1. Home
  2. 生き方
  3. カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~
  4. ユーザー対象を明記することの必要悪につい...

カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2019.06.12 更新

ユーザー対象を明記することの必要悪についてカレー沢薫

別の仕事で「女性向けゲーム雑誌」数冊に目を通すことがあった。

その前に「女性向けゲーム」というのは何かというと、メーカーが「女性向けゲームです」と言っているやつのことだ。

今謎の外国人が「そこのお前! レモン一個に含まれるビタミンCはレモン一個分だぜ」と言っている画像がカットインしてきたかと思うが、個人的にはそれが一番間違いのない解釈だと思っている。

 

作り手がそんなことは一言も言ってないのにイケメンがたくさん出てくるから、これは腐女子向けだとか、この映画はマッドがマックスで怒りがデスロードだから完全に男向けで、これが好きだと言っている女は彼氏の影響などと言ってしまうのは戦の元である。

今では明らかに女性向けだが「女性向け」とは明言せず「アイドル育成ゲーム」などと言っているゲームもあるが、最初から「女性向けシュミレーションゲーム」と銘打って出しているゲームは今でも珍しくない。

このジェンダーフリーが叫ばれる世の中において、性別を限定するような物言いはあまりよろしくないのではないか、と思われるかもしれないが、その商品が一体誰に向けて作られたものか、というのは顧客にとって重要な情報である。

そこを「平等」に考慮して全商品の説明が「幼女からジジイまで使えないことはないです」と書かれてしまったら買い物が完全な運ゲーになってしまう。
これは服のサイズのようなものであり、それを書いてもらわないと「合わない物を買ってしまう」率が上がってしまうので、ある程度対象者を示してくれるというのは、顧客にとっても助かることなのだ。

また作り手としても、誰がユーザーかを全くイメージせずに作るというのは問題である。
そんなことをしたら、ウオシュレットが顔面にヒットすることになってしまう。
あれは「平均的位置にアナルがある人」をイメージして作ったからこそ、あれだけの精度を誇っているのだ。

しかしあくまでどちらかというと「女性向け」であり「女性限定」と言い切っているわけではない。
アナルだって、神が「ウンコ向け」に作った物だが、我々は平気で別の用途に使ってしまっている、それと同じように、誰向けか書かれてても、それに臆せず興味があればやってみてよいものなのだ。
「向け」というのはその程度の表示である。

では、女性向けゲームと銘打たれているものがどのようなゲームかというと、やはりイケメンが山盛り出てくるゲームである。

しかし、それらのゲーム全てが所謂「乙女ゲー」かというとそうではない。
では何が乙女ゲーになるかというとメーカーが「乙女ゲー」と言っているやつのことだ。

また謎の外国人が横切ったと思うが、そうとしか言いようがない。
「乙女ゲー」は俗称であり、正確には「女性向け恋愛ゲーム」などと書かれるのだが、メーカーがジャンルに「恋愛」という文字を入れていない限りは、どれだけ恋愛を臭わせる表現があっても「乙女ゲー」と言わない方が身のためである。

しかし「女性向け恋愛ゲーム」だけだと「BL」の可能性もあるのだ。
この女性向け恋愛ゲームにおける「乙女」や「BL」の表示は、食品における「卵、小麦、乳製品」などの表示に相当する。

つまり表示を忘れると「死人」を出す恐れがあるということだ。

そんなの絵を見ればわかるだろう、と思うかもしれないが、小生は高校時代、男女物の恋愛小説だと思って買ったものがBL小説だったことがある、表紙の美少女に見えた人物は美少年だったのである。
私は「それもまた一興」と思って全部読んだが、人によっては病院に担ぎ込まれることになる。

だが最近多いのは、乙女でもBLでもない「女性向けゲーム」である。
イケメンがたくさん出て来てくるが恋愛要素がなかったり、あくまで匂わせ程度で明確な恋愛描写はないゲームのことだ。

中途半端ではないかと思うかもしれないが、その分間口が広くなる。
BLが苦手な人はBLゲーをやらないし、逆に乙女ゲーが苦手な人は乙女ゲーをやらない。
「乙女」「BL」と明記することで、それだけ顧客を絞ることになるため、そこを断言しない方が広く客を呼び込めるのである。

ただそういうゲームは下手をすると前述の通り「中途半端」な印象にもなってしまう。
乙女ゲーマーからすると、そのような女性向けゲームはモノ足らず「ガールズバー行くぐらいならピンサロ行くわ」という感じで、乙女ゲーの方に流れて行きがちだ。

だが、乙女ゲー、またはBLゲーはやらないが、女性向けゲームを乙女やBL視点で見るのが好きという人もいる。

ものすごく遠回りしているように感じるかもしれないが「公式が明確に描かない分、こちらの妄想できる余地があって良い」と思う人もおり、むしろその妄想こそが「トロ」だと思っている人もいる、それを公式に全部書かれてしまっては、商売あがったりなのだ。

メーカーも一応は対象者やテーマのようなものを表示してはいるが、それは「メーカーお勧めのレシピ」でしかない。

それ通りに食っても美味いとは思うが、自分の好きなように味付けして食っても良いのである。

関連キーワード

関連書籍

カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP