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SEX

2019.06.25 公開 ポスト

――見つけた。私、この男がいい。LiLy

女性から絶大な人気を誇るLiLyさんがはじめて書いた官能小説「SEX」。

マッチングアプリでのワンナイト、泥沼化するオフィスラブ、セックスレスからの不倫、女の子との官能的な同棲生活、SMーー。

女の心情と現代をリアルに切り取った衝撃作が誕生しました。

発売を記念し、特別に全4回の試し読みを行います。

 

*   *   *

 

Lesson01 女の武器を自分の中に探せ。ーーもし、シビアなゲームに参戦するなら。

 

  念を込めるように、ゆっくりと初めてのハートマークの「いいね!」を押す。と、次の瞬間、いきなりパチンッと画面が切り替わった。

 初めての体感に、心臓が飛び跳ねる。

 男のアイコンと私のアイコンとがポーンッと宙を舞い、私たちのアイコンが画面の真ん中に並んだ。と、思ったらそこに「Itʼs a Match!」という英文字がパーンと弾けた。まるで、耳元で突然誰かに「おめでとうございます!!」と大声で叫ばれたみたいでビックリした。

 カップル誕生を祝福するフラッシュ動画の衝撃に、頭がまったく追いつかない。初めての経験に、脳の神経がビリビリと食らってしまっている。

 こ、これがマッチングアプリというものか……。

 

 

 冷静さを取り戻してもなお、あまりのスピードに気持ちがついていけず、私は特殊な恍惚感の中にいる。スマホ画面はとっくに静止画へと切り替わり、マッチした男とのチャットが可能である旨を伝えてくる。

 たった今、私はこのShogoという男に対して、ある種の「生まれて初めて」を使ったのだと気づく。アプリには不慣れだが、この事実なら知っている。

 

 生まれて初めて、はたったの1回。

 初めてって、なんて強い刺激なの。

 

 超がつくほどの好感を持ったからこそ「スーパーいいね!」ではなく普通の「いいね!」を押したのとまったく同じ理由から、すぐにチャットに挨拶を打ち込むなんてヘマはしない。その代わりに、男探しスクロールへと戻ることにした。

 ─────あの男、必ず落とす。

 アイコンの写真を思い出しながら、決意を新たに。ターゲットが明確になったタスクに、ハートが燃える。ゲームはまだ、始まったばかり。本命とは比較にもならない低レベルの男たちを次々に左スワイプしながらも、頬がにやける。あんないい男が「いいね!」をくれたということは、作成したばかりのアイコンとプロフが成功している何よりの証。

 2度目のマッチはすぐにきた。

 Yutoという男。さっきとまったく同じフラッシュ動画がスマホの中で躍ったが、心は微塵も揺れなかった。そんな自分の冷静さが改めて、Shogoの「タイプど真ん中のルックス」と「生まれて初めて」の掛け算による破壊力を痛感させる。

「初めまして! マッチありがとうございます♡♡♡」

 1秒も待てずにマッチに食いつくYutoに引いた。こんな深夜にアプリに張り付いていたのだろうか。暇なのか。女に飢えているのか。モテないのだろうか。そもそも、ハートマークを気軽に乱用する男はタイプじゃない。色気がある男は、まずしない。そもそも、その月並みなチャラさが粋ではない。

 だからこそ、私は気楽に、即返信。

 目には目を、ハートにはハートを。

「こんばんは♡ まだ登録したばかりで不慣れですが、よろしくです♡」

 深夜にアプリに張り付く、セックスに飢えすぎた、暇人同士のハート交換。

 あまりにもダサすぎて、愉快な気持ちになってくる。サルだ、これ。いや、ハートマークをいれている時点でサル以下だ。アハハ、なにこれ、マジでウケる。

 乾いた自虐的な笑いとともにYutoという男と適当にチャットしながらも、本命の男に妄想を馳せている。

 

 

 マッチはしたものの、顔も出していないデコルテアイコン女に、Shogoはメールなどしてこない。なんて、イケてる……。きっと今頃、腕の中でいい女を悶えさせているのだ。顔を歪める美女を想像すると、抱いている側のShogoの魅力が際立って見える。適度に鍛えられた胸板に、添えられる女の手と、Shogoの肌に光る汗。

 あぁ、なんて、エロい……。

 自分に都合の良い勝手な妄想をふくらませていると、肩に入っていた力がスゥッと抜けてゆく。

 ヤリモクの大本命がShogo。そのための練習台がYuto。二人の男をアプリの中で、とりあえずは手に入れた。不思議な安堵と達成感に心が優しく包まれる中、スマホの青白い光を落とし、やっと私も眠りに入る。

関連書籍

LiLy『SEX』

『Numero Tokyo』の大人気連載、女性のための官能小説。 書き下ろしの最新話を加えてついに書籍化! 「この本が、読んでくださったあなたを少しでも、ほんの一瞬でも「ァ」って、キモチ良くできたなら幸せです。何かピンとくるものを感じて本書に腕を伸ばしてくださったあなたを、きもちよくすることに失敗した本作であったならば、期待したのに失望させられた男を捨てるような感覚で「下手クソッ! !」って床に投げ捨ててくださいね」(著者あとがきより)

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LiLy

作家。1981年、横浜生まれ。NY、フロリダでの海外生活後、上智大学卒。音楽ライターを経て2006年デビュー。女性の共感を呼び圧倒的な支持を受ける。小説『オンナ』(幻冬舎文庫)、エッセイ『目もと隠して、オトナのはなし』(宝島社)など著作多数。現在は雑誌「オトナミューズ」「VERY」「Numero TOKYO」にて連載。「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日)に審査員として出演中。

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