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13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう

2020.07.25 更新 ツイート

長篠の戦い パート3

信長といえば「奇策」「アイデア」のイメージ強いけど、意外に「基本をしっかり」するタイプ!房野史典〔ブロードキャスト!!〕

ついに、長篠の戦のパート1から話している「長篠の戦は、初めて鉄砲を使った戦だったのか?」の答えに迫ります。

教えて!『超現代語訳 戦国時代』の房野史典先生!

*   *   *

【長篠の戦い】パート3
くるくるーくるくるー、はいまわってー、くるくるーくるくるー……

『長篠の戦い』はこれで最後。
もう流れはお届けしたけど……とりあえず、おさらいはやっときましょう。

 

武田勝頼が長篠城を囲んじゃう。

「こりゃヤベー」と、家康が信長を誘い、長篠城を助けに。

設楽原で、織田・徳川 VS 武田の戦闘開始。

しっかりとした陣地づくりと大量の鉄砲により、

バタバタ倒れていく武田騎馬隊。


で、「織田・徳川連合軍が勝ったよー」というのが、前回までのお話でした。

武田家は、この戦いをキッカケに大きくパワーダウン。その後、数年間はねばりますが、最後はけっきょく信長に攻めほろぼされます。
この時点で(ちょっと前からだけど)、信長の"日本ナンバー1大名"の位置は、揺るがないものになったんですね。

さて、話は変わりませんが、『長篠の戦い』といえば、やっぱり「鉄砲」。
前回までの話で、大量に使われたってのはわかってもらえたと思うんですが、メインディッシュの割には、よくわかってない部分がそこそこあるんです。

昭和生まれの方々は

「『長篠の戦い』では鉄砲の”三段撃ち”が行われた」

と、学校で教わったのを覚えてらっしゃるでしょうか(平成生まれもそーなのかな?)。

お伝えしたように、当時の鉄砲(火縄銃)は時間ドロボーです。
銃口から火薬と弾丸を入れて、それを棒で押しこみ、さらに……みたいな感じの準備が必要なので、その間にやられちゃうこともしばしば。
『長篠の戦い』より前、鉄砲がそんなに活躍しなかった大きな理由はまさにこれだったんですね。

そんな鉄砲の弱点をカバーしたのが、革命児・信長の"三段撃ち"です。

3000の鉄砲隊を、1000人ずつ横にズラーっと3列に配置。

1列目の1000人が一斉に射撃。

その間2列目3列目は弾込めの準備。

射撃の終わった1列目は後ろへまわり準備。

今度は2列目が前に出てきて射撃。

このローテーションで、時間をあけることなく連続して攻撃することができた。

というメチャクチャ画期的な戦法。
これが、”三段撃ち”です。

すごいですよね。このアイデア思いついたとき信長も「あ! きた!!」と叫んだんじゃないでしょうか?

(写真:iStock.com/yukihipo)

ただこの戦法、実際には


なかった。

っぽいです。


「え!?」っと驚かれた方も多いかもしれません。

しかし、かなり前からこの説は出ていて、今では
「『長篠の戦い』で三段撃ちなんてやってない」
ってのがスタンダード。当たり前になってるくらいなんです。

それにはいくつか理由があってですね……↓

・1000人で一斉射撃するとなっても、都合よく、全員の前に横一列で同時に敵があらわれるわけじゃない(でしょ?)。
となると、目の前に敵が迫って来てない兵士も射撃することになり
「……すみませーん! さっきからオレ誰もいないとこに撃ってんすけど!?」
ってことになり、玉もったいなさすぎ。

・鉄砲を準備する技術には個人差がある。一斉射撃をするなら一番遅いやつに合わせることになるので、ベストタイミングでの射撃は無理。
「ちょ、ちょっと待ってくださーい!」「早くしろテメー! 敵が来てんだよ! お前のせいでやられ……ギャー!」
てなことになる。

・火薬を入れたり、直接火をつけたりするこの時代の鉄砲。ただでさえ暴発が怖いのに、何千人がせわしなくローテーションしてたら、ドン! とぶつかって、ボン! となる可能性大。

・そもそも、信頼度の高い史料(「信長公記」ってやつ)に、"三段撃ち"のことなんて1ミリも書かれてない。

などの理由から、「三段撃ち……現実的じゃねーな」となったんです。

さらに、よくわかってないのが"鉄砲の数"。

鉄砲が3000挺てのは、史料(これまた「信長公記」)に書かれてることなんですが、「千挺」って書かれたそばに「三」て足されて、「三千」になってるらしいんですね。
なので、

