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深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの

2020.03.03 公開 ツイート

【人生がつらくなったら生物に学ぶ】第2回 暗い深海で光を集めるために大きくなった魚の目【再掲】 藤倉克則

卵をネックレスのようにして守るヒラカメガイや水深5000mで背泳ぎしていたシダアンコウなど、深海生物たちの多様性を知ると、周囲に無理に合わせるよりも自分の持ち味を楽しむ余裕を持ちたいなと思います。
最新研究から分かった深海生物たちの生きる工夫を収録した深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの(監修・藤倉克則〈海洋研究開発機構〉)の中から「大きな目で見つめる先には――スタイルフォルス コルダタス」を紹介します。真っ暗闇の深海で少しでも周りを見ようと、こんな形に進化した魚がいるのです。

大きな目で見つめる先には

私たちは、暗い場所で周りをよく見ようとするとき、目を大きく開け、さらに、少しでも目を対象に近づけようとする。

スタイルフォルス コルダタスは、アカマンボウ目に属する魚。長い進化の過程で、深海にあってそんな努力を続けているうちに、こんな姿のものが生き残ったのだろう。英名は「tube eye(筒状の目)」。その名のとおり、大きな目は筒状で両目を合わせると双眼鏡のよう。暗い深海でも、より多くの光を集めることができる。

口は、とても小さなおちょぼ口。ただし、口の奥が袋状になっていて、頭をぐっと上げると口内が広がり、スポイトのように獲物を吸い込むことができる。頭を上げたときの口内の容積は、ふだんの38倍以上にもなるという。獲物は小さなプランクトン。体を垂直にして泳ぎ、上にいるプランクトンを双眼鏡の目で探す。見つけると、大きな目でしっかり距離を測り、おちょぼ口で大量に吸い込む。

 

スタイルフォルス コルダタス
Stylephorus chordatus

頭部のほとんどを目が占める。できる限り「見る」ことに特化したのだろう。体長は30cmほどになるが、英名の別名は「thread tail(糸のような尾)」。体は細く、糸状の尾ビレをもつ

写真/amanaimages​

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藤倉克則

国立研究開発法人 海洋開発研究機構(JAMSTEC)上席研究員。1964年栃木県足利市生まれ。東京水産大学(現 東京海洋大学)大学院 水産学研究科 資源育成学専攻 修士課程 修了。博士(水産学)。専門は深海生物生態学。深海化学合成生態系の生態に関する研究や海洋生物の多様性研究を行っている。おもな編著・監修書等に『潜水調査船が観た深海生物 深海生物研究の現在』藤倉克則, 奥谷喬司, 丸山正 編著(東海大学出版会)、『深海のフシギな生きもの 水深11000メートルまでの美しき魔物たち』藤倉克則, ドゥーグル リンズィー 監修/ネイチャー・プロ編集室 構成・文(幻冬舎)、『深海の生物』藤倉克則 監修(ポプラ社)などがある。

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