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サカナとヤクザ

2019.01.11 更新

21世紀日本の最後の秘境にようこそ鈴木智彦

(写真:iStock.com/AlexRaths)

「まだ読んでないの?」と話題のノンフィクション、鈴木智彦さんの『サカナとヤクザ――暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)の試し読みを4回にわたってお届けします。第1回は「はじめに」から。

記事の終わりに、鈴木智彦さんトークイベントのご案内があります。

*   *   *

密漁とはルール破りの漁業である。

海水浴客が磯のサザエやアワビを獲っても、漁師が許可を受けてない魚種を捕獲しても、禁漁期間を守らなくても、規定サイズ以下の稚魚や稚貝を採捕しても、そのいずれもが密漁になる。一部には暴力団が深く関与している。それは公然の秘密だった。

最初に取材したのは三陸のアワビである。津波が街を破壊した隙に、暴力団は高価な海産物を、根こそぎ奪い取っていた。

北海道に渡って取材すると、有名な観光朝市が泥棒市になっている事情がみえてきた。黒いダイヤと呼ばれるナマコを狙う密漁団たちは、深夜、素潜りの限界ラインである水深40メートルまで潜り、毎年、数人が行方不明となり遺体すら見つからない。東端の根室では北方領土海域にレポ船や特攻船が出現し、かつて密漁が街を支えていた。

首都圏でも暴力団は漁業に食い込んでいた。7年連続水揚げ日本一を誇る千葉県・銚子港は漁業組合のボスが暴力団だった。移転問題で揺れた築地市場で働く年配者なら誰もが、暴力団と市場の蜜月を知っているだろう。

夏の風物詩、ウナギの稚魚であるシラスは、水産庁も認めるほど暴力団に牛耳られ、密漁が横行していた。絶滅危惧種に指定されたいまも、その3分の2が密漁・密流通である。いまどき、これほど黒い産業は他にない。

密漁を求めて全国を、時に海外を回り、結果、平成25年(2013年)から丸5年取材することになってしまった。関係者にとって周知の事実でも、これまでその詳細が報道されたことはほとんどなく、取材はまるでアドベンチャー・ツアーだった。

ライター仕事の醍醐味は人外魔境に突っ込み、目の前に広がる未知なる風景を切り取ってくることにある。そんな場所が生活のごく身近に、ほぼ手つかずの状態で残っていたのだ。

加えて我々は日々、そこから送られてくる海の幸を食べて暮らしている。暴力団はマスコミがいうほど闇ではないが、暴力団と我々の懸隔を架橋するものが海産物だとは思わなかった。

ようこそ、21世紀の日本に残る最後の秘境へ──。

*   *   *

この続きは書籍『サカナとヤクザ――暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)で。

1月26日(土)14時より、幻冬舎イベントスペースにて鈴木智彦さんのトークイベントを開催します。詳細・お申し込みはこちらのページからどうぞ。

鈴木智彦『サカナとヤクザ――暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』

アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大多数が実は密漁品であり、その密漁ビジネスは、暴力団の巨大な資金源となっている。その実態を突き止めるため、築地市場への潜入労働をはじめ、北海道から九州、台湾、香港まで、著者は突撃取材を敢行する。豊洲市場がスタートするいま、日本の食品業界最大のタブーに迫る衝撃のルポである。

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鈴木智彦

1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。週刊誌、実話誌などに広く暴力団関連記事を寄稿する。『サカナとヤクザ』(小学館)、『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文春文庫)、『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)など著書多数。

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