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知っておきたいお葬式のウラ側

2018.04.17 更新 ツイート

意外と知られていない、安価で納骨する方法島田裕巳

 

(写真:iStock/TayaweeSupan)

自分や親のお葬式。できるだけ納得がいくものにしたいと思いませんか?
実は、住む地域や知識のある・なしによって、葬式の費用自体もかなり違ってくるのです。宗教学者、島田裕巳さんの最新刊『
葬式格差』より、今どんどん広がりつつある「格差」をキーワードに日本人の葬り方を考えます。

骨仏になることが功徳なら、安価での納骨はなおさらありがたい

 日本の火葬率はほぼ100%で、家族が亡くなれば、必ず遺骨が手元に残される。墓があれば、そこに納骨すればいいのだが、墓がない人、あるいは家は、かなりの数にのぼる。
 日本消費者協会の「第9回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」では、家に墓があると答えた人は62・7%で、ない家は35・6%という結果が出ている。墓がない家はかなり多いのだ。
 東京都生活文化局が2015年11月に行った「東京都の霊園」をテーマとしたインターネットのアンケート調査では478人の回答者のうち、都内に墓があるのが27・6%、他の道府県にあるのが34・3%、ないが38・1%という結果が出た。他の道府県にあるが一番多いのは、地方から出てきた人間がかなりの部分を占める東京ならではの傾向だろうが、墓がない人、家が3分の1以上を占めている。
 たとえ、墓があったとしても、納骨にはそれなりの費用がかかる。寺院に墓地があるなら、お布施をしなければならないし、業者にも数万円支払う必要がある。自分で墓を開けて、納骨するというわけにもいかない。墓があっても、納骨の費用を負担できない、負担したくないという家もあるだろう。
 となると、手元に遺骨があるものの、それをどうしたらいいか分からなくなる場合がどうしても出てくる。そのとき、骨仏にするということになれば、最高でも3万円で済む。命日や月命日に参拝したときには、なにがしかのお布施をするだろうが、その額は参拝する側が決められる。
 もし、東京周辺にも骨仏の寺があり、そこに納骨する習慣が確立されていれば、手元に遺骨を抱えて困るということはなくなる。遺骨は、合葬、合祀されることになるわけだが、立派な仏になって残るのだ。
 一心寺によれば、昔から故人の遺骨や遺髪を寺に納め、供養するしきたりがあったという。一方で、仏像を造立してそれに礼拝することは、善根であり、功徳であるとされてきた。骨仏は、それを拝めば故人を供養すると同時に、仏を礼拝供養することになり、仏への崇拝と先祖供養の精神が融合したものになっているというのだ。
 骨仏が功徳になるならば、納骨する側にとってはありがたい。たんに安いから骨仏にしてもらうのではなく、供養の形態としてもっとも好ましいものであるから、それを選択した。納骨する側はそれでよかったと考えることができるのだ。
 こうした骨仏が生まれたのも、大阪では、長い時間をかけて独特な葬送の文化が確立されてきたからだ。しかも、その文化を担うのは一心寺の骨仏だけではない。
 一心寺は、JRや大阪市営地下鉄の天王寺駅や近鉄線の阿倍野橋駅から歩いていける場所にあり、そのすぐ近くには、四天王寺がある。

大阪・四天王寺は、たった1万円で納骨できる

 四天王寺は、聖徳太子が建立した7つのお寺の一つとされ、創建は6世紀終わりに遡る。聖徳太子が実際に創建にかかわったのは、法隆寺と四天王寺であるとも言われており、その点で四天王寺がいかに由緒正しいお寺であることかが分かる。
 近代までは立派な伽藍を誇っていた。だが、1934年の室戸台風と、1945年の大阪大空襲で、伽藍は焼失してしまった。
 現在の伽藍は戦後になって再建されたもので、形式としては飛鳥建築の様式を再現してはいるものの、鉄筋コンクリート造りで、かつての姿を想像することが難しいものになっている。
 四天王寺は、大阪平野を南北に延びる上町台地の上に建つが、中世には、そのすぐ西側まで海が迫っていた。そのため、四天王寺は、海に沈む夕陽を眺めるのに絶好の場所とされていた。その光景を眺めながら西方極楽浄土の姿を思い浮かべる「日想観」という修行の方法があり、それが実践されていた。途中で途絶えたものの、2001年秋から復活されている。
 浄土との結びつきが強い四天王寺には、境内の北に墓地がある。そこは、1区画(90センチ×90センチ)で500万円(管理料は年間1万2000円)と、都会にあるだけにかなりの費用がかかる。
 一方で、境内の西側には、納骨総祭塔というものが建っている。これは、納められた骨を供養塔の下に合祀するものである。納骨した当初の段階では、年に3回ある納骨総祭法要(2月末頃・6月末頃・10月末頃)まで、阿弥陀堂の西にある納骨堂に仮安置し、法要後に合祀する。供養塔は石の五輪塔で、年を経ると、新しいものが建てられる。
 納骨のための回向料は1万円からで、個別に回向してもらったとしても3万円からで済む。個別に回向してもらえなくても、供養自体はしてもらえる。合祀されるということは、他の人の骨と一緒に葬られるということである。
 合祀であるにしても、1万円からというのはずいぶんと安い。そのように考える人は少なくないであろう。
 しかも、大阪市の火葬料は、第1章で見たように市民なら1万円である。これを反映し、大阪の葬祭業者の直葬の料金は10万円を切るところがかなりある。大阪では、健康保険から埋葬料が5万円出るので、直葬にして、四天王寺に納骨すれば、5万円程度で故人を聖徳太子ゆかりの寺に葬ることができるのだ。

