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ゴルフは名言でうまくなる

2019.12.01 更新 ツイート

第114回

「フォワード・プレスは、スウィングの一部である」――チック・エバンズ岡上貞夫

同年に全米オープンと全米アマで優勝

チック・エバンズはアメリカのアマチュアの名手で、1910年代~50年代に活躍した。1916年に全米オープンと全米アマの両方で優勝したが、同一年にこの2つのタイトルを取ったのは、ほかにボビー・ジョーンズがいるのみである。

エバンズは生涯アマチュアで通し、全米アマには50回連続出場の記録が残っている。彼は裕福な家庭の生まれではなく、中流家庭といったところで、13歳のときにキャディのアルバイトをして家計を助けたのがゴルフとの出会いだった。

 

そのゴルフのおかげで、アマチュア選手としての名声を得て、多くの友人に恵まれ、豊かな人生を送ることができた――そう考えたエバンズは、ゴルフへの感謝の気持ちを忘れなかった。

ゴルフに恩返しがしたいと思ったエバンズは、ゴルフレッスンのレコード(音声)を発売したのだが、これが大ヒット。アマチュアの彼は、ゴルフで利益を得ようとは思っていなかったが、5000ドルもの印税が舞い込み、困惑してしまった。

そこで母親に相談したところ、こう助言されたそうだ。

「ゴルフから得たものは、ゴルフに返しなさい」

これに従い、印税の5000ドルはまずウェスタンゴルフ協会経由で供託預金にされた。それが、大恐慌前の景気のおかげで利子が積もり、13年後には1万2000ドルに達した。

そして、このお金をもとに、キャディをしている少年たちの奨学基金を始めたところ、彼のゴルフ仲間やその他の一般人からも寄付が殺到したという。その額は最終的に100万ドルを突破した。当時の100万ドルは、現在では10倍以上の価値があるはずだ。

1930年代といえば、大恐慌の直後だ。エバンズがゴルフを通じて広めてきた人脈や名声がいかに大きいものだったかがよくわかる。

居合い抜きパフォーマンスで人気のあったプロゴルファー、チチ・ロドリゲスは誰にも言わず密かに慈善活動をしていたが、あるときそれを知った記者がそのことを問うと、「俺のやっていることなんて、チック・エバンズのやったことに比べれば大したことはないよ」と答えたそうだ。

エバンズの基金は今も続いており、PGAツアーでは多くのプロがその意志を継いで、慈善活動を続けている。日本のプロにも見習ってほしいところだ。

笠りつ子プロが、たかだかタオルが用意されてないぐらいのことで、試合会場のゴルフクラブの責任者に暴言を吐く事件があったが、情けないことだ。

誰のおかげでゴルフができ、生活ができているのかを、忘れてはいけない。彼女は、地元・熊本の被災地で支援活動を行っているだけに、とても残念だ。

プロもやっているフォワード・プレスとは?

さて、エバンズの表題の言葉は、1954年に青少年用のゴルフ教材として著した“Golf for Boys and Girls”に出てくる。

「フォワード・プレスは、いわばスウィングに反動またははずみをつける一種の起動力の役割をなすもので、スウィングの一部である」

「フォワード・プレス」は、テイクバックを始める直前、スムーズなバック・スウィングを始めることができるよう、手・腰・ひざなどをわずかに前方へ動かしてその反動を利用する動きだ。

フォワード・プレスという言葉は、イギリスの伝統的なゴルフ用語にはなく、アメリカ人が作った新用語だ。それまでは、アメリカに移住したスコットランドのプロたちのスウィングの癖みたいに思われていたようだ。

それが単なる癖ではなく、スウィングの始動に重要な役割を果たすことがわかってきて、新用語が誕生した。現在では、本家イギリスもこの用語を使っている。

フォワード・プレスは、アドレスで固まってしまって始動のきっかけがつかめず、なかなかテイクバックを始められないプレーヤーにはぜひ試してもらいたい方法だ。

動きの大小はあるが、ほとんどのプロもやっている、アドレスから始動する直前にピクっとするような動きがフォワード・プレスだ。

手だけを前方へほんの少し動かすことが多いが、ゲーリー・プレーヤーは手と同時に右ひざも少し送るような動きをしていた。

タイガー・ウッズも、手と腰をわずかに左側へ押しつけるような動きでフォワード・プレスをしている。

このようなフォワード・プレスを行うと、わずかに体重が左へ寄る。アドレスで左右均等に体重を配分しているプレーヤーなら、フォワード・プレスの瞬間に、左5.5:右4.5ぐらいの配分になる。

するとその反動効果で、右側への動き、つまりバック・スウィングがよどみなく始動できるというわけだ。いったん左へ寄った体重が戻ってくるのに連動して、バック・スウィングを始められるからである。

フォワード・プレスでイップス解消

アベレージ・ゴルファーには、アドレスで呼吸のタイミングを計ったりしているうちに、スウィングを始めるタイミングを見失ってしまうプレーヤーがよくいる。

素振りだと難なくスウィングできるのに、いざボールにアドレスするとモジモジするばかりで、なかなか打てなくなってしまうのだ。そのまま時間が経過すると、筋肉が硬直し始めたりして、ますますスムーズなスウィングができなくなり、結果としてミスショットになる。

アドレスが完了したら、(急ぐ必要はないが)モタモタせず、すみやかにスウィングを開始したほうが、いろいろな雑念が入り込んだり、肩に力が入ったりしなくていいのだ。

自分なりのフォワード・プレスをルーティーンのなかで身につけておけば、このような症例はたいがい回避できるだろう。

チック・エバンズはフォワード・プレスの効果について、著書で次のように述べている。

「私はフォワード・プレスをスウィングの非常に重要な一部と考える。私はスウィングをはじめる直前に、両手が地上にソールされたクラブ・ヘッドより2インチほど前に出るくらいに押す。そのはずみに体重はわずかに左足に移り、それを反動としてバック・スウィングをはじめると、私にはスウィングが非常にリズミカルにやりやすくなって良いショットができるのだ。そのために、私はパッティングにもフォワード・プレスをする」

ここで注目したいのは、フル・ショットだけでなく、パッティングのような力加減をするショットにもフォワード・プレスが有効だと言っていることだ。

イップスやイップスっぽい症状は、とくにアプローチ・ショットやパッティングのような、力加減を必要とするストロークに多く見られる。

どれぐらいの力加減をするかを考えたりしているうちに、筋肉のしびれや硬直が始まってしまい、ストロークを始められなかったり、震えたりしてギクシャクしてしまうのだ。

距離感を出すために力加減するショット・パットにも、ルーティーンにフォワード・プレスを加えると、多少なりともイップスのような症状が軽減するのではないかと思う。

イップスがないゴルファーでも、スムーズにストロークを始めることができれば、いいインパクトができて寄ったり入ったりすることも多くなるのではないだろうか。

今回のまとめ

1. フォワード・プレスを取り入れると、スウィングの始動がしやすくなる

2. アドレスしてから、モジモジするばかりで始動のタイミングがつかめず、時間がかかってしまうタイプには、フォワード・プレスが効果的である

3. 力加減が必要なアプローチ・ショットやパッティングにおいても、よどみないストロークをするためにフォワード・プレスを取り入れることは有効だ

 

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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