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ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう

2018.08.26 更新 ツイート

三十三間堂――まるで万華鏡のよう!1001体の千手観音さまたちはな

 知る人ぞ知る「仏像マニア」として知られる、タレントのはなさん。好きがこうじて、大学時代は仏教美術を学んでいたそう。そんな彼女の「仏像愛」がぎゅっと詰まった1冊、それが『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』です。

 東大寺、法隆寺、興福寺、東寺、三十三間堂……お気に入りの仏像がきっと見つかる、京都・奈良お散歩ガイド。ここでは本書の一部をご紹介したいと思います。

 もうすぐ観光シーズン。ぜひみなさんも、本書を片手に出かけてみては?

(本書より)

全身がびっくりする「三十三間堂体験」!

 三十三間堂の駐車場には学校名を明記した観光バスが何台も並び、入口の下駄箱は学生の靴でいっぱいでした。なんだか学生に戻ったような気分で靴を下駄箱に入れ、横目でおみやげ品をチラチラ見ながら、1001体の千手観音さまが待つ本堂まで順路を歩いていきました……

 凄まじい光景に圧倒された私は、乱れのない列を作る観音さまを間近で見たくて、近づきました。横、斜め、正面……どこから見ても、仏さまの金の体は綺麗な直線を描き、その列はどこまでも続いていくように見えるのです。

 正面に回り込み、仏さまの波が押し寄せてくるのを感じる場所へと移動していきました。細かい部分を見るよりも、この空間を体で感じる。全身がびっくりする「三十三間堂体験」とは、このことだったのですね……広い広い本堂に立ち並ぶ1001体の千手観音さまは、私たちと向き合いながら静かに合掌しています。視界に収まりきらない数の仏さまを、端から端まで首で追っていきました。自分の指で望遠鏡を作り、その中から数体を円形に切り取り、覗いてみました。まるで、万華鏡を覗いているような気分! ひとり遊びが得意な私は、ここでまたひとつ楽しい遊びを発見してしまいました。

 全体図から一体一体にスポットを当てていくと、それぞれの顔が違うのが分かっていきます。その中でも「誰かに似ているな……」と思う仏さまは、「いとしい故人」、もしくは「好きな人」の姿を表していると言われています。まずは愛するペットの故千年さんの姿から探してみようと、双眼鏡を覗いてみました。今は亡き、うさぎの千年さんに似た観音さまよ……的外れのスポットに集中しているうちに、頭がクラクラしてきたので探すのを諦めました。

 目の前に広がる1001体の千手観音さまのうち、1249年の大火災から救い出されたのはたった124体だったそうです。残りは後から復興されたのですが、仏師の名前がわかっているのは273体だそうです。

 体の横からニョキニョキ生える手の数は40本、合掌している2本を入れると42本でもかなり多い方ですが、名前通り1000本持っている方は日本に数仏しかいません。1本の手が25の世界を救うことになっているので、25の世界×40本の手=1000の世界を救うことになります。

 世を救うためのグッズ、「持物」を持つ観音さまの手には「目」がついているそうです。

 我々を救ってくださる気満々の仏さまが大集合しているこの三十三間堂の中にいると、人間が抱える悩みや、救いを求める気持ちが波のようにのしかかってきます。心配ばかりかけてごめんなさい……あれもこれも使って人助けをしている、忙しい千手観音さまの姿を思い浮かべると、なんだか申し訳なくなってきました。

 自分の悩みは人間界で解決しよう……そうだ、甘えてはいけない。ここにいる観音さまが、ニョキニョキ、ニョキニョキ、40本の手を操りながら一斉に世を救うのは、とても大変です。

iStock.com/Robert van’t Hoenderdaal

 千手観音ワールドから離れ、2、3歩引いた場所から、このステージを眺めてみることにしました。前列には、風神&雷神さま、そしてインド出身の二十八部衆。彼らは千手観音さまを守るために天からやってきた神さまです。計算すると1人平均、100(28+2)=約33体の観音さまを担当することになります。こんな大役を果たすことになった彼らの表情は、とっても生き生きして、輝いている。目がウルウル輝いているのは、その仏さまが鎌倉時代以降に作られた証。角度によって、埋め込まれているガラス玉が光るのです。命が吹き込まれた仏さまは、いつまでもエネルギッシュな守護神としてこの三十三間堂を守り続けています。

 嵐の中、渦巻く雲の上から飛んできたのは風神さまと雷神さま。後ろで静かに合掌している千手観音さまに対して、彼らの必死にがんばっている姿はどこか「人間っぽい」。

 私もがんばろう……またもやがんばる気満々にさせられた私は、二十八部衆の働きぶりを見にいくことにしました。

 一見、1001体の千手観音さまをバックコーラス隊に率いる二十八部衆。彼らは独自の守り技を精魂こめて披露してくれました。

 頭に馬をのせた神母天(インド名はハリティー)は、みけんにシワを寄せながら小さなシンバルを鳴らし、大きな鳥の姿をした迦楼羅王(インド名はガルダ)はピーヒョロ、ピーヒョロ、ピーヒョロロ、と可憐な指の動きに合わせて笛を吹く。腰を入れ、足でリズムを取り、鼻から大きく息を吸って、ピーヒョロロ。しばし鳥の格好をしたインド出身の神さまのノリノリな演奏に耳を傾けていると……「ちょっとそこ!」、向こうから首の筋を立てた仲間の摩和羅女(インド名はマハーバラ)に呼び止められてしまいました。

 さらに、海外へ出張する回数が一番多く、少々やつれ気味な婆藪仙人(インド名はヴァス)。体から浮かび上がる筋、シワ、骨……開いた口から覗くすきっ歯や、遠くを見つめる視線は、私が描いていた「仙人」のイメージを超えた「仙人」の姿をしていました。この神さま、実は取り外しができる頭巾をかぶっている……ここではいちばんのおしゃれさんだったのです!

 蛇を頭にのせ、ギターを弾く5つ目の神さまや、血管が破裂する寸前まで怒っている筋肉質の神さま、人間の本性を口から剥き出しにする神さま……三十三間堂の舞台に立つ1001体の千手観音さまは、とっても個性的な神さまに見守られていました。

◇ ◇ ◇

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はな

1971年生まれ。インターナショナルスクール時代から雑誌などでモデルを始め、CM、エッセイの執筆など幅広く活躍中。上智大学比較文化学科卒業。英語、フランス語など語学が得意。趣味はお菓子作りに仏像鑑賞。

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