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会社を辞めるのは怖くない

2020.07.03 公開 ツイート

元銀行員の作家が警告!独立・起業でやってはいけないこと 江上剛

転職、独立、起業、セミリタイア……。終身雇用、年功序列が崩壊しつつある今、「会社を辞める」という選択は珍しいものではなくなっています。しかしリスクばかり考えて、あと一歩踏み出せない人も多いはず。そんな人の背中を押してくれるのが、自身も26年間勤めた銀行を辞め、作家に転身した江上剛さんの『会社を辞めるのは怖くない』です。本書の中から、新しい人生を送るための準備と心がまえをいくつかご紹介しましょう。

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趣味を仕事にしてよいのか?

退職後は、何か趣味を始めたい、あるいは趣味を活かした仕事をしたい。そんな夢を持っている人もいるでしょう。でも趣味というものは、いつのまにか興味が湧いてきて、損得抜きではまってしまうものです。無理やり趣味探しをしたり、仕事に結びつけようとするのも、どんなものかなという気がします。

(写真:iStock.com/kuppa_rock)

そば打ちを趣味でやっているうちは、きっと楽しいでしょう。しかし仕事になれば厳しく辛いものです。多勢の人から、あなたのそばを味わいたいと押される形で店を開くようでなければ、趣味として楽しむべきです。現に僕は趣味で始めた小説が仕事になり辛い思いをしているわけですから。これは本当です。

ある友人は、子供の頃から切手収集を趣味にしていました。大手コンピュータ会社に勤めながら、切手ビジネスを始めました。趣味が高じて専門家になり、ビジネスに結びつけてしまった成功例です。

子供の頃からやりたくて、ずっと夢中になっていた趣味が、いつのまにか第二の人生の糧になっている。そういう流れが自然だろうと思います。

サラリーマンが田舎暮らしや職人生活に憧れ、退職金で店を開こうとするケースは少なくないようです。ある友人は、定年後は蓼科に家を購入し、野菜料理のレストランを開くぞと張り切っています。また、あるテレビ局のプロデューサーは、50歳になったら会社を辞めて、沖縄に日本そば屋を開くつもりだと夢を語ります。「沖縄には日本そば屋がないんだよ」というのが開業プランの理由です。

会社勤めをしている時に、こういう夢を持つのは悪くないと思います。でも青写真もなく、強引に実行しようとすれば、必ず失敗します

リスクをミニマイズする

新しく事業を始める時、肝心なのはリスクの取り方です。やりたいことが、いくつかあったとします。もし農業に憧れているなら、思いきって、自治体などがやっている新規就農者募集に応募したいと考えるかもしれません。しかし自給自足で仙人のような生活をめざすならともかく、事業として成り立たせるのは並大抵のことではありません。

(写真:iStock.com/Gajus)

自分がやりたいと思う他の分野の仕事とも比較してみましょう。農業の場合、収入は、最も低くなる可能性が大です。でも日々の生活費はそれほど必要ないかもしれない。ではどんな問題があるのか。人間関係作りは得意か。農業技術はどのくらいで習得できるのか……。

コンビニのフランチャイズで開業する道を選んだとします。保証金を用意しなければならないし、店舗も改装する必要がある。人件費を抑えるため、家族総出で働かないといけないかもしれない。24時間営業で、日曜日も休めない。そうなると、コンビニの店主になる人生は、ひょっとしたら、大変なリスクかもしれません。

小さなリスクも見落とさないよう、ロングスパンできめ細かく事業計画を点検した上で、これから進むべき道を選択しましょう。重く深刻に受け止めて、身動きが取れなくなるのは困りますが、人生後半の貴重な時間を過ごすのですから、清水の舞台からエイヤーと飛び降りるのではなくて、リスクをミニマイズするように考えねばなりません。それは他の家族にはできません。永年にわたってサラリーマン人生を歩んできたあなたの仕事です。

 

自由業に転職して自分のオフィスを持ち、大はりきりでピカピカのOA機器などをそろえる人もいます。でも形から入ってはいけないと思います。僕などは作家に転身しても事務所は構えていません。だってうまくいけばいいけれど、仕事がほとんど入らなくて、事務所に誰も来なかったりしたら、家賃だけが垂れ流しになる。それじゃあ、もったいないし、寂しすぎます。そんなリスクは最小限に抑えなければなりません。

退職金ビジネスにも安易に乗らないことです。「ラーメン屋を開きませんか」「チェーン・レストランのフランチャイジーになりませんか」などといった勧誘がしばしばあります。

店でもやるか……。そんなデモは御法度。軽い気持ちで大きな投資をすることは止めるべきです。

本当に自分はラーメン屋をやりたいのか。ラーメンを食べるのが好きなだけではないのか。テレビの番組で商社マンだった男が、ラーメン屋の親父さんにしごかれ、汗や涙を流しているのを見たりすると気の毒になります。焦って退職金をつぎ込むと、瞬く間に“負け組”になってしまうかもしれません

まずは、会社勤めをしっかりやっておく。その上で現役時代から好きなこと、関心のあることにトライしてみる。そして本当に自分に合っているのか、仕事として取り組むことができるのかしっかり見極める。その慎重な姿勢があれば、おかしな罠に引っかかることもない

関連書籍

江上剛『会社を辞めるのは怖くない』

グチをこぼしながら今の会社にしがみついてもいいだろう。でも、どんなに尽くしても、会社は平気で社員を放り出すものだ。だったら、思い切って会社を辞め、新しい一歩を踏み出してみては? 起業するもよし、自分に合う環境を求めて転職するもよし。そのときに必要なのが(1)自分の足で立つという気構え(2)人脈(3)家族の支えだ。26年間勤めた銀行を辞めて作家に転身した著者が語る、新しい人生を送るための準備と心構え。

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会社を辞めるのは怖くない

転職、独立、起業、セミリタイア……。終身雇用、年功序列が崩壊しつつある今、「会社を辞める」という選択は珍しいものではなくなっています。しかしリスクばかり考えて、あと一歩踏み出せない人も多いはず。そんな人の背中を押してくれるのが、自身も26年間勤めた銀行を辞め、作家に転身した江上剛さんの『会社を辞めるのは怖くない』です。本書の中から、新しい人生を送るための準備と心がまえをいくつかご紹介しましょう。

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江上剛

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行、97年の総会屋事件当時は広報部、本店審議役として対応した。『金融腐蝕列島』(KADOKAWA)の主人公のモデルの一人。2002年に『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。03年、退職。以後、銀行をテーマにした小説を多数発表。

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