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前進する日もしない日も

2020.01.24 更新 ツイート

ヘルシンキ(2) 船でエストニアのタリンへ益田ミリ

 北欧、冬の旅である。

 雪が積もっていることを想定し、スーツケースを引っ張っての移動が少なくて済むよう今回の宿泊先はヘルシンキ中央駅からすぐの「ソコスホテル ヴァークナ」に。雪はなかったものの寒い中の街歩きは疲れやすく、ホテルが便利な場所にあったおかげでこまめに休憩に戻れるのはありがたかった。

 

 ホテルの予約は日本の旅行代理店にお願いしたのだが、ダメもとで「眺望がいい部屋」というリクエストをしてもらった。すると、チェックインのときにフロントの女性が、

「狭いんだけど、景色がいい部屋があるわ!」

 と、ヘルシンキ大聖堂が真正面に見える部屋にしてくれた。しかも、広めのルーフバルコニー付きで、トラムが行き交う様子やヘルシンキの街を一望することができた。

 部屋は確かに狭くて、

「スーツケースってどこで広げればいいんだっけ?!」

 と頭を抱えるほど。この狭さはなかなかないと思う。しかし、素敵なルーフバルコニーを思えば些細なこと。ルーフバルコニー好きの人におすすめしたい9階のシングルルームである。

 

 さて、旅の2日目は船でエストニアのタリンへ。

 初日に空港バスを乗り間違えた経緯があるので「わたし、船でも失敗しそう……」と尻込みしていたのだが、タリンのクリスマスマーケットを見てみたい気持ちが勝った。

 

 

 朝。ヘルシンキ中央駅前からトラムに乗って港へ。トラムの路線図が一部更新していたのでまごまごしたものの、なんとか間に合い10時30分、出航。タリンまで約2時間の船旅である。

 この船に乗るのは二度目なので勝手知ったるなんとやら。階段をさくさくあがってデッキ9のフロアへ。セルフサービスのカフェでイチゴのスムージーを買い、てきぱきとテーブル席を確保。もうひとつ下の階には広いショッピングエリアもあるけれど、前回、歩き回っていたら船酔いしそうになったので、念のため動かないことにする。

 旅の日記をつけたり、ぼんやりと乗客をながめたり。

 ふいに不思議な気持ちになる。

 わたしは今、遠い遠い異国の海の上。タリンに行くことは今朝決めたのだから、わたしがフィンランド湾にいることを家族や友達は知らない。

 ということは、この船が海に沈んでもわたしのことは誰も気づかないのか……。若干、淋しくなったのだが、よくよく考えると乗船するときパスポートの記録を取っているのだから気づいてもらえるはずである。

 タリンに到着した。入国審査はなく、乗客らはぞろぞろと船を降りてエストニアに上陸する。前も思ったのだが、たくさんの人が降りるわりに旧市街に向かう観光客はまばらなのだ。下船後、みなどこに消えてしまうんだろう。ツアー観光バスの乗り場に行ったのだろうか。

 世界遺産の旧市街まで歩く。道中、大掛かりな工事が行われていてガイドブックの地図があてにならないので、日没後の帰り道は迷子になりそうだ(案の定、迷うことになる)。

 世界遺産の旧市街は、旧市庁舎に面するラコヤ広場を中心にぐるりと城壁に囲まれている。このラコヤ広場のクリスマスマーケットがヨーロッパで一番古いのだという。城壁の中に入る。石畳を踏みしめ、わくわくしつつクリスマスマーケットへと向かった。

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前進する日もしない日も

仕事の打ち合わせ中、まったく違うことを考えてしまう。ひとり旅に出ても、相変わらず誰とも触れ合わない。無地の傘が欲しいのに、チェックの傘を買ってくる。〈やれやれ〉な大人に仕上がってきたけれど、人生について考えない日はない。そんな日々のアレコレ。

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益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に、漫画『すーちゃん』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』『きみの隣りで』『今日の人生』『泣き虫チエ子さん』『こはる日記』『お茶の時間』『マリコ、うまくいくよ』などがある。また、エッセイに『女という生きもの』『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『かわいい見聞録』や、小説に『一度だけ』『五年前の忘れ物』など、ジャンルを超えて活躍する。

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