
不思議な深海生物について、最新研究からわかったことを美しい写真とともに紹介するビジュアルブック『深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの』が発売になりました。
その中から今回は「逆立ち――ザラビクニン」を試し読みとして公開します。
ウロコがなく、ゼリーみたいにぶよぶよの体を持つ、逆立ち泳ぎの魚……。深海で出会ったら思わず叫んでしまいそうな強烈キャラです。
逆立ち
ほとんどの魚は背を上にして泳ぐ。カレイやヒラメなど、海底に横たわるものは横たわった姿のまま泳ぐし、タチウオやリュウグウノツカイは、頭を上にして縦になって泳ぐ。ところが、深海では不思議な動きをする魚も発見されている。
ザラビクニンは、日本海とオホーツク海の、200〜800mの深海に棲む魚。全身がほんのり桜色をしていてウロコはなく、体はゼリーのようにぶよぶよ。素手ではもちにくいほどぬめりがあり腹には小さな吸盤がある。
風になびくようにゆらゆらと泳ぐが、獲物を探すときは、頭を下にして逆立ちをしたような姿で泳ぐ。胸ビレの先と口の下に味を感じる器官があるので、頭を下にして海底の砂や泥の中にいる獲物を探す。獲物が胸ビレに触れると、素早く食いつくという。
ザラビクニン
Careproctus trachysoma
英名は「pink-bearded snailfish(ピンクのアゴヒゲのあるクサウオ)」。いくつかの研究所や水族館では、飼育下での孵化に成功している。成魚は体長が30cmほどになるが、生まれたばかりの稚魚は2cm足らず

写真/amanaimages
最終回「第6回 足のトラブルとは無関係、深海のミズムシ」は7月19日(水)に公開予定です。