1. Home
  2. 社会・教養
  3. 知っておきたいお葬式のウラ側
  4. 遺骨を引き取らなければお墓はいらない?

知っておきたいお葬式のウラ側

2018.04.15 更新 ツイート

遺骨を引き取らなければお墓はいらない?島田裕巳

(写真:iStock/taka4332)

自分や親のお葬式。できるだけ納得がいくものにしたいと思いませんか?

実は、住む地域や知識のある・なしによって、葬式の費用自体もかなり違ってくるのです。宗教学者、島田裕巳さんの最新刊『葬式格差』より、今どんどん広がりつつある「格差」をキーワードに日本人の葬り方を考えます。

骨を引き取らなくてもいいなら墓も必要なくなる

 拾骨する量が違うということは大きな意味を持つ。

 私は『0葬──あっさり死ぬ』(集英社文庫)という本を出しているが、そのなかで、火葬した遺骨を引き取らない「0葬」を提案している。遺骨を引き取らなくても済むのなら、それを墓に納める必要はなく、墓は要らないからだ。

 この0葬を実行に移すためには、火葬場のほうが、それを認めてくれなければならない。

 どの火葬場がそれを認めているのか、調べてみたことはあるが、これもはっきりしたことは分からなかった。葬祭業者でなければ、そこら辺りの事情は教えてもらえない可能性がある。

 ただ、全体に言えるのは、西日本の火葬場では、遺族が遺骨は要らないと言えば、火葬場のほうで処理してくれることが多いということだ。

 たとえば、私が一時会長をつとめていたNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の機関誌『そうそう』第2号には葬儀ライターの奥山晶子氏による「名古屋市八事斎場ルポ」が載っており、取材に応じた担当者は、次のように述べていた。

「部分収骨が圧倒的に多いですが、八事斎場では、部分収骨・全骨収骨・分骨に加え、お骨を全て受け取らないという選択も可能です。お骨を受け取らないというときには、『焼骨処分依頼書』を火葬当日に提出していただきます。提出することができるのは、喪主などの利用者や関係者に限定されます。あとでご親族などからクレームが来ましても対応ができませんから、必ず喪主となる立場の方から一筆いただくことにしています」

 名古屋も糸魚川─静岡構造線の西側にあり、西日本に分類される。これは、八事斎場に限らず、西日本の火葬場に共通して見られるやり方である。

 

 これに対して、東日本の火葬場では、一部、八事斎場と同じやり方をしているが、その数はかなり限られている。東京23区の民間の火葬場ではまったくできないし、市によっては、条例で遺族が遺骨を引き取るよう定めているところも少なくない。たとえば、札幌市は札幌市火葬場条例の第8条で、「火葬場で火葬炉を使用した者は、焼骨を引き取らなければならない」と定めている。

 日本で2015年に公開されたイギリス・イタリア映画に『おみおくりの作法』という作品がある。これは、引き取り手のない遺体の葬式を担当するロンドン市の職員の物語で、主人公のジョン・メイは、遺族を捜すという仕事にあまりにも熱心なため解雇されてしまう。

 この映画には、火葬した遺骨が出てくるのだが、それは細かく砕かれ、緑色のプラスチックケースに納められていた。それだけでも日本とはずいぶん違うが、遺体の身元が判明すると、主人公は遺骨を火葬場の敷地のなかに撒いていた。

イギリスを含めたヨーロッパでは、最近になって火葬の割合が増えている。これは、土葬のほうの費用が高いことが関係している。棺桶が豪華になり、その費用が嵩むのだ。火葬しても、骨上げのような儀式はなく、そもそも遺族や参列者は火葬には立ち会わない。火葬された骨は、遺族が希望すれば、後日引き取ることができるが、引き取らないケースはかなり多い。

 引き取っても、火葬場の散骨のためのスペースに撒いてしまうことも多く、自宅に引き取った場合も、さまざまな材質の綺麗な骨壺に入れて、リビングなどに飾っておくらしい。

骨は、火葬後たまたま残っていたにすぎないものなのではないか

 ちなみにフランスでは、約70%が遺骨を自宅に持ち帰り、20%は墓地の専用の場所に撒き、2%が自然のなかへ散骨するという。墓地の納骨堂に納めるのは、わずか8%である(樋ひ野のハト「フランスのお葬式&母国に眠るための、安らかなる豆知識 お葬式の手引き」『フランスニュースダイジェスト』2007年11月1日)。

火葬した遺骨を墓に納めるというのは、決して世界的な傾向ではない。どうやら日本を含め、中国や韓国などの東アジアに限られるようだ。東アジアには、祖先崇拝の信仰が受け継がれており、信仰の対象として墓を必要とするが、それ以外の地域では、そうした信仰が存在しないのである。

 2017年4月20日付の『沖縄タイムス』紙には、次のような記事が掲載された。

 沖縄県内の自治体が火葬し埋葬した65歳以上の高齢者の数は、2012年度からの5年間で161人に達した。そのうち、9割を超える149人が、親族が引き取りを拒否したケースである。それが、アンケートを通して明らかになったというのである。

 これは、沖縄だけのことではなく、日本全国どこでも起こっていることである。そこには、生活の困窮や財産をめぐるトラブルなどがかかわっているが、遺体は引き取りたくない、遺骨は要らないという遺族が増えていることは間違いない。

 少なくとも、遺骨の処理ということにかんして、東日本と西日本では事情が根本的に異なっている。遺骨格差が厳然として存在するのだ。

 果たして遺骨は必ず引き取らなければならないものなのだろうか。

 遺体を火葬すれば、骨以外はすべて焼けてしまう。たまたま骨が残るから、それを墓に埋葬するわけで、骨を残すために火葬しているわけではないはずだ。

 遺族が希望すれば、遺骨は引き取らなくてもいい。それこそが、私の提唱する0葬だが、日本でも、そうした方向に変わっていくことが必要なのではないだろうか。遺骨格差の解消が求められている。

* * *

もっと詳しく知りたい方へ、4月24日(火)19時~、東京・幻冬舎イベントスペースにて、島田裕巳さんのお話が直接聞けるセミナーを実施します。
ご参加いただいた方にはもれなく最新刊『葬式格差』を一冊プレゼントいたします。

→セミナー「島田裕巳さんが語る『葬式格差』」概要はこちら

関連キーワード

{ この記事をシェアする }

知っておきたいお葬式のウラ側

バックナンバー

島田裕巳 宗教学者、文筆家

一九五三年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著作に『日本の10大新宗教』『平成宗教20年史』『葬式は、要らない』『戒名は、自分で決める』『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』『靖国神社』(すべて幻冬舎新書)、『0葬』(集英社)、『死に方の思想』(祥伝社新書)、『戦後日本の宗教史』(筑摩選書)等がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP