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悩みぬく意味

2020.03.30 公開 ツイート

不安、孤独、絶望…心が壊れそうなときは「脱同一化」が効く! 諸富祥彦

「悩みから逃げず、きちんと悩める人にだけ濃密な人生はやってくる」。そうおっしゃるのは、心理学者でカウンセラーの諸富祥彦先生。とはいえ、やみくもに悩めばいいわけではありません。「正しい悩み方」があるのです。著書『悩みぬく意味』は、その具体的方法を伝授してくれる本。いつも悩みがちなあなたにぜひ読んでいただきたい本書から、一部をご紹介します。

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ネガティブから距離をとる

「脱同一化」というのは、「私」が「死にたい気持ち」や「圧倒的な孤独感」に圧倒され、覆い尽くされ、翻弄されている状態、すなわち、「私」がそういった否定的な気持ちと「同一化」してしまっている状態から「私」を引き離し、否定的な気持ちから距離を取ることです。さまざまな悩み苦しみや否定的な気持ちと、一定の距離を取り続ける「こころの姿勢」を保つことです。

(写真:iStock.com/metamorworks)

自分の心の内側から、死にたいとか、つらいとか、もうだめだとか、あいつを殺してやりたいとか、一生憎んでやるとか……どんな気持ちがどれほど出てきたとしても、それがどんなものであったとしても、ただそれを「あぁ、こんな気持ち、ここにあるなぁ」と、「ただそのまま認めて、眺めていく」のです。

何が出てきても認める。ただそのまま、認めて、眺める。解釈したり、いじくったり、考えたりせずに、ただそのまま、認めて、眺める。

たとえば死にたい気持ちが湧いてきたら、「あぁ、死にたい気持ち、ここにあるなぁ」と、なにかものごとを観察するかのような姿勢で、ただその気持ちの存在を認めて、眺める。あるいは、どうしようもなくさみしい気持ちが湧いてきたら、「あぁ、さみしい気持ち、ここにあるなぁ」と認めて、眺めていく。ただひたすら、この作業を続けていく。それだけのたいへんシンプルな方法です。

なぁんだ、そんなこと、と思われたかもしれません。しかしこれが、やってみると意外に難しく、しかもものすごく大きな効果を発揮するのです。

「脱同一化」こそ、どんな最悪の状態になっても、何とか日々をしのぎ、持ちこたえるための「こころの姿勢」を体得していく最強の技法です。

たとえば、次のような「最悪の状態」の時のことを想像してみましょう。

お金がない。仕事がない。友人もできない。恋人はいないし、結婚なんておぼつかない。親も冷たい。自分でも自分のことが才能があるとも魅力があるとも思えない。

あぁさみしい。いくら待っても、誰からも、電話もこなければ、メールもこない。たまに来たと思ったら、迷惑メールだけ。こちらから電話できる相手もいない。

あぁさみしい。圧倒的に孤独だ。こんなただただ孤独な状態のまま、日本人の平均寿命まで、あと40年も生きていかなくてはならないと思うと、たまらなくなる……。いっそ、死んでしまえればどんなに楽なことか……。

こんな「最悪の状態」にあなたが今、なっているとします

これが「魔法の言葉」だ

そんな時、次のように声に出して言ってみるといいでしょう。

(写真:iStock.com/olegbreslavtsev)

「私は私である。私は“死にたい気持ち”を持っている。けれど私は、“死にたい気持ち”ではない」

「私はここ。死にたい気持ちはそこ」

「私は私である。私は“圧倒的な孤独感”を持っている。私の中には“圧倒的な孤独感”がある。でも私は、“圧倒的な孤独感”ではない」

「私はここ。孤独感はそこ」

そう言いながら「どんな気持ちであっても、ただそれを、認めて、眺める」姿勢を反復して身につけていくのです。

大切なのは、反復練習です。毎日、毎日、家の中でも電車の中でも、思いついた時に、まわりの人に迷惑がかからないような仕方で、繰り返していきましょう。

実際に、声に出さなくても、心の中だけでつぶやきながらおこなっていけばいいのです。

毎日毎日、おこなっていると、いつの間にか、「死にたいようなつらさ」や、「圧倒的な孤独感」から、少しずつ、「距離」がとれるようになってきます。しかも、反復練習しているので、ひとりでにそのようなこころの構えが自動発動するようになってきます。

死にたくなったら、「あぁ、死にたい気持ちが出てきたなぁ」と観察するような姿勢で認めて、眺める。もうだめだ、と思ったら、「もうだめだ、という気持ちがあるなぁ」と観察するような姿勢で認めて、眺める。ただただひたすらこれを繰り返していくのです

少しからだを動かしながらおこなうと、よくわかる、という方も少なくありません。

今、その場で立ち上がって、目の前に、実際の自分がいて、「いっそ、死んでしまいたい気持ち」や「どうしようもなく、さみしい気持ち」を抱え込んで座っている、と想像してください。そして、距離を置いて立ったまま、「その悩み苦しんでいる自分」に向かって、一歩下がりながら(スウェーバックしながら)こう言ってみるのです。

「私はここ、苦しい気持ちはそこ」

「私はここ、死にたい気持ちはそこ」

「私はここ、さみしい気持ちはそこ」

この方法をふだんから反復練習して身につけておくと、たとえばつらい気分で沈み込んでいる時に、ふと魔が差して、電車に飛び込んでしまいそうになった場合などの、緊急避難の方法としても、有効です。

関連書籍

諸富祥彦『悩みぬく意味』

生きることは悩むことだ。悩みから逃げず、きちんと悩める人にだけ濃密な人生はやってくる。ただし、やみくもに悩めばいいわけではない。心が弱っている人は、自分の内面を見つめず現実をしのぐ工夫から始める。心がある程度頑丈ならば、自己を掘り下げ、悩みの正体を受け止める。苦悩する人々に寄り添い続ける心理カウンセラーが、フランクル、フォーカシング、森田療法、ミンデルらの手法をもとに濃く深く生きるための正しい悩み方を伝授する。

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悩みぬく意味

「悩みから逃げず、きちんと悩める人にだけ濃密な人生はやってくる」。そうおっしゃるのは、心理学者でカウンセラーの諸富祥彦先生。とはいえ、やみくもに悩めばいいわけではありません。「正しい悩み方」があるのです。著書『悩みぬく意味』は、その具体的方法を伝授してくれる本。いつも悩みがちなあなたにぜひ読んでいただきたい本書から、一部をご紹介します。

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諸富祥彦

1963年福岡県生まれ。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授(11年)を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。 時代の精神(ニヒリズム)と「格闘する思想家・心理療法家」(心理カウンセラー)。 日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会理事、日本産業カウンセリング学会理事、日本生徒指導学会理事。 教師を支える会代表、現場教師の作戦参謀。 臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラーなどの資格を持つ。

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