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ぶらり東京・仏寺めぐり

2016.11.07 更新 ツイート

井伊家の菩提寺にして「招き猫」発祥の地 豪徳寺長田幸康

東京には、観光スポットとしても人気の浅草寺・増上寺といった大寺院から、地元の信仰を集め続ける霊験あらたかなお寺まで、大小さまざまなお寺があります。身近なところに意外な歴史を持つ古刹があったり、なんとなく通り過ぎていたお寺に有名人のお墓があったりと、街歩きの目的としても興味深い寺院が、じつはたくさん佇んでいるのです。
自然を残し、静かな時間が流れる境内は、都会の癒しスポット。都内39のお寺を紹介している『ぶらり東京・仏寺めぐり』を片手に、涼しい秋風を感じながらの仏寺めぐりはいかがでしょう。思わず訪れたくなる素敵なお寺を、全6回にわたってご紹介します。

*  *  *

 

豪徳寺(ごうとくじ/曹洞宗)

 彦根藩井伊家の菩提寺。
「招き猫」発祥の地

 

1677年創建の本殿

 

「ゆるキャラ」ブームの先駆けとなった「ひこにゃん」。滋賀県彦根市のキャラクターが猫をモチーフにしているのは、ただ可愛いからではない。彦根と猫を結ぶカギが、ここ東京・世田谷の古刹、豪徳寺にある。

 

井伊家の菩提寺として栄える

 豪徳寺の創建は文明十二(一四八〇)年。世田谷城主・吉良正忠が伯母の菩提を弔うために建てた臨済宗弘徳院[こうとくいん]が前身とされる。天正十二(一五四八)年には、高輪泉岳寺[せんがくじ]の門庵宗関が曹洞宗に改め、中興開山した。

 豊臣秀吉の小田原征伐によって吉良氏が衰え、寺は一時期勢いを失っていたが、寛永十(一六三三)年、世田谷が彦根藩領となったことが転機をもたらした。

 彦根藩の二代藩主・井伊直孝[なおたか]が弘徳院の門前を通りかかると、猫が手招きしている。招かれるまま境内に入ると、突然の雷雨。災難を免れたことを喜んだ直孝は弘徳院を井伊家の菩提寺に取り立て、大規模な修復を行なった。直孝没後、法号(戒名)にちなんで豪徳寺と改名され、寺は井伊家とともに隆盛を誇ったのである。

 

井伊家墓所の門前に並ぶ六地蔵

 

 井伊家に福を招いた猫は「猫観音」として祀られ、豪徳寺は「招福猫児[まねぎねこ]」の伝説で信仰を集めるようになった。だからこそ「ひこにゃん」は猫なのだ。

 

猫に囲まれた如意輪観音

 

「招福猫児」に願いを込めて

 世田谷の住宅街に広がる緑豊かな境内には、立派な伽藍が立ち並ぶ。山門をくぐってまず目に飛び込んでくるのは、左手にそびえる見事な三重塔だろう。高さは二十二・五メートル。よく見ると四方の扉の上にも「招福猫児」の彫刻が施されている。

 

高さ22.5メートルの三重塔

 

 延宝五(一六七七)年に完成した仏殿もまた見事な建築だ。これは第四代藩主・直澄[なおすみ]の菩提を弔うために造営された。内陣に祀られている仏像五体は、目黒・五百羅漢寺の五百羅漢像を彫った松雲元慶の手による。

 猫観音が祀られているのは招福殿というお堂。その左手には、大小さまざま、おびただしい数の「招福猫児」が並んでいる。絵馬のように願いごとが記されたものもある。人それぞれの祈りが、愛らしい招き猫一つひとつに込められているのだ。

 

奉納された招福猫児がずらりと並ぶ

 

 境内の奥にあるのが、国の史跡にも指定されている井伊家の広大な墓所だ。豪徳寺を中興した二代藩主・井伊直孝、幕末の大老、井伊直弼などの墓があり、墓石は三百余基を数えるという。

 

幕末の大老、井伊直弼の墓

 

 境内の梵鐘は延宝七(一六七九)年に完成し、今に至るまでこの地で時を告げている。世田谷区に現存する最古の梵鐘の音が、夕暮れ時の静かな境内に響く。

 

世田谷区最古の梵鐘

 

【お寺データ】
東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
[山号]大谿山
[寺号]豪徳寺
[本尊]釈迦如来
[国指定史跡]彦根藩主井伊家墓所
[都指定史跡]井伊直弼墓

【アクセス】
東急世田谷線 宮の坂駅から徒歩5分、小田急線 豪徳寺駅から徒歩15分

 

『ぶらり東京・仏寺めぐり』の試し読みは今回で終了です。本書には、このほかにも見どころ満載のお寺がたくさん掲載されています。続きはぜひ、書籍にてお楽しみください。

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長田幸康

1965年、愛知県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。仏教とチベット文化に造詣が深い。インドでダライ・ラマ14世に出会って仏教に目覚め、チベット寺院に住み込んで理論と実践を学ぶ。現在、日本各地に伝わる仏教説話を訪ねる聖地巡礼に励むかたわら、毎年夏には、チベットに渡航し、仏教文化を巡るツアーの現地コーディネートを担当している。著書に『知識ゼロからの仏教入門』『知識ゼロからの仏の教え』『知識ゼロからのダライ・ラマ入門』(以上、小社)、『仏教的生き方入門 チベット人に学ぶ「がんばらずに暮らす知恵」』(ソフトバンク新書)、『心の安らぎに出合える仏教の教え』(双葉社)、『ブッダに学ぶ生きる智慧』(東洋経済新報社)など。

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