので、訪問中は油断できません。「さっきまでベッドの上に座っていたのに、いつの間に近づいたんだろう?」と思うことがよくあります。

この人はもう80歳近い方でしたが、体格のいい人だったので、恐怖を感じました。しかし、よほど悪質でないかぎり、男性ヘルパーに代わるということはありません。実際問題として男性ヘルパーの数はそれほどいないので、女性ヘルパーが訪問せざるを得ないというのが現状です。

「性器を洗って」と要求される

私たちの仕事である身体介護のなかには入浴介助があります。お風呂に入れるのが仕事なのですが、男性利用者のなかには「おチンチンの皮をむいて洗って」という人がいるのです。

(写真:iStock.com/byryo)

初めて頼まれたときには本当にびっくりしました。私は男性ではないので、わからないのですが、性器の皮の奥まできれいに洗わないと気がすまない人もいます。

そういうときは「自分で洗ってください」といいますが、手が不自由だったり、震えるような障害のある場合は、どうしようかと迷います。ただ、自分のいうことを聞いてくれるか、ヘルパーを試しているような人もいますから、「これはヘルパーの仕事じゃないので、ご自分で洗うのが大事」とやんわりと断ります。

なかには、ふだんからいやらしい言動をしている人もいますから、そういう場合は完全にセクハラ行為の範疇に入ります。「ご自分でどうぞ。はい、これ」といって石けんを渡すのです。そうすると、いやいやながらも自分で洗います。

事業所の責任者が元看護師だと「そんなの、皮をむいて洗ってあげればいいのよ。垢が溜まりやすいところだから」とアッケラカンといわれたりします。

看護師は体の機能からケアを学んでいるので、セクハラとも思わないようですが、私たちヘルパーにとっては想定外な要求なので、めんくらってしまいます。

自分で洗えるところは洗ってもらうというのが介護の基本なのです。

※寝たきりの場合は衛生上の観点から、陰部洗浄の業務として取り組まれています。

関連書籍

藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない! 在宅の実態とハラスメント』

介護職は重労働のうえ低賃金であるため、人手不足が続いている。それなのに2018年の調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答。介護歴28年、百戦錬磨の著者自身も、利用者から幾度となくベッドに誘われたり、パンツを下げ性器を見せられ迫られたり、キスをされそうになったりしたが、見事にかわし仕事をこなし続けてきた。そして「♯Me Too」運動以降、セクハラをなくそうという流れは一気に加速。介護職におけるパワハラ・セクハラをなくし、介護職をよりやりがいのある仕事にするためのヘルパー奮闘記。

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介護ヘルパーはデリヘルじゃない

パンツを脱いで迫られる、性器を顔に押しつけられる、自慰行為を見せつけられる……。人手不足が深刻化している介護職だが、現場ではこうしたセクハラ行為が蔓延していることをご存じだろうか。ある調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答している。その実態を赤裸々に告発するのは、現役ヘルパーの藤原るかさんだ。著書『介護ヘルパーはデリヘルじゃない』には、私たちの知らない衝撃の事実が綴られている。その一部を紹介しよう。

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藤原るか

東京都の訪問介護事業所、「NPOグレースケア機構」所属・登録ヘルパー。学生時代に障害児の水泳指導ボランティアに参加したことから福祉の仕事に興味を持ち、区役所の福祉事務所でヘルパーとして勤務。介護保険スタートにあわせて退職。訪問ヘルパーとして20年以上活動している。在宅ヘルパーの労働条件の向上を目指し、介護環境の適正化を求めた公の場での発言も多い。「共に介護を学び合い・励まし合いネットワーク」主宰。著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)などがある。

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