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お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。

2020.06.05 公開 ツイート

逃げた先でも問題は起こる。人生を進めるためにはお金が必要だ 英月

結婚、仕事、人間関係……ただ生きてるだけでも悩みは尽きません。「自分の人生、これからどうなっていくんだろう」とぼんやり不安を抱えていませんか?

お坊さんである英月さんの本『お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。』には、そんな人生の不安を吹き飛ばしてくれるヒントがたくさんあります。

彼女のハチャメチャな人生を知れば、きっと自分の人生も開けて見えてきます。その中身を、本書より一部公開いたします。*前回「毒親によるお見合い地獄…人生というレールの上の結婚

*   *   *

アメリカで「今、ここ」を生きることを知る

ここではないどこかを探して、アメリカまで家出をした私。日本から、京都から、そして「寺の娘」という環境から逃げて、どうなったのか?

私を苦しめる問題から、苦しみから、解放されたのか?

確かに、目の前にあった「お見合い問題」からは解放されました。しかし、次から次へと問題はやってきます。そもそも、英語が話せない。生きていくのに、十分なお金もない。目が覚めてから寝るまで、問題しかないのです。

こんなことを言っちゃうと、英月さんって京都の人だからイケズなのね、と思われてしまうかもしれませんが……。

銀行で働いていた時のことです。単刀直入に言って、苦手な先輩もおられました。毎月、月初めに異動が発表されていたので、あの先輩、転勤でどっかに行かないかなぁと、願ったものです。ある時、その先輩に異動の辞令が出ました。嬉しかったですねぇ。心の中で万歳三唱。これで明日から、私のOL生活は順風満帆。しかし、転勤で出て行く人がいれば、入ってくる人がいるのが世の習い。代わりに来られた方が、酷かった。これだったら前の先輩の方がマシだと、転勤を願ったことを激しく後悔。カムバック~。

つまり、目先の問題が解決しても、問題は次から次へと起きるのです。

あの人さえいなければ、あの問題さえ解決すれば、そう思います。けれども実は、あの人さえいなければという思い、あの問題さえ解決すればという思い、その思いに縛られ、苦しめられているのです。その思いからの解放。私でいえば、ここではないどこかがあるとの思いからの解放。私が生きるのはここではない、と思い続けることは、「今、ここ」を、生きていないこと。

でもね、英語もできず、お金も十分にないまま渡米したおかげで、否応なく、「今、ここ」に、立たされることになったのです。

どういうことか?

とにかく金がない‼

日本にいる時は、贅沢なことかもしれませんが、安定した将来に空しさを感じていました。銀行で働いていた時は、1年後、2年後の仕事も予測できました。部署は変わろうとも、こんな仕事をしているだろうと。プライベートも同じです。だから、「何か楽しいことない?」が、口癖になっていました。

生活の基本である衣食住が安定していたので、安心してキョロキョロできた。何かないかな? と。もっと楽しいこと、そして、もっといい場所はないかな? と。ここではないどこかを、探すことができたのです。

(イラスト:上路ナオ子)

けれどもアメリカで生活を始めたら、そんな悠長なことは言っていられません。まず、衣食住です。銀行口座にある、わずか100万円ちょっとで、この異国での生活の基盤をつくり、生き抜いていかなければならないのです。100万円は大金だと思われるかもしれません。けれども、家賃に食費などの生活費に語学学校の授業料など、贅沢をせずに切り詰めたとしても月に1500ドル(約18万1755円・2001年3月の月中平均為替レート1ドル121.17円より)は、かかりました。計算するまでもなく、半年もしないうちにすっからかん。

だから、今しか考えられなかったのです。「今、ここ」を、どう生き抜くか!

(中略)

日本でたくさんお見合いをして、安定した将来を約束されていたけれど、笑顔で来客を迎えることと、男の子を産むことだけが私に求められていることかと思うと、たまらなく空しくなって、逃げ出した。逃げたら逃げたで、今度は先行きがまったく見えない。まるで海の中で溺れて、どっちに進めばいい? と、迷子状態。

けれども、先行きが見えないというのは、自由に進めるということ。つまり、言葉を変えれば「こうならなければいけない」「こうしなければいけない」という決められた方向性から解放されたということ。

そう、どこに進んでもいいのです。女優を目指しても、たとえそれが荒唐無稽でも。

そして、痛烈に心に刻まれたこと。それは、もう二度と、お金がなくてチャンスを断念するような思いはしたくないということです。お金がないと、挑戦さえできない。お金は生き抜くための道具だと。道具は多ければ多いほどいい。私は、がむしゃらに働き始めました。道具としてのお金を貯えるために。

*   *   *

次回は6月9日公開予定です。

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お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。

うちの安住の地って、どこにあるん?

親のお見合い攻撃にキレて、なんと海外逃亡。アメリカに骨を埋めるつもりが、仏教に出会ってしまい……。ハードな人生に笑えて泣ける、奮闘エッセイ。

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英月

京都市生まれ。真宗佛光寺派長谷山北ノ院大行寺住職。銀行員になるが35回以上ものお見合いに失敗し、家出をしてアメリカへ。そこでテレビCMに出演し、ラジオのパーソナリティなどを務めた。帰国後に大行寺で始めた「写経の会」「法話会」には、全国から多くの参拝者が集まる。『毎日新聞』にて映画コラムを連載。情報報道番組コメンテーター。著書に『あなたがあなたのままで輝くためのほんの少しの心がけ』(2014年、日経BP)『そのお悩み、親鸞さんが解決してくれます』(2018年、春秋社)、共著に『小さな心から抜け出す お坊さんの11分説法』(2013年、永岡書店)、VS仏教』(2019年、トゥーヴァージンズ)がある。

写真:Noriko Shiota Slusser

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