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人生は理不尽

2019.03.09 公開 ツイート

モノにいちいちよけいな想いを残さない 佐々木常夫

「期待しすぎずに、楽観でいこう」元・東レ経営研究所社長の佐々木常夫さんが晩年について語った『人生は理不尽』(小社刊)。発売即重版の話題作です。佐々木さんは東レ時代、肝臓病とうつ病を患い自殺未遂を繰り返した奥さまと自閉症のご長男を支えながら、必死に取締役にまで上りつめるも突然、左遷人事を言い渡されてしまいます。なぜ私が…そんなやりきれない想いに悩みますが、「なんとかなるさ」と前を向き『ビッグツリー』『そうか、君は課長になったのか。』とベストセラーを著しました。そんな佐々木さんも74歳。死を意識するようになった今、何を想うのか。人生の暗夜に苦しむ全ての方に贈るメッセージです。

『人生は理不尽』(1月25日小社刊、1200円+税、B6判変形260頁)

「コレクション」はしない

私は所帯を持って以後、転勤などで引っ越しを繰り返しました。

荷物が多いとたいへんなので、引っ越しのたびに不要なモノを捨て、よけいなモノを買わないようにもなりました。私がモノに執着しないのは、度重なる引っ越しのおかげもあるかもしれません。

唯一本だけは捨てなかったためかなりの分量になりましたが、これも次の引っ越しでは半分以上捨てるつもりです。今は古本も安く手軽に入手できる。必要になったらまた買えばいい。そう思うことにしたのです。

もっとも、何でもかんでも使い捨てればいいと思っているわけではありません。家具や電化製品など毎日長く使うものは、耐用性や機能性を重視して買います。使い捨てにしろ長く使うにしろ、モノは実用性を考えるのが第一です。

ところが、人は得てしてモノに実用以外の価値を見出しがちです。思い出、思い入れ、ステイタス……などです。

(写真:iStock.com/beer5020)

たとえば私の亡くなった叔母は、よくモノを通して思い出を語っていました。「これはあのときもらったもの」「あれを買ったときは確かこういうことがあって」など、過ぎ去りし過去を細かく振り返るのです。

正直、私はこういう気持ちがあまりよくわかりません。

なぜそんなに過去の話ばかりするのか。どうして昔のモノをそこまで懐かしむのか。それよりも今を考えたほうが有意義ではないか。これから何をするかを話したほうが楽しいではないか。

年をとっても、人は過去ではなく未来を向いて生きるべき。過去のモノや思い出にとらわれてばかりいてはいけない。そう思うのです。

何も思い出が無意味だとは言いません。誰しも捨てられない思い出の品の一つや二つはあって当たり前です。でも思い出を懐かしむあまり、使いもしなくなった昔のモノをあれこれとっておくのはいかがなものでしょうか。

モノは使ってこそ価値があるのです。使わなくなったモノに思いだけを残してみてもなんの意味もありません。

だから私はコレクションもしません。集めて楽しむという気持ちも皆無です。高価な品物を集めることで心が満たされる人もいるのかもしれませんが、「それの何が楽しいのだろう」と思ってしまいます。

モノはステイタスではなくいかに使いこなすかが肝心。実用第一と心得ていちいちよけいな思いを残さない

そのほうが残された時間を有意義に使えるのではないでしょうか。

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人生は理不尽

「期待しすぎずに、楽観でいこう」元東レ経営研究所所長の佐々木常夫さんが、壮絶な半生から学んだ人生晩年の哲学『人生は理不尽』(1月25日、小社刊)より一部公開。人生の暗夜は本書で照らせ!

 

~うつ病の妻、自閉症の長男を支えながら死に者狂いで辿り着いた東レ取締役。しかし、妻が2か月後自殺未遂。そして突然の左遷――。会社のために頑張ったのに、なぜ報われないのか。なぜ自分や家族が、こんな目に遭わねばならないのか。苦悩の中で、私は物事を客観的に見るコツを身につけました。それが「期待するのをやめる」ことです。人生は時に理不尽です。しかし理不尽から学ぶものも決して少なくないのです。~

 

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佐々木常夫

1944年、秋田市生まれ。株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役。69年、東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社に入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活を送る。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建などさまざまな事業改革に多忙を極めたが、いかにワークライフバランスを保つかを考え、定時に帰る独自の仕事術を身につける。2001年、東レ株式会社の取締役に就任。03年より東レ経営研究所社長。何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観をもち、現在経営者育成のプログラムの講師などを務める。内閣府の男女共同参画会議議員、大阪大学客員教授などの公職を歴任している。『そうか、君は課長になったのか。』(WAVE出版)、『40歳を過ぎたら、働き方を変えなさい』(文響社)、『運命を引き受ける』(河出文庫)など著書多数。

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