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重力波とは何か

2017.11.09 更新 ツイート

重力によって空間が歪むと「重力波」が出ます!川村静児

 2017年のノーベル物理学賞は、「重力波」の観測に成功したアメリカの研究チームが受賞しました。
 重力波とは、そもそも何でしょうか? 重力波の存在を予言したアインシュタインは、一般相対性理論で、重力の本質は「空間を歪ませる力」であることを明らかにしました。そして重力によって空間が歪むときに発生するのが「重力波」です。
『重力波とは何か――アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』の著者で東京大学宇宙線研究所教授、日本の重力波観測施設「KAGRA(かぐら)」を率いる川村静児さんは、「重力波」をこんなふうに説明してくれました。

 * * *

 重力によって空間が歪むと、どうして重力波が出るのでしょうか。

 質量を持つ物体があるとそのまわりの空間が潮汐的に歪みますが、それだけでは重力波は発生しません。この歪んだ空間のことを「重力場」といいます。リンゴをやわらかい座布団の上に置くと、座布団の表面がへこむようなものだと思えばいいでしょう。

 座布団のリンゴを動かすとへこみ具合が変わるのと同じように、物体が動くと重力場の様子が変わります。しかしその重力場の変化は、物体の動きと同時に遠くまで伝わるわけではありません。これは、座布団よりも水面の波にたとえたほうがイメージしやすいかもしれません。水面に物体を浮かべると、そこに生じた歪みが「波」となって徐々に遠くまで伝わっていきます。

 それと同じように、物体の動きによって空間の歪み方が変わると、それが徐々に波のように広がっていきます。図のように、空間が潮汐的な伸び縮みをくり返しながら、光速で伝わっていくのです。これが、重力波にほかなりません。

 重力と重力波の関係は、電磁気力と電磁波の関係とほぼ同じようなものです。電磁波の存在は、19世紀に電磁気学を確立した英国の理論物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831一〜1879)によって予言されました。そのあたりも、アインシュタインが理論的に予言した重力波と似ています。ドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツ(1857〜1894)によってその電磁波が発見されたのは、1888年のことでした。

 電磁波は、プラスやマイナスの電荷を持つ物質が動いたときに発生します。電荷を持つ物質が動くと、そのまわりにある電場に変化が生じ、それが徐々に遠くへ伝わっていく。それが光速で伝わることや、真空中でも伝わることなども、重力波と同じです。

 ただし、重力波には電磁波とは異なる性質もいくつかあります。その中でもとくに重要
なのは、重力波が「何でもすり抜ける」という点です。

 約138億年前に誕生した宇宙には、およそ38万年間、電磁波(光)がまっすぐに飛べない時代がありました。それは、電磁波がほかの物質と相互作用を起こしやすいからです。

 相互作用とは、簡単にいえば「ぶつかる」ということです。初期の宇宙には、電磁波の行く手を邪魔する物質が満ちあふれていました。そのため電磁波が散乱してまっすぐに進むことができず、その時代からは光が地球まで届かないのです。

 しかし重力波はほかの物質とほとんど相互作用を起こしません。行く手に何かあってもそれをすり抜けてまっすぐに伝わります。だから、電磁波では見ることのできない時代の宇宙の様子を、重力波なら見ることができるのです。

 * * *

 いかがでしょうか? お分かりになりましたか? いや、それ以前に、重力の本質を「空間を歪ませる力」で済ませないでほしい、とお思いのかたもいらっしゃるかもしれません。『重力波とは何か――アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』では、一般相対性理論についても、腹巻アインシュタインおじさんが登場して、解説しています。ぜひお読みいただけると幸いです。

 次回は11月16日に公開予定です。

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川村静児『重力波とは何か アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』

祝・ノーベル賞受賞! 重力波は、1916年にアインシュタインが存在を予言。 彼の数々の予言のうち、最後まで残った宿題「重力波」を、 2016年に世界で初めて観測したアメリカの観測施設LIGOのメンバーが 2017年のノーベル物理学賞を受賞した。 そのLIGOプロジェクトで、かつて「ノイズハンター」として名を馳せたのが、 現在は日本の観測施設KAGRAの中心メンバーとして活躍する川村静児氏。 受賞者のひとりレイナー・ワイス博士は、受賞後のインタビューで 「川村氏の存在なしに受賞はあり得なかった。 彼は最高の科学者であり、実験者」と、川村氏の功績を称えている。 本書では川村氏が「重力波天文学」の世界をやさしくエキサイティングに解説。 重力波をとおして宇宙誕生の謎に迫る、決定版の入門書である。

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川村静児

1958年高知県生まれ。土佐高校卒業。早稲田大学理工学部卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(東京大学)。カリフォルニア工科大学Member of Professional Staff、国立天文台助教授、准教授などを経て、東京大学宇宙線研究所教授。専門は重力波物理学。

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