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死にゆく人のかたわらで

2017.04.05 更新 ツイート

人はどんなふうに死ぬのか、知っていますか? 三砂ちづる

 本サイト連載「かけこみ人生相談」で、大胆にして慈愛あふれる回答が人気の三砂ちづるさん。三砂さんの新刊『死にゆく人のかたわらで~ガンの夫を家で看取った二年二カ月』が発売になりました。
 誰にとっても切実な介護・終末期医療の不安に応えてくれる教科書にして、豊かな生と死のあり方を問う人生の教科書でもある本書。
「生き死に」に関わるふるまいのような、人間のからだにしみついている本源的な知恵も、たった三世代で忘れ去られる、と三砂さん。
 死を家族の元に取り戻すのか、永遠に手放してしまうのか、私たちはいま、その瀬戸際に立っています。

 * * *

助けてくれる人はたくさんいる

 やってみて、周囲に話すにつけ、現在の日本で「家でガンの家族を看取る」経験は、まだまだ多いとは言えず、ある意味、とりくみが始まったばかり、と言えることもわかってきた。わたしがそういうことができたのは、家から徒歩五分のところに訪問診療の草分けのようなカリスマ医師、新田國夫先生がいたからだ、ということも、わかってきた。

 わたしはものを書いている人間なので、どんな経験をも文字にすることは自分への励ましとなり、書いていることで励まされる。亡き夫との最後の日々を思い起こすことで、それを文章にすることで誰より自分が励まされるのはわかっている。そしておそらく、それだけではなく、わたしの経験を文字にすることは、少なからぬ「家で死にたい」とか「家で看取りたい」と思っている人たちへの励ましにもなりそうなのである。

 いまの日本で、看取る側が働いていても、看取られる側がワガママでたいへんな奴であっても、周囲にはたくさんの助けてくれる人のシステムができあがっていて、なんとかなる、ということを言いたいのかもしれない。

 医療や介護のシステムにはつい批判ばかりをしたくなるし、日本というのはひどいところだ、医療のシステムはなってない、フィンランドがいい、みたいな議論ばかりされているし、まあ、たしかにそれはそういうところもあるのかもしれないが、現今のシステムだけでもけっこう、いけます、ということも言いたいのかもしれない。

 それはとりもなおさずこの国では、どのような仕事でもいったん職業として確立されると、そこに関わる人には必ず心を尽くして全身全霊で仕事をする人が出てきて、できあがったシステムをよきものにしていこう、とする人たちが少なくなくて、それによって、よく運用されていることが多い、と示すことでもある。

 医療や介護に関わる人たちは、最もよくそれを体現している。この国ではなかなかどうして、すばらしいシステムができあがりつつあることの言及にもなるだろう。「家で看取る」ことは特別なことではなくなりつつあるし、これからもっと増えていく。増えてほしいと思う。施設が足りないから在宅医療推進、という方針ももちろんあるだろうし、団塊の世代が高齢化してもその後に人口は減るから、もう高齢者施設をつくることはペイしない、と思われていることもあるだろう。だから政策的に「在宅」が推進されるだろう、というところもある。

 しかしそれよりなにより、「死」を家族の元に取り戻すことができるかもしれない、という機会は、とても大切なことにみえるのだ。
 

⇒次ページ[身体知は三世代で失われる]に続く

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死にゆく人のかたわらで

 「末期ガン。余命半年」の宣告。「最後まで家で過ごしたい」と願った夫と、それをかなえたいと思った妻。満ち足りて逝き、励まされて看取る、感動の記録。

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三砂ちづる

津田塾大学国際関係科教授、作家。1958年山口県生まれ。兵庫県西宮市で育つ。京都薬科大学卒業。ロンドン大学Ph.D.(疫学)。母子保健・国際保健の疫学専門家として、約15年にわたりブラジル・イギリスなどで研究。2004年刊行の『オニババ化する女たち――女性の身体性を取り戻す』(光文社新書)がベストセラーに。その後も、妊娠・出産・子育て・家族・身体の知恵などをテーマとした著作多数。近著に『女が女になること』(藤原書店)、『女たちが、なにか、おかしい』(ミシマ社)などがある。

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