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ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう

2018.08.25 公開 ポスト

東大寺――怒るのは四天王さまに任せて、私はニコニコ生きていこうはな

 知る人ぞ知る「仏像マニア」として知られる、タレントのはなさん。好きがこうじて、大学時代は仏教美術を学んでいたそう。そんな彼女の「仏像愛」がぎゅっと詰まった1冊、それが『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』です。

 東大寺、法隆寺、興福寺、東寺、三十三間堂……お気に入りの仏像がきっと見つかる、京都・奈良お散歩ガイド。ここでは本書の一部をご紹介したいと思います。

 もうすぐ観光シーズン。ぜひみなさんも、本書を片手に出かけてみては?

(本書より)

「猫背仲間」の日光さま、月光さま

 私は人が歩く姿と、立った時の姿勢を見ているのがとっても好き。「綺麗に歩く方法を教えてください」と聞かれることが多いのですが、私は一度も「モデル歩き」を要求されたことがなかったので、ふだんと同じようにステージの上を歩きました。モデルとして洋服を綺麗に見せるため、体に負担をかけないための歩き方や立ち方は自分が意識的に工夫しても、やっぱり自分が持っている「体の線」は変わりません。「私の歩きはひょこひょこしているし、走り方もどこか間が抜けている。首は前に出ているし、ちょっと気を抜くと肩が丸まってくる……それでも遠くで立っているだけでみんな「私」だと確認することができる。

 それと同じように私も、友達や家族の歩き方や姿勢でその人を確認することができる。そんな私は、背筋を反り返し、自信に満ち溢れた姿勢を見ているよりも、少々猫背気味の後ろ姿を見ている方が、ホッとしてしまいます。

 人間の温かみや哀愁が伝わってくる背中……日光さまと月光さまの背中が「猫背」だったことに気がついた時も、ホッとしてしまいました。私たちの呟きに、体全体で応えてくださっている、やわらかく円を描く後ろ姿。人間と同じように、仏さまも色々な物語を背中に背負っているのかもしれませんね。

 正面に向かう途中、私は、斜め45度の角度から飛び込んできた月光さまのスマイルに思わずニコッ、とスマイル返し。そして心の中までほんわか、宇宙の光を浴びながら、畳のベンチへと戻っていきました。

 最後に法華堂の賑やかな仏像のパレードを見上げると、肩のこりも、疲れも、緊張感も、一気に抜けていく……法華堂は肩こりに効く、特効薬なのです。

iStock.com/MrNovel

 その足で、同じ東大寺の境内にある戒壇院へと向かいました。

 扉を開けると、リングの上でポーズを決める四天王さまが待ちかまえていた。数年前、上野に出張で来ていた時の印象とは違う……あの時は確か、ムーディーなイエローライトがあたる会場の中央ステージで、脚光を浴びていました。どんな悪も寄せつけないほど怖い姿で登場しているというのに、何故か人がわんさか集まってくる。

 それに比べ、自然光が溢れる静かな戒壇院に戻ってきた4人は、明るく、生き生きとして見えました。格闘技のお稽古中ですか? ムニュ~、と踏み潰される邪鬼を相手に、ずっと怖い表情を浮かべ ている四天王さま。こんなに良いお天気なのに、いつも怖い顔をしているのね……でも、どんなに怖い顔をしていても、その場で怒鳴ることも、喚き散らすこともない。動かないのをいいことに、私は吹けない口笛を心で吹きながら、四天王さまにそっと近づいてみた。

 口角を思いっきり下げる持国天さま。みけんにシワを寄せ、鼻息が荒いのは多聞天さま……ウエストのくびれや、よろいから浮かび上がる筋肉が激しく波を打つ。静かな怒りをあらわにするのは広目天さま……その三白眼は、遠くを見つめながらやっぱり、怒っている。広いおでこはシワができやすいらしく、その遺伝子を受け継いだ私はよく母に「みけんにシワを寄せると、痕になるからやめなさい!」と注意されるのですが、この四天王さまはもうすでに手遅れでした……白い歯を剥き出しにして、目を大きく開く増長天は、怒りを全身全霊で表している。その熱意は認めても、静かに怒り続ける広目天と多聞天の「怖さ」には負けるような気がした……

 一気に爆発するか、ジリジリ怒り続けるか。なんとなく、言葉がない怒りの方が怖いような気もする。う~ん、どっちの方が怖いかな?

 そんなことを悩んでいたら、自分までみけんにシワを寄せていたことに気がついた。いけない、いけない! 怒るのは、四天王さまの4人に任せて、私はニコニコな人生を歩んでいこう……と、秋の雲が流れる青い空の下で、心にそう決めました。

◇ ◇ ◇

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はな

1971年生まれ。インターナショナルスクール時代から雑誌などでモデルを始め、CM、エッセイの執筆など幅広く活躍中。上智大学比較文化学科卒業。英語、フランス語など語学が得意。趣味はお菓子作りに仏像鑑賞。

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