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地方から見えるもの

2013.12.08 公開 ツイート

第2回

シャッター商店街が変われない2つの理由 山崎亮


固定資産税も商店街の動きを阻む要因
 土地の税制問題も根深い。


 息子たちが商売を継がずに出て行き、お爺ちゃんも引退して店の建物だけ残っているところがある。築年数がたてば店は当然古くなる。建物がひしめき合う商店街で、老朽化した店舗が隣の店にバタンと倒れれば、損害賠償しなければならない。そうならないよう店の構造補強をするか、更地(さらち)に戻す必要がある。しかし店は使わないのだから補強したくない。更地にするという選択肢がいちばんいい。


 ところが更地にすると固定資産税が上がってしまうのだ。更地にすると、次の開発の準備をしたとみなされて土地の価値が上がり、税金が上がる。次の借り手が決まるギリギリまで建てておいたほうが税金が少なくて済むため、十数年も店を閉めたまま放っておくことになる。これでは、シャッター商店街に新しい動きはなかなか出てこない。


 こうした問題を解決するには、たとえば「シャッター税」ではないが、活用していない店舗に、より高い税金をかけていく必要があるかもしれない。家賃を下げてでも誰かに借りてもらったほうが高い税金を払わずに済むのなら、空き店舗は稼働し始めるかもしれない。稼働し始めたら税金を元に戻すというくらい、思い切って税制を変える必要があるといえよう。


 コミュニティデザインの仕事は、地域に住む人と人をつなぐ仕事が中心だが、実はこうした政策や法律を決める「国」と、お父さん・お母さんたちが頑張る「地域」をつなぐことも大切だと思っている。地域だけで力を合わせて何かしようとしても限界がある。古い枠組みを変えてくれたらもっと現場は動けるのに、と思う場面も少なくない。国が仕組みを変えれば、県や市町村に新しい仕組みが適用される。その仕組みがあれば、中心市街地の店主たちと市役所が一緒になって商店街を変えていけるかもしれない。現場で活動する市民と、制度や法律をつくる行政職員とをつなぐことも大切なのだと感じる。


 地域の人たちの商店街に対する温かい視線も大切だろう。「商店街が元気になるのを私たちは見てますよ」、「かわいくリノベーションした店が増えれば、みんな商店街に買い物に行きたいと思っているんですよ」、ということを商店主たちに伝えていくこと。こうした地道なコミュニケーションも、商店主たちのやる気を醸成するために必要なことだろう。


 中心市街地が元気になれば、結果的に地価があがり、まち全体の価値があがっていく。そのことをどれだけの人たちと話し合って理解しあえるかが、今後も重要になっていくことだろう。

 

(第3回は2014年1月8日頃公開予定です)


 

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地域の問題解決に携わるコミュニティデザイナーが見る日本

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山崎亮

1973年愛知県生まれ。コミュニティデザイナー。studio-L代表。京都造形芸術大学教授。東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科長(2014年4月開設)。地域の課題を地域に住む人たちと考え、解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、市民参加型のパークマネジメントに関するプロジェクトが、日本各地で多数進行中。『コミュニティデザインの時代 自分たちで「まち」をつくる』(中公新書)他、著書多数。現在、NHK総合「NEWS WEB」ネットナビゲーターを務める。

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