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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2020.07.30 更新 ツイート

第136回 育てるいとうあさこ

人生50年振り返ってみるといろんなものを育ててきた。ま、“育ててきた”なんて言い方はおこがましいですが、小学校の宿題で朝顔とかヒヤシンスとかヘチマとか。ヘチマなんかは夏休みに大きくなった実を収穫して、干して束子を作ったり、茎のところを切って“ヘチマ水”を瓶に貯めたりした。

 

“生き物”だと「チョウチョを育ててみよう」という事で、校庭に植えられていた菜の花の葉っぱの裏や茎の間などを探して見つけた青虫を飼育ケースに入れて自宅に持ち帰り、飼育スタート。教科書に出ている“モンシロチョウの育て方”を見てキャベツをあげてみる。虫は苦手でしたが、一生懸命食べる姿を見ているとだんだん愛情が湧いてきた。でも何かおかしい。大きくなるにつれ、教科書に出ている黄緑色ではなく、どんどん焦げ茶のような深い色に。そしてある時からキャベツもほとんど食べなくなり、葉っぱの下で過ごすようになっていく。「どうした? 具合悪いの?」少女あさこは葉っぱの下の“焦げ茶の我が子”に何度も話しかけたがどんどん動かなくなっていった。でもそれは具合が悪かったからではなく、数日後サナギになったのです。サナギになる為の準備をしていたんです。ただですねぇ、これがまたおかしい。サナギの色も、焦げ茶。また焦げ茶です。写真ではモンシロチョウのサナギは“青虫”カラー。しかも飼育ケースの蓋の裏にくっついてサナギを作るらしいのですが、“我が子”ったらキャベツの下でゴロン。

皆さん、こう思っていませんか?「それ、モンシロチョウじゃないんじゃないの?」そうです。その通りです。いやね、今思えば最初菜の花で見つけた時の動き、完全に尺取り虫系だった。うん、絶対にチョウチョじゃない。ただこの時の私はモンシロチョウだと思っていますから。この下に“落ちちゃった”サナギをなんとか蓋にくっつけてあげなきゃ。どうしよう。幼いながらにいっぱい考え、思いつきました。「そうだ。セロテープで貼っつけよう!」……ひどいよね。でも違う生き物だと思いもしない私は“蓋にくっつく”が正しいサナギのあり方だと信じていたのでお許しを。

その数日後、父が気づきます。「麻子、何故サナギをセロテープで留めている?」かくかくしかじか今までの経緯を説明すると、大人って凄い。すぐに「これはモンシロチョウじゃない」と。兄と二人でいろんな図鑑を見て調べてくれて。そして「あれは蝶じゃなくて蛾だよ」と言う、あまりにショッキングな事実を突きつけられる。サナギが下にあるのもおそらく土の中でサナギになる種類だと。結局“焦げ茶の我が子”は土に返す事に。あんなに可愛がっていたのに寂しい、というより急激に怖くなったあの瞬間、今でも忘れない。

あと小学生の定番と言えばメダカ。水槽に水草を入れ、8匹ほど育てる事に。あれは飼い始めてから数週間経った頃、朝餌をあげる為に水槽を覗くと何かがおかしい。その何かはわからないのですが漠然と違和感が。まあでもみんな元気に泳いでいるし気のせいか、なんて思いながら学校へ。そんな事が数日続いたある朝、その違和感が何か、はっきりとわかりました。メダカが減っている。3匹しかいない。でも水の中を見ても特に変な所がない。謎のメダカ連続失踪事件。多分違和感を感じたあの日から少しずつメダカちゃんが減っていっていたのかも。

この理由もその数日後、判明。いつものように水槽を覗くとメダカちゃんは1匹だけ。しかもその1匹がもの凄いスピードで泳いでいる。どうしたのかと思ってよく見ると、その1匹を追いかける黒い影が。私は子供とは思えぬ低い音で「ギャッ」と言った。ヤゴです。トンボの幼虫ヤゴが最後のメダカを追いかけているのです。その長細い姿の気味の悪さは忘れられず、その後映画「風の谷のナウシカ」のヘビケラを観て再び震えたほど怖かった。とにかくそのラス1ちゃんを必死に網で救い出す。おそらく水換えの際、“入れ換える水は一度日光にさらす”と教わったので桶に水を入れて庭へ出しておいた。その時トンボが卵を産んだのだろう。ヤゴは水草に隠れていたのでしょうが、大きくなるまで気づけなかった事が悔しかった。

そんなこんなで意外に傷ついてしまった幼少期の“育て”体験。大人になってからは鉢植えを何度か。でもこれも失敗の連続。20代、クリスマスにポインセチアが流行った時は飛びついて買ってみたものの、翌年以降葉っぱが赤くなる事はなく。「誰でも育てられるよ」と言われ、サボテンも何度もチャレンジしましたが上手に出来ず。特にひどかったのは“恋人同士のように二つ並んだハート型のサボテン”。一生懸命お世話していたのですが最終的には黄色く&薄っぺらくなり、二つが寄りかかるように死んでしまった時には「もしやもう二度と恋が出来ない暗示!?」と不安になったものです。

大久保さんとお正月旅行で行った屋久島でも“サボテンより丈夫”と言われたガジュマルの木を購入。これも半年くらいは頑張ってくれたのですが、まるで逃げようとしているような謎の前傾姿勢でダメになってしまった。

それ以来、もう絶対に植物は育てないと決めていたのですが、今年の誕生日にサボテンちゃんを頂戴いたしまして。正直、数々の植物をダメにしてきた私としては気が重く。でも緑にピンクのサボテンが接木してあり「2つの命が同居しているので生命力が強い」との事。水やりや置き場所など詳しく書いた紙もいただいたので、なんとかそれを見ながら育て始めました。それが新しく葉っぱが出だした途端、急激に愛情湧きまくりんぐ。ただこないだスカートがトゲに引っかかってグッとなった際、「あら、何この子。お母さんにどこにも行って欲しくな~いの?」と自然に喋ってしまった時には一回落ち着こうと思いましたが。最近ではしばらく使っていなかった長ネギが冷蔵庫の中で伸びているくらいしか自宅で“生命”を感じていませんでしたが(あの黄色いとこ美味しいですよね)。新たなるサボテンちゃんとの暮らし、どうか続きますように。

 

【本日の乾杯】

やべぇヤツ、見つけちゃったぜ。セブンーイレブンの「おつまみ冷や奴」。まずお豆腐が濃くて美味しい。しかも最近“ホントの蟹より好きかも”なカニカマがたっぷりで。そこにかける白だしポン酢もたまらない。ああ、これがハマった、と言うのね。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。 人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。

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