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重力波とは何か

2017.12.02 公開 ツイート

アメリカに先を越されて悔しくありませんでしたか? 川村静児

思わずスキップ♪ サイエンスに国境はない

 重力波初検出のアナウンスがされたのは日本時間の深夜12時半のことでした。いろいろな情報から、おそらく初検出の発表がなされるであろうとは思っていましたが、100パーセントの確証は持てませんでした。

 妻と二人でインターネットの中継を固唾(かたず)を吞んで見守っていましたが、LIGOの代表であるデイヴィッド・ライツィ氏が「我々は重力波を検出した」と発表したときには、感激で胸がいっぱいになりました。

 大学院のときから30年以上重力波検出の研究に関わってきた私にとってはまさに歓喜の瞬間でした。サイエンスにはあまり興味のない妻も自分のことのように喜んでくれました。その週末にはさっそく家族でレストランに繰り出し祝杯をあげました。

 その後1週間ほどは歩いていても自然とスキップしてしまうほどの嬉しさでした。よく、「日本が初検出できなくて悔しい思いもありますか?」と聞かれますが、悔しさはまったくありません。常々、サイエンスに国境はないと思っているので、嬉しさ100パーセントです。

 自分の中で最悪のシナリオは、「LIGOが目標感度を達成して3年間観測を行ったけれども結局見つからなかった」というものでした。それは重力波の研究者にとっては、本当に悪夢といえるものですが、初検出がなされるまでは、その可能性も排除できなかったのです。したがって、そういう悪夢のシナリオが実際には起こらず、逆に予想より早く重力波が検出できたことで、心からほっとしました。

 * * *

 ノイズ・ハンター川村の戦果の数々は、『重力波とは何か――アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』でお楽しみください。

 次回は12月9日に掲載予定です。

関連書籍

川村静児『重力波とは何か アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』

祝・ノーベル賞受賞! 重力波は、1916年にアインシュタインが存在を予言。 彼の数々の予言のうち、最後まで残った宿題「重力波」を、 2016年に世界で初めて観測したアメリカの観測施設LIGOのメンバーが 2017年のノーベル物理学賞を受賞した。 そのLIGOプロジェクトで、かつて「ノイズハンター」として名を馳せたのが、 現在は日本の観測施設KAGRAの中心メンバーとして活躍する川村静児氏。 受賞者のひとりレイナー・ワイス博士は、受賞後のインタビューで 「川村氏の存在なしに受賞はあり得なかった。 彼は最高の科学者であり、実験者」と、川村氏の功績を称えている。 本書では川村氏が「重力波天文学」の世界をやさしくエキサイティングに解説。 重力波をとおして宇宙誕生の謎に迫る、決定版の入門書である。

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重力波とは何か

2017年のノーベル物理学賞はアメリカの「重力波」観測チームが受賞しました。重力波とは一体何なのか? 重力波の観測にはどんな意義があるのか? 日本の第一人者がわかりやすく解説します。

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川村静児

1958年高知県生まれ。土佐高校卒業。早稲田大学理工学部卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(東京大学)。カリフォルニア工科大学Member of Professional Staff、国立天文台助教授、准教授などを経て、東京大学宇宙線研究所教授。専門は重力波物理学。

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