「え、なにこれ? 太田牛一(著者)の訂正? ほかの誰かの加筆? 太田自筆の『信長公記』ってもう一つあるけど、それは"千挺"のまんまだよ。ホントは1000挺なんじゃね?」

てなことになり、鉄砲の数に関しても不確定が確定していて、ホントは1000なのか、3000なのか、ビミョォーなとこなんですね。

でもね、
「なんだぁー、ホントは鉄砲って大したことないんじゃない?」
なんて思ったら鉄砲がかわいそう。

鉄砲くんがグレてお家を飛び出していって、家出鉄砲になり、自分に火薬多めに入れて暴発なんてしたら大変です(ずっとなんの話でしょう)。

だから、フォローを入れとくと……

まず、鉄砲の数が1000挺だったとしても、”大量”ということに変わりはありません。

それに、史料には
「鉄砲1000挺くらいを、佐々、前田……(計5人の名前)を鉄砲奉行として……」
なんて書き方がされてるので、取り方によっては
「5人の家臣に分け与えられた鉄砲の数が、1000挺」
とも解釈できますよね。

つまり、織田・徳川連合軍が"全体で持ってた鉄砲の数"は、もっと多かった可能性だってあります(鳶ノ巣砦を攻めた部隊にも500挺持たせてるようですし。でも可能性だよ、可能性)。

さらに、三段撃ちだって……これ自体はまぁなかったかもしれませんが、1000挺の"一斉射撃"が無理というだけ。
部隊を数ヶ所にわけて順番に撃ちまくれば、それは"連続射撃"。
その効果が絶大だったことに、間違いはありません。

なので、いろいろはっきりしてない鉄砲情報ですが、『長篠の戦い』で果たした役割は大きかった……これだけはたしかだと思います。

はい、では、『長篠の戦い』で、僕らが学べる部分はどこなんでしょうか?

「鉄砲を使った信長のように、どんどん新しいものや技術を取り入れるべきだ!」

というのは、「まぁそうねぇ……」という感じ。
それよりも、この戦いの勝敗に目を向けると見えてくるのは、

「鉄砲だけに頼ってない信長さん」

ってとこなんですよね(こっからまた個人的意見す)。

『長篠の戦い』での信長・家康の一番の勝因は、鉄砲を使ったこと……じゃなくて、
「やっぱり、相手より兵の数が多かったからだよね」
って言われてるんです(諸説ありだけど、織田・徳川3万8000、武田1万5000)。

そのほかにも、
「陣地作り(野戦築城)が決め手だ」
とか
「鳶ノ巣砦をおさえて後ろからプレッシャーかけたのがよかったんだ」
などなど、専門家によって意見はわかれますが、「一番の勝因は、むしろ鉄砲よりも……」って感じなんです。

信長って、『桶狭間の戦い』の印象が強いせいか、
「少ない兵でも戦いを挑んで、奇抜なアイデアで切り抜ける」
みたいなイメージがあるかもしれませんが、桶狭間はむしろイレギュラー。

それ以降は、たーくさんの兵数・物量をそろえ、準備をキッチリ整えて、手堅い戦いをしようとしてるんです(基本的にね)。

僕らは、普段の生活でも、何かにチャレンジしてるときでも、躍進や打開をはかるためには、画期的なアイデアや新しい技術が必要だと考えがち。
しかし、『長篠の戦い』における信長の姿は、

「まずは手元にある素材でどれだけの準備ができるか。新たな技術(アイデア)を活かすのはそれからだ」

ってことを伝えてくれてるような気がします。

すごく当たり前の結論ですが、どんなジャンルにおいても「基本をしっかり」というのは、一番大切な要素。
"新しい力"っていうのは、基礎や基本をおろそかにしなかった人だけが扱える、ブースト装置のようなものなのかもしれませんね(以上、個人の考えでございました)。

さて、次回のお話ですが、あまりに有名なので、タイトルが引きになると考え告知します。

次回、
『本能寺の変』です。

どうぞお楽しみに。

 

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房野史典〔ブロードキャスト!!〕

1980年岡山県生まれ。名古屋学院大学卒業。お笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当。 無類の戦国武将好きで、歴史好き芸人ユニット「ロクモンジャー」を結成し、歴史活動にも意欲的。 子供たちに歴史の面白さを教える授業も好評。初の著書『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』で、ブレイク! 戦国に始まり、『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』『時空を超えて面白い! 戦国武将の超絶カッコいい話』など著書あり。

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