東京からでも可能! 西本願寺、東本願寺、知恩院でも本山納骨が可能

 関西地方には、多くの宗派の総本山がある。浄土真宗の西本願寺と東本願寺、浄土宗の知恩院、天台宗の延暦寺(比叡山)、真言宗の金剛峯寺(高野山)である。そうした総本山の多くでは、「本山納骨」ということが行われている。本山に遺骨を持っていき、そこに納めるのだ。
 西本願寺の場合には、京阪電車の清水五条駅の近くに大谷本廟がある。これは、西大谷とも呼ばれるが、ここで浄土真宗本願寺派の信者(門徒と呼ばれる)が納骨できるようになっている。
 大谷本廟には、宗祖である親鸞の墓所である祖壇があり、その前には礼拝するための明著堂が建っている。納骨は、「祖壇納骨」と呼ばれ、親鸞の墓所の近くに合葬されることになる。
 納骨のための「懇志」(布施)は、小型容器で3万円以上、それより大きな容器で5万円以上である。
 小型容器は、骨壺を入れる骨袋を含め、高さ15~16センチ、幅9センチまでとされている。これは、前の章でふれた2・3寸の骨壺だけがそれに相当する。
 なぜ2・3寸の骨壺が存在するのか、これでその理由が分かる。この小さな骨壺は、本山納骨を前提としたものである。関西では、火葬したときに、大小2つの骨壺を用意し、2・3寸の小さな骨壺は本山に納骨し、それよりも大きいほうは墓に納めることが広く行われている。これは、「分骨」と呼ばれる。
 ただ、分骨しないで、遺骨全部を納骨することも可能で、そのときは5万円以上の懇志が必要になる。
 東本願寺、真宗大谷派では、円山公園の南に大谷祖廟がある。こちらも納骨されると合葬される。したがって、いったん納骨してしまえば、返還されることはない。
 こちらは、供養の形によって礼金が異なっている。一年に一度、彼岸会に供養してもらうものが4万円以上で、それがなければ2万円以上である。年に12回毎月の命日に供養してもらい、案内状も受け取る場合には10万円以上となる。
 大谷祖廟でも、真宗大谷派の門徒でなければ納骨ができず、申し込みをする際には、書類に所属寺院を記入しなければならない。
 浄土宗の知恩院では、誰もが納骨できるとされ、浄土宗の信者である必要はない。なお、納骨には4万円がかかる。
 真言宗の金剛峯寺では5万円以上とされる。天台宗の延暦寺の場合には、本山納骨のようなやり方はとっていない。関西ではないが、福井にある曹洞宗の総本山、永平寺も、そこは禅の道場であり、本山納骨は行っていないが、分骨は可能である。同じ禅宗の臨済宗は、多くの派に分かれていて、どこも規模が小さいので、浄土系の宗派のような本山納骨はやっていない。ただし、納骨自体はできるところもある。
 関東には、宗派の総本山としては日蓮宗の久遠寺と、時宗の遊行寺があるが、遊行寺では本山納骨にあたるやり方はとっていない。
 久遠寺では、5万円の供養料で納骨ができるものの、それは、あくまで分骨されたものであり、全骨だと200万円もかかる。実質的に関東には本山納骨の制度はないと考えていいだろう。
 関西圏の本山納骨では、2万円から5万円で、遺骨をすべて本山に納めることができる。関西では部分拾骨なので、もともと骨の量が少ない。そのことも、骨仏や納骨が安価で、容易なことに結びついている。
 もちろん、本山納骨は関西に住んでいなくてもできる。東京に住んでいる浄土真宗の門徒が本山納骨をしようとすれば、大谷本廟なり、大谷祖廟まで行けばいい。知恩院なら、宗派を問わないわけだから、誰もが納骨できる。
 ただ、東京から京都へ行くには、交通費がかかる。それに、東京の人間は、こうしたやり方があることをほとんど知らない。知らなければ、本山納骨をしようとはしない。
 ここにも、東と西、関東と関西の間での葬送文化の違いということがはっきりと示されている。

寺とのつながりが希薄な関東の人間は必然的に葬り方に金がかかる

 関西には、独特の葬送文化が確立されており、状況に応じてさまざまな方法を選択することができる。
 ところが、東京を中心とした関東では、結局のところ、独自の葬送文化が確立されることはなかった。17世紀のはじめに江戸幕府が開かれ、それから400年以上にわたって、東京は日本の中心に位置してきたにもかかわらずである。そこに納骨格差が生じる根本的な原因がある。
 私は一時、NPO法人「葬送の自由をすすめる会」の会長をつとめていたことがある。この会は、それまで違法と見なされていた散骨(会では自然葬と呼ぶ)の実践を可能にした組織だが、会員の圧倒的多数は関東で、それに比較して、関西の会員の数は少なかった。
 関東の人間が、遺骨を細かく砕いて海や山に撒いてしまい、墓を造らない散骨を望み、それを実践することに熱心なのも、関東では、遺骨をどうするか、選択肢がかなり限られているからである。
 それに対して、関西では、数万円、場合によっては1万円で納骨が可能である。そもそも、火葬場で遺骨を引き取らない0葬だって容易に選択できる。
 関東では、さまざまな手段を選ぶことができず、遺骨を墓に埋葬しなければならないからこそ、散骨が魅力的な手段に映るのである。
 もちろん、本山納骨は、合葬であり、合祀である。納められた骨は、骨壺に入れて個別に供養されるわけではなく、他の人間の遺骨と一緒に葬られてしまう。
 関東の人間には、そうしたやり方に抵抗があると思われるかもしれないが、身近にそうした手段がないことが決定的である。
 最近では「送骨」というやり方が広がりを見せている。これは、お寺に遺骨を郵送すると、合葬し、供養してくれるというものである。費用は3万円から5万円で、戒名がつく場合には5万円というところが多い。その点では、本山納骨と変わらない。
 郵送でというのは、法律によって、郵便局を通しては遺骨を送れるが、宅配便では送れないことになっているからである。
 これも、墓がない、菩提寺がない家、あるいは個人が増えているからで、送骨してしまえば、後は一切費用がかからない。管理料など毎年支払う必要がないのだ。
 その点でも、本山納骨と変わらないやり方であるとも言えるが、本山納骨は分骨がもともとのやり方で、宗祖の元に葬られたいという信仰上の動機からはじまっている。
 ところが、送骨は遺骨全部を送ってしまうのが基本で、墓の代わりという性格が強い。信仰という要素は希薄である。
 関西には、そもそもお寺が多い。奈良や京都には、古代や中世から続く規模の大きなお寺がいくつもある。大阪にも、また他の関西地方にも、いくらでもお寺があり、一般の人たちの信仰を集めている。
 関西のお寺は、それぞれが特定のご利益を強調していたり、広く知られた祭や行事を行っていたりすることで知られる。
 ところが、関東のお寺では、そうしたところは少ない。ほとんどは檀家だけが法事や墓参りに訪れるところになっていて、一般の人が訪れるお寺はごく少ない。
 それでもよく知られているところとして、浅草の浅草寺や巣鴨の高岩寺(いわゆるとげぬき地蔵尊)、深川不動堂、それに増上寺があり、他にも西新井大師や新井薬師、高幡不動尊、高尾山の薬王院などがある。
 東京を中心とした関東で、葬送文化が十分な形で確立されなかったのも、仏教文化が発展しなかったことが大きい。それでは、東京やその周辺に生きる人々が、仏教とのつながり、お寺とのつながりを持とうとするようにはなってこない。
 そして、葬り方の選択肢も少なく、墓を造れば、相当な費用がかかる。関東で死ぬ、東京で死ぬということは、自動的に多くの金を必要とするということなのである。

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もっと詳しく知りたい方へ、4月24日(火)19時~、東京・幻冬舎イベントスペースにて、島田裕巳さんのお話が直接聞けるセミナーを実施します。
ご参加いただいた方にはもれなく最新刊『葬式格差』を一冊プレゼントいたします。

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島田裕巳 宗教学者、文筆家

一九五三年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著作に『日本の10大新宗教』『平成宗教20年史』『葬式は、要らない』『戒名は、自分で決める』『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』『靖国神社』(すべて幻冬舎新書)、『0葬』(集英社)、『死に方の思想』(祥伝社新書)、『戦後日本の宗教史』(筑摩選書)等がある。

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